氷の怪物に会いに(前編)@山形県蔵王樹氷高原
私は蔵王と相性が悪い。
初めに言っておくと、蔵王は悪くない。
本当に、とことん私との相性が悪いだけなのだ。
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何も無いと思われがちな東北だが、蔵王連峰は温泉やスキー場、牧場やキツネ村など観光スポットの宝庫だ。
"蔵王は山形と宮城どっちなの?論争"が巷では繰り広げられているようだが、まずは宮城県民として宮城側から攻めることに。
「よし、御釜に行ってみよう。」
遡ること2018年夏、仙台に住み始めて間もない私は、東北開拓の一歩として蔵王に足を踏み入れることにした。「蔵王 御釜」で調べると、真っ先に出てくるこんな写真。
蔵王刈田岳、熊野岳、五色岳の三峰に囲まれてできた、美しいエメラルドグリーンの火口湖。
言わずと知れた蔵王のシンボルだ。
思い立った私は愛車のパッソを走らせた。
今日は雲ひとつ無い快晴。いける。
旅好きなくせに、自然系スポットは尽く天候に見放されてきた。でも今日はいける気がする…!
…御釜、どこ?
それどころか、人っ子一人いない。
その後2回ほどリベンジしたが、ある時は同乗者の車酔い、ある時は雷雨、御釜の姿はまだ見ることができていない。
***
「よし、山形側から攻めよう。」
ちょうど1年前の2019年2月、御釜を一度諦めた私は、もう一つのシンボル、山形側の樹氷高原を目指すことにした。
樹氷は世界でも珍しい自然現象で、限られた地域でしか見ることができない。
別名"スノーモンスター"とも呼ばれ、繊細で雄大な氷と雪の芸術を見に、国内外からたくさんの観光客が訪れる。
今度こそ蔵王の自然に触れたかった私は真冬の雪山へと愛車を走らせた。
たくさんのスキー客に紛れながらワクワク気分でロープウェイに乗った私だが、またしても自然の厳しさを突きつけられることになる。
樹氷が、ない。
見えないとかじゃなく、ない。
「昨日まではキレイに見えてたんですけどね、今日の吹雪で全部落ちちゃいました…ごめんなさい…」うなだれるお兄さんに、なんだかこちらも申し訳なくなる。
山頂までたどり着いたは良いものの、吹雪はどんどん強くなり、しまいには
「危ないので外に出ないでください!下山してください!」とスタッフ総出で叫び出す。
急いでロープウェイに乗り込み、下山。
ふもとにあるオシャレな喫茶店に逃げ込み、ドリアで暖を取った。
焼きたてのドリアは美味しかったが、私はまたしても蔵王の大自然の前に完全なる敗北を喫することとなった。何度も言うが、蔵王は悪くない。
自然とは実に雄大で、美しくて、そして厳しいもの。
そして今冬、樹氷を諦めきれない私はリベンジを果たすべく、一年越しの蔵王に向かったのである。
つづく
2020.2.16
けんぴ
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