『夜中の汽笛について、あるいは物語の効用について』続き
「私はあなたのことを青空を覆う雨雲くらい愛しているわ。」少女はそう言った。
少年は少し驚いた顔をした。少年にとって、自分たちの見えている世界はあまりにも遠く違うものに感じられてしまったからだ。
少年は慎重に彼女の話の続きを待つ。
「私は晴れた日が好き。太陽が世界を眩しく照らし水滴がきらきらと輝く、そんな晴れの日が好き。
釣られて私の気持ちも明るい晴れたものになるの。
心の底からじわじわと暖かさが広がって、微風が少しくすぐったいような、まるで優しさが世界を包むことを願わずにはいられないような気持ちよ。
上手く言えないけれど、わかるかしら?」
少年はゆっくり少しだけ頷いた。少年は少女の瞳を見つめてらまた続きを待つ。
少女は安心したような表情を見せたが、次第に顔が曇っていった。そして話を続ける。
「でも、いつも晴れが好きなわけではないの。空が晴れていても、時々私の心は深く重く沈んでしまうわ。人と自分を比べてしまったり、自分が嫌になったり、そんな時ってあるでしょう。」
少年はさっきより強く静かに頷いた。きっと見ている場所が違うだけで、同じ世界にいる、と何故か確信を持った。少女は続ける。
「そう感じる時、私は晴れの日をうざったく感じるの。眩し過ぎる光が目を刺して、瞼を閉じても、青空の青さに吸い込まれそうになる。
そんな時、突然私の頬を何かが濡らす。目を開いてみると辺りは薄暗く雨雲に包まれている。
その瞬間、私の体はひんやり冷え始めて、やっと地面に足をつけていられるようになるわ。
ほっとして雨粒が私を優しく包んで、こんな自分も悪くないんじゃないか、と思えるの。」
少女は少年を見つめて丁寧に声を出す。
「私は青空を覆う雨雲くらい、あなたのことを
愛してる。」
ただのJKなので、アドバイスや感想など頂けたら、嬉しいです💁
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