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Vol.173 清水寺の夜を彩る鐘、そしてデュシタニ京都

シンガポール滞在の後、一旦バンコクに戻ったのですが、実は京都で開催されたイベントに招かれた関係で、同僚のアメリカンと再び日本へやって来ました。

夕方、清水寺で待ち合わせ予定のところ、私は昼前には京都に到着しまずはホテルへ向かいます。予想していた事とは言え、京都駅の人混みにまずは面食らいました。

デュシタニ京都

滞在先に選んだのは先日オープンしたデュシタニ京都。タイの老舗ホテルで、京都駅からも徒歩圏内、そして私にとって初めてのデュシタニ滞在です。バンコクのシーロム通り起点に位置する本家デュシタニホテルは何年か前に取り壊され、現在新たな一大開発プロジェクト建設の真っ只中。再来年には、ホテルのみならずレジデンスとセントラルデパートも入居する Dusit Central Park が完成する予定です。実はこのDusit Central Park は、数あるバンコクの不動産プロジェクトの中で、アマン・ナイラートと並び私が最も完成を心待ちにしている物件で、まずは最新デュシタニホテルの感性を経験してみたくて、今回ここを選びました。イベント後の帰りは夜中になるので、とりあえずチェックインの手続きだけ先に済ませて、スーツケースだけ置かせてもらうつもりでレセプションに立ち寄ったところ、気を利かせてくれて部屋を用意してくれました。ホスピタリティも高く好印象です。

お部屋は必要十分な広さで、落ち着いた雰囲気です。和泰折衷、と言うかちょっとタイの日系ホテルを彷彿させます。また、バスアメニティは私も普段から愛用しているHarnn。個人的には、タイのスパブランド商品の中で一番お勧めです。

ひと休みしたところで、そろそろ出発。近くの「招福亭」で茶そばの「福そば」を頂き、お腹を満たして一路、清水寺を目指します。もちろん徒歩。1時間かからない位の距離です。

招福亭

あとで和尚さんに教えてもらった話では、実は私が訪れたこの日が一年で最も清水寺を参拝する人が多いそうで、夕方の清水坂は初詣かと言わんばかりの混みようでしたが、道中の裏路地は静かな場所も多くあります。京都市内どこでも外国人観光客で溢れ返っていてタクシーも全く呼べないのかと少々構えていましたが、実際は「彼らが行きたがるエリアに限っては」と言う表現がより正確かも知れません。

迎賓殿

時間になり同僚たちと合流。迎賓殿に案内され、お和尚さんとご挨拶。この和尚さん、現在の清水寺の礎を築かれた大和上さんのお孫さんにあたります。そして驚いたことに英語ペラペラ。ここまで英語が流暢な日本人自体、久々に見た気がします。お話を伺うとアメリカに2年ほど留学されていたそうで、お寺を訪れる多くの海外VIPをご案内された経験をお持ちです。勿論、単に英語が話せる次元を超えていて、ちゃんと心に届くお話をされます。伺っている私たちも敢えて英語で講話を伺うことで何だか「入り方」が違って、日が経った今でもその時の言葉が鮮明に甦ります。

一つご紹介すると「慈悲」についてのお話があり、“私の思いは(My thoughts are…)あなたと「共にある」(with you)のを超えて「あなたの中に」(in you)届いているのですよ“ と。この言葉は、同僚アメリカンの心の琴線にも十分に響いていました。

一般非公開の庭園

また和尚さんに言われてちょっと嬉しかったのは、境内を歩いているとお香の良い香りが漂ってきたので、それについて尋ねた際「老舗店のお香でお供えとして時々焚いています。これだけ多くの方がいらっしゃっていても、こうして焚き始めたお香に気づかれる方は実はそう多くはありません」とのお言葉。喫茶喫飯、今ここに集中できた自分を素直に褒めました。

このあとサンセットの情景に酔いしれ、紅葉が美しい非公開の庭園で瞑想のひと時を過ごしてから、いよいよ同僚アメリカン、本日の最重要ミッションです!

