📘️ Book Club：逆転の発想：英語が第二言語としてUXライターになる強みと利点

みなさんは英語でのUXライティングと聞くとどのようなイメージをお持ちでしょうか？

私が勤める会社には、メルボルンを拠点にニューヨークにオフィスがあります。もともとビジュアル・デザイナーだった私がUXを始めた頃は、海外でUXデザイナーとして働く上で、日本語でも、コピーライティングやUXライティングは難しいのに、英語で書くのはもっと難しい…と長い間思い込んでいました。

ネイティブのUXデザイナーに相談に乗ってもらって、アプリのキャッチコピーを書いたり、自身でプロダクトのコンテンツやマイクロコピーを書くものの、より良いコピーにするために、ネーティブにフィードバックをもらったり最終レビューをお願いしていました。

コピーライティングとUXライティングの違いとは？
通常のコピーライティングは主に販促を目的としたライティングであり、UXライティングは製品やサービスとの接触時に使用されるものです。

UXライティングとは?
💡UXライティングとは、ユーザーがデジタルサービスを操作する際に必要となるテキストを書く技術のことです。「ユーザーがサービスを通じて体験する一連の経験を設計する」という思想で書くのがUXライティングです。

マイクロコピーとは？
💡マイクロコピーとは、ボタンの文字やフォームまわり、 エラーメッセージ、写真のキャプションなど、正直言ってこれまでコピーライティングの教材や、非常に細部の箇所のコピーのことです。

今まで英語を母国語とする人ほど上手になることはできないというのが常識のように私の潜在意識にあったのです。

また、他のUXデザイナーにコピーを書いてもらったほうが時間を削減できるのではないか？などと考えることもありましたし、今でも時々そう思うことがあります。その結果私はいつになっても完璧なプロダクトデザイナーにはなれないと考えてしまう癖が着いてしまったのです。

ノン・ネイティブ・UXライターが貢献をできることとは？

しかし、いろいろなプロジェクトや、いろいろなバックグラウンドを持つ方々と仕事をする上で、英語を母国語としない、またはターゲット言語を話さない場合でも貢献をできることが多くあることがわかってきたのです。物事には全て二面性があるように、ポジティブな側面から見れば、多様性が求められるこの世の中で、英語を第二言語としている者がコピーを書く強みというのも最近わかるようになってきました。

例を挙げますと、私はあるプロジェクトのユーザビリティ・テストの第三者のオブザーバーとして参加した機会がありました。

💡オブザーバーの仕事：ユーザーの発言を記録をしたり、インタビューを観察し、ユーザーの発言以外の行動も記録します。ユーザーの気になった行動も記録します。例えば「CTAがどこにあるのか探すのに時間がかかった。」などが挙げられます。

そこで、テスト事前にインタビューアーのスクリプトを確認した時に、何点か理解しにくい言い回し、また略語を見つけたのですが、スクリプトはネイティブ・スピーカーが書いたものだったので、意見をせずにテストを実行したのです。

6回のテスト中、3人のテスターがスクリプトの言い回しや略語に対して戸惑って、「それはどういう意味ですか？」「〜とはなんの省略ですか？わからない人も多いと思います。」といったように確認作業が必要な場面に遭遇したのです。それはまさに私が理解しにくいと思った箇所でした。

そこで思ったのです。ダイバーシティが進むこの世の中、高齢者、障がい者、LGBT、外国人および外国出身者などの方々に配慮し、多様な人々を包摂するという視点がとても重視されつつある現在、それに対応した文章を書くには、誰にもわかりやすく簡潔であるべきだとされています。実際に外国人である私がわかりにくいと思う言い回しや、略語は多様性をカバーできてはいないのではないか？という考え方を取ることができるようになってからは、逆にネイティブのUXデザイナーに対してフィードバックを与えられるようになり、UX向上に貢献ができていると思えるようになったのです。

またUXライティングには、分かりやすく書く技術と、人間らしく書く技術が必要だと言われていますが、私たちの立場を利用すると、文章をより明確にする手助けができると確信しています。

コンテンツを理解しやすく書くことは私たちの課題。

とういのも、UXライティングの手法に則ってテキストを書く際に求められるのは、文法構造が複雑でない、シンプルな文章を書く技術も同様に必要だからです。明確でない複雑で難しいテキストは、誤解を読みユーザー体験の中で意図しない行動を引き起こします。正確で読みやすいユーザーの体験をデザインすることが求められます。外国人である私がかくコピーは、何も心がけなくても、子供たちや、英語が母国語でない方々にも理解できるようなシンプルな英語で書かれているということになります。

またコンテンツを理解しやすくするのはノン・ネイティブスピーカーにとっての課題だとAdidasのUXライターであるKaliya Anevaは述べています。私は彼女の文字だけなのに、とても分かりやすい彼女のウェブサイトを見たときに、感銘を受けました。

