見出し画像

Vol.120 支配人の哲学

父の命日シリーズで、今年は2人の人物を取り上げます。50歳上の友人(前回)に続き、今回はあるホテルの支配人を務める西洋人のA氏です。

以前、長らくお世話になっていたホテルで珍しいタイプの支配人に出会いました。時間の許す限り、朝食やカクテルタイムになるだけ顔を出して各テーブル挨拶にまわり、ゲストと直接コミュニケーションをとるのです。

長く滞在しているとスタッフや同じく長期滞在のゲストとも顔馴染みとなり、段々と親しくなります。彼とも大分打ち解けてきた所で、ある日率直に聞いてみました。

*****
私: ゲストと直接コミュニケーションをとる事を毎日の習慣としている、あなたのような支配人に会うのは10年以上に及ぶホテル生活で初めてですよ。どんな動機や経緯なのでしょうか?

A氏: 実は父の影響が大きいのです。彼は祖国のフラッグシップキャリア(航空会社)で大切なお客様向けのチケット発券を担っていました。彼はお客様が出発される日には、必ず空港にまで駆けつけて直接お見送りをしました。私が小さい頃は、父があまりにも(見送りの連続で)家にいないので、よく文句を言ったものですが、今思えば非常に卓越したセールスパーソンだったと思います。それから、このような習慣は時間を要すると思われるかも知れませんが、実は生産的、効率的に仕事をする上でもとても役に立ちます。さもなければEメールなどで色んなご意見を頂き、それらに対処するのに膨大な時間を要するところ、こうしてレストランに足を運ぶことで、リアルな状況を把握すると共に、直接お客様のお話やリクエスト、ご質問を伺って、必要に応じてその場合で解決していくのは、高品質なサービスをお届けしていく上で大切なのです。
*****

この話を聞く以前から、彼の行動を見ていて、ホテルマネジメントにおける彼なりの“フィロソフィー”が何かあると直観していたので、こんな話を聞けて嬉しいし、更にお父様が果たした役割の大きさを思い知って感銘を受けました。父の“イズム“を自分なりに解釈して実践する姿勢は、私も大いに共感できます。

彼が率先して模範を示す事で、各部門マネージャーもゲストとのコミュニケーションをとり、大きなアセットながら何故かアットホームに感じられるユニークなホテルでした。私のパーソナルクエストである「良いホテルとは?」に新たな章が加わりました。

*******Disclaimer*******
本ページに記載されている内容は、情報提供のみを目的としており、その正確性や信頼性を何ら保証するものではありません。従いまして、本ページの情報のみを根拠とする確定的判断はなさらず、最終的には必ずご自身でお調べになってご判断下さい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?