何かと言うと… この鐘をつきます!
そしてその鐘の音を合図に、清水寺が夜間ライトアップされるのです。
17時半きっかり。無事に「儀式」を終えました😅
有難い経験をたっぷりさせて頂いたところで、お寺を辞去します。

心は一同ポッカポカです。ただ、如何せん外はもの凄く冷えるので、二寧坂の情緒を愉しみながら、次のイベントまで暫し暖をとりにパークハイアットを目指します。初めて来ましたが当然ながら立地は素晴らしく、またラウンジの雰囲気はちょっとニセコっぽくもあり、暖炉席で西洋人がリラックスしていてアットホームな雰囲気を醸し出しています。シャンパンのアテに頼んだサンドイッチが過去イチレベルで美味しかったです。

パークハイアット

タクシーを手配してもらって、次なるイベントが開催される東福寺の塔頭、光明院を目指します。虹の苔寺として、そのお庭で遍く知られるここを贅沢にも夜間に貸切利用し、京都の伝統芸能を愉しみながら精進料理に舌鼓を打ち、更には坐禅も体験できる企画です。

光明院

何人か職人さんのお話も伺った中で、特に印象に残っているのは和蝋燭。お相撲さんの髷や舞妓さんの白粉を定着させる下地としても使われています。お裾分けに頂いたハンドクリームが素晴らしく、普段から乾燥しがちな私の手が適度に潤います。ただ残念なことに、今となっては日本全体を見渡しても、ほんの一握りの数の職人さんのみ活躍されている通り、技術継承の課題に直面しているのが現状なのだそうです。

骨董好きの同僚は、日本刀に終始ご執心で、蝋燭の灯を頼りに刃文を一生懸命吟味していました。そして舞妓さんの舞も初めて見させてもらいました。どれもこれも、普段体験したくても中々できるものではありません。

フォーシーズンズ

一連のイベントを終えて、最後は男3人でバーへ。山崎や与市など美味しい日本のウイスキーを頂きました。ちょうど同僚アメリカンが今年半ばにスコットランドへ旅行し、お土産に私の名前入りのウイスキーボトル!を買ってきてくれて、ついでに醸造所の土産話を聞くと、スコッチのウイスキーに生涯を捧げプライドを持っているdistilleryの彼らも、日本のウイスキーとなると途端にリスペクトの文言が並ぶそうです。私も同様の経験があり、例えば先月行ったシンガポールのウィスキーライブラリーや、バンコクのジムトンプソンハウスにあるバーなどで日本のウイスキーを吟味していると、私を日本人と認識したバーテンダーは尊敬の眼差しで敬意を持って接してくれます。勿論、私が凄い訳ではなく一介の消費者に過ぎないのですが、虎の威を借りているだけかと言えばそうとも言い切れず、そうした高品質な銘柄を自国の商品として飲む機会に恵まれている環境は、皆さんがその機微を感じる上で何かしら役立っているはずです。更にこれがアルコールの世界に留まらず、あらゆるグルメやファッション、カルチャーの分野において、広がりと奥行きを以て世界の人々を魅了している訳ですから、創造性溢れるコンテンツが、それを体験する者のリテラシー向上に一役買っていても何ら不思議ではないし、恐らくはその相互作用スパイラルなのだと京都に来て尚更感じます。

フォーシーズンズ

さて、翌日は特段の予定を入れなかったので、久しぶりに京都の休日。昼間はお寺を幾つかまわり(と言っても混みすぎていて情緒も何もありませんでしたが..)夕方に同僚とフォーシーズンズで合流してから再び目指すは清水坂。中腹にある骨董品屋さんで、同僚は30分くらいかけて高価な器を吟味し買っていました。以前、銀座を一緒に歩いた時もそうだったのですが「こんなところに骨董品屋さんがあったのか!」と驚きます。何度も歩いている道のはずなのに見えていなかった景色… 昨日の和尚さんの話を思い出します。そう言うものに気づかせてくれる仲間は大切です。

ザ・ソウドウ

二寧坂を下り予約してあったイタリアンの「ザ・ソウドウ」へ。紅葉の美しい立派で広大な敷地にある昔ながらの日本家屋で、地元食材のエッセンスを取り入れたイタリアンのコースメニューが振る舞われる人気店です。

ザ・ソウドウ

美味しくない訳がありません。一品一品が驚きの連続で素晴らしかった。20時前の予約でしたが、気づいたら閉店の23時になっていました。同僚とも久々にゆっくりと時間をかけながら、様々なトピックについて忌憚なく話し合えました。これも京都マジックなのかも知れない。

ちょうど着いた日に気温がグッと下がり、まさにパーフェクトなタイミングで紅葉を堪能できました。鮮やかなRed Leafを十分過ぎるほど目に焼きつけて、京都を後にします。今回のような企画であれば、日本人はもちろんのこと、日本の文化に関心を持って京都に足を運んでいる多くの外国人観光客もきっと満足することでしょう。インバウンド向きのコンテンツ、歴史ある日本はその宝庫です。

*******Disclaimer*******
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