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なんだかんだいっても知識より経験!人の思考と感情は経験がベース

今週から半年間「視点の発見」というテーマでお届けしてみようと思います。

音声はこちら。以下はテキストです!

横浜出身の私が地方に移住したのは2014年。今住んでいる天草に来たのは2016年のことです。

以前は国家公務員をしていましたが、いまはいろんなことをやっています。一言で表すなら「作って書けるみかんファーマー嫁」でしょうか。自営業です。

小学生の子どもが2人います。

いま私は37歳ですが、私にとってこれまでの人生で一番自分自身の学びや成長につながったと思うのは、子どもを生み、地方に移住してからのことです。

住む場所も仕事もまったく違う環境は大きなカルチャーショックや葛藤がありました。日々、いろんな発見があります。

ここではそうした日々の発見をシェアしていきたいと考えています。

今回は最近私が驚いた2つのことを紹介しますね。

1匹のイワシを見て泣ける女性

あなたはスーパーのお魚コーナーのイワシを見て涙した、という経験はありますか?

私はありません。

でも、涙する人もいるということをついこの間、知りました。

3月に天草で車海老の養殖をしている会社の女性社長が本を出したのですが、昨年末、私はライターとしてそのお手伝いをさせていただきました。

「イワシで泣ける」というのは、そのときの彼女の話です。

すごく感受性が豊かだな、と思いますよね。

イワシを見ても特に何も感じない私は冷たい人間なんだろうか?何が違うんだろうと考えてみました。

たぶん、それは「想像できるかどうか」なんだと思います。

生まれたときから天草で生きてきた彼女と、30年近く都市部でしか生活したことのなかった私。

地方で暮らす人がみんなそうかというと、まったくそんなことはないでしょう。

イワシで泣けるのは「海に生かされている」という感覚を持って生きている人だからこそ。

一匹のイワシから漁師の思いとかその家族の思いとか、市場の仲買人のこととか、一匹のイワシが食卓に届くまでの背景を想像できる環境にあるのだと思います。

地元の人がお得なスルーきっぷを使わない理由

2つ目は、地方の人が電車に乗らない理由です。

正しくは天草の人が電車に乗らない理由ですけど。どうしてだと思います?

「車社会なんだから、電車に乗りたくても乗れないだろう」

というのは、ちょっと違います。

わかりやすいように、まずは天草ってどういうところかをお話しします。

地方と言っても中身はいろいろです。電車やバス移動にも困らないエリアと、いま私が住んでいるような本当に車がないと生活できないエリア。

よくお店は最寄り駅から徒歩◯分といった表現をしますが、我が家の最寄り駅は車で30分、20kmくらいなので最寄り駅なんてあってないようなものです。

いまでこそ天草は橋で本土とつながっていますが、60年前までは島でした。

いま天草の人たちにとって身近な交通手段は車ですが、当時は船も大切な交通手段だったんですね。

実際、天草の入り口にある最寄り駅「三角」には港もあります。

そこで数年前、天草の船会社が船とJRの接続チケットを販売したのだそうです。

売れ行きはどうだったと思いますか?

利用する人はものすごく限られていたそうです。

天草は大きな島で上島と下島の2つの島でできています。上から下までは渋谷から箱根くらいの距離があります。

接続チケットの利用者を見ていくと、購入者の多くは上島の人で、下島の人はほどんと利用しなかったそうです。

なぜだと思いますか?

船会社がヒアリングしてみたそうですが、そこで得られた回答は私にとっては衝撃でした。

「乗り換えが怖い」「改札をどうしていいかわからない」

これは30年近く電車移動が当たり前のエリアに住んできた私にはない感覚です。

キャンペーンを打てばどうにかなる、というものではなくて理屈を超えた感情の話だと思いました。

ちなみに我が家があるのは、天草の中でも本土に近い上島です。

下島はプラス車で30分、遠いところでは1時間以上かかります。

下島に住む人にとって電車とは「知ってはいるけれど、自分と関係ない乗り物」だったんですね。

いい悪いの話ではなく、車社会ってこういうことなんだ、と思いました。

人の想像は経験がベース。理解の範囲を広げるには

イワシで泣ける女性の話、接続チケットの話。2つのエピソードで今回お伝えしたかったのは「人の思考と感情は経験がベース」ということです。

最近、多様性とかみんな違ってみんないいという風潮が高まっています。

みんな頭ではそう思っているし、多様性に反対する人は(少なくとも表立っては)いないでしょう。

ところが「多様性とはどういうことか」それを腹落ちできている人は多くないと思います。

まったく違う感覚を持つ人を前にすると、居心地の悪さを感じて関わることそのものをあきらめてしまう。それが現実なのではないでしょうか。

私たち日本人はぱっと見はよく似ているし、言葉も通じます。

でも、本当は同じ国の中でも実際はかなり違う。このことを忘れてしまいがちです。

そういう意味では、ぱっと見で違いがわかる外国の方に対しての方が「違い」を前提にしているような気もします。

地方に移住し住む場所も仕事もガラッと変わった私はこれまで自分が知っていた学校や会社組織というものは、ある程度似通った人たちの集まりだったんだなと、恥ずかしくなりました。

では、どうするか。

そのヒントは「人・本・旅」にありそうです。この考え方は立命館アジア太平洋大学の学長をしている出口治明さんが提唱しています。

人がコミュニケーションをとるために大切なのは共通テキストの数です。

auのCMに昔話のキャラクターが登場するものがありますが、あれを見ておもしろいと感じるのは私たちが同じ日本の昔話という共通テキストを持っているからだといいます。

まずは人から学ぶ。時代や空間を共有できない人からは本で学ぶ、そして旅をすることで知らない世界を知る。

それによって理解できる領域を増やしていきましょう、というものだったと私は理解しています。

一人ひとりが「みんな違ってみんないい」を腹落ちできるようになるために、人・本・旅を実行してみるといいかもしれませんね。

ではでは。また来週お会いしましょう!

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横浜出身の私が、地方の田舎町で暮らしていくために考えて、やってみたあれこれをまとめています。新しい環境に飛び込んだチャレンジ精神あふれる人…

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