📘️ Book Club：デザイン思考は料理のプロセスによく似ている?デザイン思考を成功に導くファシリテーションとは？

現在、多様な価値観や複雑で予測不可能な社会に対応すべく、デザイン思考を用いて、問題解決をするためのファシリテーション・スキルが注目を集め始めています。

デザイン思考ファシリテーターとは？

皆さんは、明確な結論がでないままにタイムアップでミーティングが終わってしまい、なんだか時間の無駄ではなかったのかと思ってしまった経験はないでしょうか？

ファシリテーションとは一言でいうと「ミーティングを円滑に進める技法」のことです。ファシリテーションの役割を担う人のことをファシリテーターと呼びます。ファシリテーターはミーティングをスムーズに進め、その結果生産性が得られるようにするに努めます。

具体的には、参加メンバーの発言を促しながら、多様な意見を瞬時に理解・整理していき、重要なポイントを引き出しつつ、議論を広げ、最後には議論を収束させ合意形成をサポートします。

ファシリテーションのことについて学ぶ前に、いくつかの重要な用語を学ぶ必要があります。まず、デザイン思考。デザイン思考は、エンドユーザーまたは顧客を意思決定の中心に置く方法論です。デザイン思考、またはプロトタイピングとテストのアイデアに重点を置きましょう。デザイン思考は流行や一時的なビジネストレンドではありません。これは、新興企業と大企業の両方に採用されている強力な働き方であり、あらゆるビジネス上の課題にうまく適用できます。

デザイン思考ファシリテーターは、デザイン思考手法を活用したワーキングセッションでグループを率いる人物です。 

これらの集まりは、ブレインストーム、イノベーション・ワークショップ、エグゼクティブ・サミット、デザインス・プリント、数日間のワークショップ、長期プロジェクトなど、さまざまな形をとることがあります。

デザイン思考ファシリテーターは、革新的で前向きな方法で考え、作業するためのガイドです。

デザイン思考のプロセス

デザイン思考は料理のプロセスによく似ていると言われています。

場づくり・チーム作り、プレパレーション：素材集め
アクティビティ・フレームワーク：レシピ
ファシリテーター：料理人

プレパレーションや、チーム、場づくりから「ファシリテーション」は始まっており、これが最も重要な素材となります。なぜなら素材がなければ何も作れないからです。

そして、より良いファシリテーターになるにはステップを踏んでいかなければいけません。

1. レシピ通りに作る
2. レシピにひと工夫加えてみる
3. 自分でレシピを作ってみる

ビジネスを「創る」ためのデザイン思考ワークショップのツールキットが多く存在しますが、デザイン思考はあくまでユーザーを中心にした問題解決のための思考法であり、初めはツールやテンプレを使いレシピ通りに作って、マインドセットやスキルをつけて、最終的には自分のレシピを作っていくことが大切です。このように考えると、どんな素材でも、レシピでも、いい料理を作りあげる。それが究極の料理人（ファシリテーター）なのかもしれません。

私の会社はデザイン思考に重きを置くイノベーションデザイン会社です。プロダクトデザイナーとしてデザイン思考を用いて問題解決をしていくことも仕事の一環です。

デザイン思考の本質はチーム作りであるとも言われています。クライアントやチームメンバーとの対話、彼らの意見を聞き取り、それらをまとめて本質的な課題を定義、結果的に解決策の提案など、チーム作りを成功させるためには、デザイン思考実践において重要なスキルがファシリテーションとされています。

私は今までにも簡単なブランドスプリントのワークショップや、プレゼンテーションのファシリテーションは経験したことがあり、デザイン思考を用いてプロジェクトを進めているつもりですが、思うように成果を出すことができていないと日々奮闘しています。

私はまだファシリテーターとしては未熟者で、テンプレやデザイン思考ツールを使用し、レシピ通りに調理を進める修行中の料理人です。

デザイン思考を用いて問題解決を図った結果、イノベーションが起こることは多分にあり得ますが、それは、実践を積んでデザイン思考を自分のものにした場合にのみ起こることだと言われています。

今回はデザイン思考を成功に導くファシリテーションを探っていきたいと思います。デザイン思考やイノベーションのワークショップを主導するために知っておく必要のある基本事項、またより良いデザイン思考ワークショップを促進する方法、運営するためのヒントとコツをまとめました。

一番大切なキーワードは入念な準備と共感することで信頼関係を構築するということです。ファシリテーションのスキルや経験があまりなくても、2つの重要かつ基本事項をまずは徹底することが大切です。

