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SalesForceの導入で思ふ事(中小向け)

 今の企業に転職して、初めてSalesForceに携わっている50代エンジニア(の慣れ果て)ののくたん令です。

 以前からSalesForceは、SAPと同じく有名どころの製品であり、名は知っておりました。
 転職回数が多く、最初の企業以外は、全て非上場の零細企業か中小企業。
 ソフト開発企業がほとんどで、1社のみ非IT企業の経験であり、直接ユーザからの請負やユーザと接しての開発は、実はあまり経験がありません。
 非IT企業の社内SE時代は、IT投資が乏しく、未だにオフコンを使っている始末で、全く経験を活かす事が出来ない有様でもありました。
 その為、このようなメジャー製品を扱う機会が「全くありませんでした」。

 そんな経験を踏まえて、SalesForceの導入を検討している中小企業に対して、今一度の確認事項を書いてみます。

1.なぜ顧客管理をしたいのか?

 その理由がはっきりしていない以上、いかなる製品を導入しても、社員を徒労化させるだけです。

 そして、「顧客管理をすることで、本当に売り上げやサービス向上が果たせるのか?」です。
 売り上げを上げたり、サービス向上を行うのは社員であり、その指示と管理を行うのは経営陣でもあります。
 ITがしてくれるのであれば、恐らくAIの類であり、その分社員も経営陣も不要になるはずです。

 顧客管理をするための課題の列記と、それをすることで得られる道筋を図化してみてください。
 それが出来ないと、単なる妄想で終わってしまいます。

 いい車を買っても、ほとんど乗らなければ、維持費ばかりかかるだけ。
 たまに乗るだけの高級車と違って、ITは毎日使うもの。

2.中小企業のIT利活用レベル課題

 そもそも論になりますが、大手でもITの利活用がなされているのかといった課題があるのですから、中小はもっと大きな課題を抱えているはずであり、表沙汰になっていないのが現状ではないでしょうか?。

 今や、パソコンは業務で必須となっており、スマフォで業務をしているのも当たり前です。
 社内全ての職種が、これらのIT機器を使って仕事をされているわけではありませんが、少なくとも営業職と事務職は使っているはずであり、その職種の社員のリテラシーを含め、習熟度合いが低い企業では、IT製品を導入しても「使いこなせず、宝の持ち腐れ」になることは必定です。

 低い場合、底上げをするのが前提です。
 となると、事務職のタイピング能力と直ぐに考えるのが、昭和スタイルの企業にありがちです。ブラインドタッチが出来ても、全く無意味です(実際に、そういう企業は存在します)。
 まず経営陣と管理職が、どれだけITを使えて、紙媒体での毎月毎週の会議を無くすかです。

 そして、SalesForceに限らず、何らかのIT製品を導入する検討をしているとして、「本当に、それが使いこなせるのか?」ということが課題になります。

 結局は、今のITリテラシーと、社員及び経営陣のIT習熟度合いにより、如何にして業務を減らすかが課題でありますが、往々にして、中小はその分、社員を減らしたり、別業務を兼務させることで、「IT導入しても、個人の業務が増えた」と言う事にもなり、決してIT導入が業務効率化を良い方向にするとは言い難いと感じてます。

3.何のために製品導入を検討しているのか?

 導入に際して、今一度考えてほしいのは、「何のために顧客管理製品を検討しているのか?」です。

 Excelで顧客管理できるレベルであれば、高額な製品は不要です。
 SalesForceは、決して安い製品ではありません。

 製品を導入する事で、業務効率化となる中小は、よほど指揮命令系統がしっかりしている組織か、個々人が有能で専門技能を持っている社員で締められているかです。
 そうでない企業は、ITに振り回されるだけで終わってしまいます。
 中小は、社員の層が薄いのですから。

 SalesForceは、CRM/SFAとしては、よくできた製品だと思います。
 ですが、SalesForceを通じて顧客管理とは何か?、マーケティングとは何かを事前に知っていて、それを実践して、マッチする製品か。あるいは学んでいくかを全社で取り組まない限り、扱えない製品と感じてます。

4.製品提供企業の算定

 私自身、前職非IT企業では、各製品の選定や情報提供もしておりました。
 情シスのない会社で、上司は経理職。そしてその上は銀行からの出向者。
 IT社員にIT導入の権限はありませんでした。
 よって、私が良いと思った製品でも、経理上司が個人的理由で「使えない」と判断されれば、それまででした。
 勿論、中小としての購入費用上限も壁です。

 それら諸々含めて、製品選定をするわけですが、サーバ機等のハードは、スペックで判断できますが、ソフトウエアはそうはいきません。
 実際に使ってみないとわからないことだらけです。

 経験上、いかなる自社パッケージやクラウド製品の提供をしている企業も、「製品を開発して売っているのがメインではなく、専門知識をコンサルとして提供し、その副次的利用を促すために製品を販売している」と言う事を感じました。

 これは、SalesForceも同じと言えるでしょう。
 製品を知る以前に、その製品が如何にして出来上がったかという思いがあるはずです。それをコンサルと言う知識を通じて、自社にあった製品かを検討する事になります。

