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翻訳できない世界のことば

ずっと読んでみたいと思っていた本を買いました。

「翻訳できない」とは〇=△という形では訳せないもの、ひとつの単語をひとつの単語に翻訳できない、という意味です。

読む前は
世界にはこんな言葉があって、それはこうこう、こういう意味なんですよっていう紹介がされているんだろうな、とぼんやり想像していたんですけど、そんな自分の想像を超えた広く奥深い世界でした。

かわいらしい繊細な挿絵と共に、自分が持ち合わせている感情を表現するのに、いくつかの言葉や形容詞、例えを組み合わせたり近いものを選んだりしている一方で、世界にはその感情がひと言の単語として存在している、ということを知ることができるんです。「あ、この感覚や感情って、世界には形としてあるんだな、言葉っていう住所を持っているんだ」という気づきがありました。
「へー。ほぉ~。」っていう感想がほとんどだろうなぁと思ってたら「あー!わかるー!」っていうめちゃくちゃ共感する情景が沢山ありました。
どこかで「私の知らない遠い国の言葉」っていう線引きをして、「知ることはできるけどわからないだろうな」と思う自分がいたことにも気づかされます。そんな線引きをしていた私が何度も「わぁ!わかる!」とうなずいた本です。
読み終わったあと、その線は消えていました。

そして「直訳すると『〇〇〇』」という記載もあるんですけど、この直訳もすごくおもしろい。「言われてみればわかる」という直訳の言葉が放ってるものが伝わってきて、それを更に言葉にしていくことで意訳になっていくんだなっていう当たり前のことではあるんですけど…。
直訳というものに対してけっこう「何それ、知らん。わからん。」という斜に構えた感想を持ち合わせてる私が直訳を「えー!おもしろい」って思えた言葉が沢山ありました。

「あ。これ知ってる。聞いたことある」という言葉もいくつかありました。

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スウェーデン語のFIKA(フィーカ)という言葉。これは仕事の手を休め、おしゃべりしたり休憩したりするために集うこと。とあるのですが、この前リルフィーカという名前のお菓子を食べたんです。

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ムーミンキャラクターのかわいらしいパッケージで、まろやかなミルクティーの風味と、ラム酒がほんのり漂う幸福な甘さのチョコレートでした。

ひと言に翻訳できない言葉が、味覚で表現されたってことにもなるよね!とちょっとした発見をしたような気分になりました。

「自分が知らない遠い国の言葉」「知ることはできるけどわからないだろう」という線を引いていたものは消えましたが、お菓子のリルフィーカとFIKAのように、点と点を結んで生まれた線もありました。
「あ、これ、まさにあの時の私の行動じゃん」って思わず笑ってしまって線としてつながったもの。
なかなか言葉に出来なくて口から出るまで彷徨って、紙に書く手は動かないままだったあの感情は、こんな言葉なんだねと、糸をたぐりよせたり掬いとっていく瞬間もありました。
世界の言葉を見ているのに、自分自身を見つめる時間でもあったんですね。世界旅行と時間旅行を同時に行っている、ってことなのかな。

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