準備が大切

調理前にも最良の調達や、プレップが必要なようにワークショップの際にもプレップがとても大切です。より良いファシリテーターになるためには、ワークショップ内で瞬時に判断ができる頭の回転の速さが必要ではないのか？っと思っている方々も多くいると思います。私も素晴らしいファシリテーターと一緒にすることがありますが、いつも感心させられます。しかし、彼らと話をするとパフォーマンスは20％余りの仕事で、彼らはよりその準備に時間をかけると話していました。

参加者をどのように導きたいのか？不慮の事態が起こった場合はどう対処するのか？例えば、参加者がツールに慣れていない場合など。そういったあらゆる可能性を考慮し入念にシュミレーションすることが不可欠です。あらゆる状況を考えることでそれが自信にもつながっていきます。またこのような入念な準備こそが、リーダーたる自信のある堂々とした振舞い、またチームの信頼関係の構築に大きく貢献します。

Step1：何を達成する必要があるかを明確しましょう

デザイン思考のファシリテーターとしての最初の仕事は、会議やエンゲージメントを通じて何を達成する必要があるかを明確にし、定義することです。 特定の課題と望ましい結果を知りたい。 あなたが答えたい最終的な目標と質問を書き留めて、あなたの仲間の参加者があなたが定義した目的に同意することを確認しましょう。

上級者向けのヒント：デザイン思考セッションの前に、クライアントと30〜60分の会話をスケジュールして、達成したいことについて同意していることを確認しましょう。

Step2：参加者リストを作成しましょう

デザイン思考ファシリテーターのもう1つのタスクは、参加者を揃えることです。 このセッションには誰が参加する予定ですか？ あなたの主なクライアントまたは利害関係者は、ゲストリストの作成に強い手を持っている可能性があります。 ただし、デザイン思考のファシリテーターとして、参加者リストの作成を支援することが重要です。

デザイン思考ワークショップは、多様なチームで最も効果的に機能します。参加者のスキルセット、専門知識などを多様性があることを確認しましょう。またチームメンバーのバックグラウンドや関係性を出来るだけ知っておくことも非常に役立ちます。それぞれの立場を想定しやすくなるため、チームが議論しやすい環境設定の工夫が前もって考えられるからです。

表現される視点が多いほど、結果は優れたものになります。 もう1つの考慮事項は、参加者の数です。 通常、7〜15の間が最適です。 人が少なすぎて、アイデアが足りません。

💡ワークショップ中は、グループのリーダーが誰であるかも注意深く観察してください。 リーダーは通常、グループの会話と声を推進する人です。 しかし、1つのグループにリーダーが多すぎると、対立が増え、生産性が低下する可能性があります。 

Step3：アジェンダを作成しましょう

焦点を定義し、参加者を特定したら、次はあなたの集まりを計画します。あなたのアジェンダについて考える良い方法は、最後から始めることです。

次のような質問を問いかけてみましょう。
あなたはあなたのデザイン思考セッションから何を得る必要がありますか？
アラインメントやたくさんの斬新なアイデアが必要ですか？
優先順位の高いロードマップまたは新しいエクスペリエンスのペーパープロトタイプをお探しですか？

💡既存の枠組みを超えたアイデアを創出するために、アジェンダに取り込むアクティビティには、アイデアの発散と収束を考えながら構築しましょう。

最終的に必要なものがわかったら、その結論に向けて構築するデザイン思考アクティビティを計画できます。デザイン思考ワークショップを実行するための標準的なアジェンダと方法はありません。 ただし、練習すればするほど、適切なアジェンダとアクティビティを形成することができます。

あなたが行う個々のアクティビティは、あなたの特定の挑戦によって大きく異なります。ただし、時間に関係なく、イントロダクション、アイスブレーカー、およびメールなどをチェックするための休憩時間は含めましょう。

💡休憩は大切
60〜90分ごとに10〜15分の休憩をとりましょう。参加者が集中力を維持できるように、参加者の自然のニーズと注意力に共感する必要があります。 休憩は参加者がリフレッシュするのに役立ち、生産性が向上します。

💡参加者にリラックスしてもらためのアイスブレーカー
多くのファシリテーターは、アイスブレーカーをスキップする傾向があります。 しかし、ワークショップを開始することは最も重要な活動の1つだと思います。 ちょっとしたゲームをして、チームを和ませ、お互いに快適に感じてからワークショップをスタートさせましょう。またワークショップの間、人々が眠くなったり疲れているように見えるときはいつでも（特に昼食後）、エナジャイザー活動を頻繁に使用しましょう。 エネルギーを高めるだけでなく、会話が真剣になりすぎると部屋の雰囲気も変わります。 デザイン思考の概念に合ったコラボレーションゲームを選択してみてください。