 勿論、中にはカスタマイズが可能な製品もあります。
 しかし、日本の悪い癖で、カスタマイズのし過ぎで、「別にその製品でなくても良いだろ」となり、余計な出費が重なる結果を招いてるのが大多数ではないでしょうか?。

 SalesForceは、購入して即使える製品です。
 しかし、カスタマイズはユーザ側で行うものとなってます(カスタマイズしてくれるベンダは存在します。SalesForce社は、導入コンサルと販売だけを行っています)。

 その為、ユーザ側にSalesForceの知識が必要となっており、カスタマイズをするとなると、初めてであれば相応に時間がかかります。
 その為の、無料のラーニングサイトが用意されておりますが、非IT職がそれを理解するには、相当の時間を要すると思われます。
 あるいは、かなり高額な研修に参加させるかです。

 また、どこまでサポート対応を親身にしてくれるかも、算定どころであります。

5.メジャー製品は、中小には高額すぎる

 金額は結構します。
 アカウント代も5・6名分で10万でしたでしょうか?。
 これを自社50名としただけでも、中小には相応な支出が毎月のしかかります。

 でも、導入費用に関しては、補助金利用で何とかなるケースもあります。
 ただ、ランニングコストを考えないで導入する事はさけるべきですね。
 中小だと、売掛で事業を回している企業が大多数だと思いますから、未回収が多いと、メジャー製品の導入は、費用面で途中で断念なんてケース無きにしも非ずです。

6.SalesForce専任者を確保できるか?

 プログラミングをせずに、直ぐ製品を使えます。
 しかし、SalesForceの世界は広いです。

 初導入で、全ての機能を使いこなすのは無理です。
 しかも、日本の悪い癖で、あれこれカスタマイズしすぎてのスタートとなりやすいです。
 その為、まずは純粋な用意された機能の中から絞って使い始める事をお勧めします。

 また、SalesForceは「導入した企業で、カスタマイズや保守を行って使っていく製品」です。
 SalesForceは、クラウド製品なので、サーバ異常の場合等の保守は、サービス品質として実施してくれますが、利用者たる自社社員に対しての保守は、ユーザ自身たる使っている会社で実施するものとなってます。
 その為、自社内に扱える社員がいなければ、トレイルヘッドを黙々とこなして理解できるレベルの社員がいるか、高額な有償教育を受けさせることでものになる人員がいるか、外部から採用するか、アウトソーシングするかになります。

 まず、トレイルヘッドですが、これは無償でできるラーニングサイトです。
 しかし、ほとんどが英語であり、翻訳機能を使うと、翻訳しなくても良い言葉に惑わされたり、元々は英語圏のラーニングなので、なかなか理解しがたいものとなってます。
 導入前に、幾つか実施してみる事をお勧めします。というか、しないと社員層の乏しい中小では、無理とも言えるでしょう。

 次に有償教育ですが、定期的に行われております。
 個人で支払うには、かなり高いです。それを自社で用意できるかです。

 次に、エンジニアの中途採用をする場合ですが、そもそも中小の多くは、年収が低いのではないでしょうか?。
 年功序列も普通に存在しますから、管理職より高い年収で迎える事は、まずないでしょう。まして、IT業界事情を知らない企業が多すぎるため、転職回数が多いだの、年齢が高いだのとの理由で採用を見送る企業が大多数ではないでしょうか?。
 結果として、集まらないのです。

 最後に、アウトソーシングをする場合ですが、データを見られてしまいます。
 顧客は、会社の資産でもあります。
 アウトソーシング先の企業で、更に下請け社員や派遣社員に従事させているかもしれません。
 結果として、ベネッセの例ではありませんが、流出させられてしまう可能性もあり、これは自社員ならともかく、最初からのリスク管理を考慮すれば、任せたくない理由をお持ちになる事も当然かと思います。

 このように中小の場合で、SalesForceを導入するには、幾つかの敷居がある事に注意しなければなりません。

 そして、中小の人員のなさとITエンジニアへの意識の違いから、ITエンジニアをデータ入力担当者としてあてがう事です。
 「IT専任者=データオペレータ」という考えの企業は、未だに存在します。
 こういう企業では、入社されても根付かず、また探し、いつまでも集まらず、SalesForceの管理もできないままと言う状態に陥るのです。

7.SalesForceをどう使うか?

 最後はこれに尽きます。
 「何のために」にもつながりますが、SalesForceを導入した後のゴールが定まっていなければ、導入する意味はありません。

 そして、導入する事で業務が回っていたとしても、SalesForceの利活用ができていなければ、導入した意味はないでしょう。Excelで充分です。

 最後に、
 安易な感覚で導入を決めれば、中小は火傷します。
 情シスもなく、ITエンジニアをないがしろにしている中小ならば、いずれIT職はいなくなり、立ちいかなくなります。

稚拙な内容になっているかと存じます。 それでも、サポートしてくだされば、ありがたいことです。