ノン・ネイティブ・UXライターにとっては簡単？

文章をシンプル、直接的、明確、読みやすくしたい場合は、意識して能動態で文を書くことを勧められています。 私は常に自分の文章に自信が持てないので、能動態を使用することを心がけています。

能動態で書くということは、主語が「行動する」文を構成することを意味します。私たちが英語を習いはじめに一番最初に習う文章の構成が能動態です。どんなユーザーでも素早く理解できるようにするには、能動態で短く書いたほうが流し読みしやすいのです。

シンプルで私たちに一番馴染みがある能動態を使うことで、文章が明確になり、文章の説得力が増します。ニューヨーク市立大学リーマン校の教授であったチッヒー氏は「ライティングの専門家は、圧倒的に能動態を好む。なぜなら能動態は直接的で、明確で、自然であるからである。受動態の過度の使用は、文体を弱くし、責任を曖昧にする」と指摘しています。

能動態：I threw the ball.
受動態：The ball was thrown by me.

英語ではアクティブボイスと呼ばれています。言葉通り、能動態の文章にはエネルギーと直接性があり、それ書かれた文章は、受動態の文章よりも言葉が少なくなります。不要な単語をカットすると常に文章が改善されます。

参考資料

→ アクティブ・ボイスを使って文章を強化しよう。

Using the Active Voice to Strengthen Your Writing

→ 読みやすさがユーザーに響く
ユーザーは、テキストが明確で、単語や文がシンプルで、情報が理解しやすいものでない限り、ウェブコンテンツを読むことはありません。 

Legibility, Readability, and Comprehension: Making Users Read Your Words

→ シンプルな言葉はすべての人に響く
専門家は、不必要な専門用語や複雑な用語を含まない、明確で簡潔な情報を求めています。シンプルな言葉は、消費者と組織の両方に利益をもたらします。

Plain Language Is for Everyone, Even Experts

ノン・ネイティブ・UXライターが持つ利点

また、分かりやすさのうえで必要となるのが、私たちが普段使っているよな言葉で書くことです。コンピューターやスマートフォンで操作するシステムに対しても、私たちは感情を抱くことが明らかになっています。優れたデザインを生み出すために最も重要なプロセスがエンパサイズとも言われていますが、ノン・ネイティブ・ライターが持つ利点のもう1つは、共感力があるということです。

私たちは直感的にシンプルでわかりやすい言葉を使用し、あまり専門用語、複雑な構造、およびあいまいな用語を使用しません。外国人という立場上、常にインクルーシブという考え方があるからです。またノン・ネイティブ・ライターはまた国際的なユーザーのニーズに敏感だとも言われています。

私はあるネイティブ・デザイナーのレビューをしているときに、ウェブのヒーロー部分のキャッチコピーにスラングが使われていることに気付きました。そのキャッチコピーはユーモアがあるコピーを使用したいと思ったからだと理解しましたし、もともとはビジュアルのフィードバックだけをしようと思っていたのですが、なぜだかその文章がとても気になり、この文章は外国人にとってインクルーシブではなく、明快ではないと思うとフィードバックをしたのです。メルボルンにも様々なバックグラウンドを持つ人々がいるのですが、一つの場所で生活していると、どうしてもそれを忘れがちになります。インクルーシブなテキストを書く大切さを忘れてしまう場面もあります。

また、UXライティングは能力主義、人種差別、性差別、ステレオタイプを避けなければいけません。インクルーシブなUXライティングはその進化を形作るのに役立ちます。インクルーシブで書かれた思いやりのあるテキストは、明日を生きる人々の考え方や行動に影響を与えることができるのです。

UXライティングにはガイドライン、いわゆるルールが存在します。わかりやすい言葉のガイドラインに従う有名なコンテンツデザインによって、英語を母国語とする人もそうでない人も、コンテンツをよりアクセスしやすく理解しやすくするのに役立つことが証明されています。ガイドラインがあって初めてクリエーティブを発揮できるとも言われます。

まとめ

もちろん私たちは英語力を絶えず磨く必要があります。しかし私たちはルールを知っている必要があり、プロダクトデザイナーの仕事を上手にこなすことができるのです。また物事には全て二面性があるように、ポジティブな側面から見れば、多様性が求められるこの世の中で、英語を第二言語としている者がコピーを書く強みというのもあり、私たち特有の利点や様々な形で貢献できることもたくさんあると思います。

効果的なUXライティングのための16のルール

16 Rules of Effective UX Writing

UXライティング・ガイドライン by アドビ XD アイデア

UX Writing Guidelines & Best Practices | Adobe XD Ideas

UXライティング：究極のガイド[2021]- Edge of the Web

UX Writing - the ultimate guide [2020]

私も、色々勉強中なので、皆さまの、ご意見・ご感想をお聞かせください。お読み頂きまして、ありがとうございました。

メルボルンを拠点にプロダクトデザイナーとして働いています。 主にデジタル・プロダクトの制作に携わっています。