上級者向けのヒント：アクティビティをタイムボックス化するときは寛大になります。すべてのアクティビティにがあなたが思っているよりも長く時間がかかります。 個々のアクティビティにかかると想像する時間を2倍にすること念頭に置いておくと良いと言われています。

Step4：ウェルカムセッション

ワークショップの1週間前に参加者のためにウェルカムセッションをしましょう。

→ デザイン思考とデザイン思考ワークショップの簡単な紹介
→ デザイン思考のメリット
→ ワークショップのユースケース
→ ワークショップの議題
→ 日付時刻
→ 場所（ワークショップ会場への行き方とグーグルマップへのリンク）
現在はオンラインで行われることが多いと思いますので、Zoomのリンクなどを供給します。
→ ドレスコード（快適な服装）
→ ブロックチェーン、機械学習、チャットボット、AIなどの事前定義されたテクノロジーを提示しておきます。参加者がテクノロジーの仕組みと適用方法を理解できるように、半日の有効化ワークショップを実施することを強くお勧めします。 これは、参加者がアイデアの中で問題の正しい解決策をブレインストーミングするのに役立ちます。

参加者にワークショップの目的を理解してもらおう。
参加者がワークショップの目的を達成できるように、ユースケースとドメインを十分に理解することが重要です。ビジネスのユースケースについて読むために、1日か2日を費やすことをお勧めします。

念頭に入れておきたいことは、参加者が安心感を持って自らの意見を発言しやすくすることです。あらかじめワークショップの目的を理解してもらうことで、参加者も個々にワークショップに向けての準備ができ、安心してワークショップに参加することができるのです。これがまた信頼関係の構築の手助けをしてくれすことでしょう。

→ オンラインでのワークショップの利点を理解よう。

業務のオンライン化が定着しつつある現在、オンラインワークショップにおける多くの気づきを得られたと実感している方も多いかと思います。オフラインではできなかったが、オンラインでは可能になるという点も多いことがあります。まずは参加における場所の制約がないことがあげられます。インターネットにアクセスできる環境であれば、誰でも同じ条件下で参加できます。これはワークショップの新たな可能性を広げるという点で、オンラインワークショップの大きな利点だと思います。

また、ホワイトボードツールとして主に使われているMiroやGoogle Slidesなどのツールのメリットは、手書きに比べて保存・複製が簡単にできることです。参加者が入力したデータが自動的に保存されていくため、オフラインワークショップで行っていた壁一面のポストイットの撮影、そして共有フォルダへのアップロードという手間が不要になりました。

オフラインでのワークショップでは、ワークスペースが手狭になってしまうと、それまでの議論の軌跡を消して新たなスペースを作る、といったことも多く見られた光景でしたが、オンラインのツールでは、無制限かつ簡単にホワイトボードを増やしていくことができます。

また、ワークショップを録画すれば映像資料の作成もしやすいため、ワークショップの過程や雰囲気を参加者以外の人へ伝達・共有すること、ファシリテーターもスキルを磨くためにワークショップを振り返ることが可能になりました。

Step5：ファシリテーションTip

ファシリテーションに関して言えば、誰もが独自のスタイルを持っていますが、チームをリードする際に考慮しておくべきことがあります。

→ リーダーとして行動しよう。
進行役のあなたは早い段階で権限を確立しておくべきです。自信を持って意思決定を行い、次のアクティビティに移る促進を促す進行役なのです。自信を持って堂々と振舞い続けることが、最も基本であり最も重要なポイントです。

ファシリテーターは、ワークショップ内の状況を敏感に察知し、参加者の発言の意図をより明確にさせるための質問やアイデア発散のサポート、チームダイナミクスを調整するための議論への介入も行う必要があります。萎縮したり不安になったりして狼狽えるのは、ファシリテーターNG行為ナンバー1です。なぜなら自信ある振る舞いが信頼関係の形成において重要になるからです。そしてこれこそ、その後のファシテーションの明暗を分けこととなります。

→ ルールを決めておこう。
グループにその日のルールを知らせます。 たとえば、携帯をサイレントにするなど、セッションに完全に参加するように人々に促します。ルールを持つことは、ワークショップの参加者に明確な期待と行動を設定するのに役立ちます。 

→ オープンマインドでいること
どんな意見も受け止めるオープンな姿勢を貫くことは必須です。そのような姿勢をファシリテーターが率先して体現することで、「どんな意見も発言できる」チームの雰囲気が醸成できます。

→ 例を表示しよう。
アクティビティごとに、何をしたらいいのかわからなくなって、焦ってします参加者も少なくありません。 それで、別のユースケースからの例を提供します。 たとえば、共感マップに1つのポイントを事前に入力しておきます。

→ 絵を描いてみよう。
迷ったり、物事を説明するときに絵を描いてみると役立つ時があります。
絵は千の言葉を話します、それは他の人に効果的なアイデアを伝えるのに役立ちます。 絵を描くことで、他の人がより多くのアイデアを生み出すように刺激することもできます。

→ 全員に声かけをしよう。
ファシリテーターとして、あなたは全員に声を聞かせてもらう責任があります。 誰かがあまり発言をしていないと気づいたら、その人を会話に引き込みましょう。メンバー全員が100％の力を出せるように、発言しやすい環境づくりも重要な仕事の意図つです。私も内向的な性格で、ワークショップに参加するときに他の方々に発言を任せてしまう傾向があるのでわかるのですが、良いファシリテーターはそんな内向的な参加者の意見もしっかりと聞き出していました。

→ 客観・中立的な立場を守ろう。
ファシリテーターは自分の視点や意見を提供することはないで、客観的で中立的な立場を守る必要があると一般的に言われています。ただしチームの目指すゴールや状況に応じて、議論に対する自己の見解やチームの議論を活性化するような情報を提供することは時として必要です。

Step6：セッションは終了後にすべきこと

デザイン思考ファシリテーターとしてのあなたの仕事は完了していません。デザイン思考会議の後の数日間に考慮すべきことがあります。

→ 写真とドキュメントをしよう
会議からの重要な出力、つまり、作成された可能性のあるポストイット、図、ワークシートを必ず写真に撮ってください。

→ 学習内容を統合しよう
ワークショップがそのセッションだけで終わってしまったら元も子もありません。セッションのアウトカム、そしてセッションから生まれたアイデアについて熟考する時間を取ります。 短いプレゼンテーションや壁画ボードのように、これらの調査結果を消化しやすい方法で合成します。ここではストーリーボードを制作することが進められています。エンドユーザーの観点からソリューションを視覚化するための線形の一連の図です。

→ 参加者と次の計画を立てよう
参加者と学習内容を共有する時間をスケジュールし、前進する方法について一緒に計画を立てましょう。

参考資料

Design Thinking Facilitator Guide: A Crash Course in the Basics
デザイン思考ファシリテーターガイド：基本のクラッシュコース
デザイン思考の促進の初心者のためのガイドです。 デザイン思考やイノベーションのワークショップを主導するために知っておく必要のある基本事項がまとまっています。

Top 10 Facilitator Tips to Run a Successful Design Thinking Workshop
デザイン思考ワークショップを成功させるためのファシリテーターのヒントトップ10
UXデザイナーは、ビジネスとユーザーの間のスイートスポットを見つける責任があり、製品を構築する価値があるかどうかを検証する必要があります。優れたデザイン思考ワークショップは、ユーザー、ビジネス、テクノロジーの間を橋渡しして、問題をスピードと規模で解決するのに役立ちます。

Keys to Ensure Your Design Thinking Will be a Success
デザイン思考が成功することを確実にするための鍵
デザイン思考は問題を明確に理解し、エンゲージメントを構築し、ユーザーとの共感を促進し、IT、ビジネスパートナー、エンドユーザーのニーズと要件を満たすソリューションを提供する可能性を大幅に向上させる素晴らしい方法です。デザイン思考セッション（ファシリテーション）を成功させるために考慮すべき重要な点がいくつかあります。

Design Thinking as a Strategy for Innovation
イノベーション戦略としてのデザイン思考
この記事では、デザイン思考が適切かつ戦略的に実行された場合における、ビジネスの成果に影響、また真の競争上の優位性をもたらす方法について説明しています。

まとめ

UX デザイナーまたはプロダクトデザイナーは、ビジネスとユーザーの間のスイートスポットを見つける責任があり、プロダクトを構築する価値があるかどうかを検証する必要があります。

優れたデザイン思考ワークショップは、ユーザー、ビジネス、テクノロジーの間を橋渡しして、問題をスピードと規模で解決すし、通常の作業方法では明らかにならない可能性のある新しい洞察やアイデアを発見するのに役立ちます。

一言で言えば、デザイン思考ファシリテーターは、革新的で前向きな方法で考え、作業するためのガイドになる必要があります。

私も、色々勉強中なので、皆さまの、ご意見・ご感想をお聞かせください。お読み頂きまして、ありがとうございました。

メルボルンを拠点にプロダクトデザイナーとして働いています。 主にデジタル・プロダクトの制作に携わっています。