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【不登園記録#2】3歳4ヶ月登園拒否。母の状態

この頃の私は毎日のように泣いていた。
毎朝、大格闘をして子どもを送ってきたはずなのに、本当に預けられていたか不安になり後部座席を何度も確認した。

数年前、コロナで在宅ワークが増え始めた頃。3姉妹を乗せて2箇所の保育所に預ける必要があった保護者が、次女を預け忘れて車に残したまま自宅で過ごした結果、熱中症で死亡させてしまったニュースがあった。

子どもを育てる前の私であれば、信じられないと憤りを感じていたニュースも、今や他人事ではない。


◇ 束の間の休息

GWがやってきた。今年は3連休と4連休で飛び地になっている。予定は立てず、ひたすらのんびりした。
朝起きて、何を食べようか?と家族と話しながらダラダラとする。適当に付けたテレビでは渋滞情報がやっている。「こんなに暑いのにみんなで混む場所に向かうなんてね〜。」と自宅に引きこもる賢い選択をしたと、高みの見物気分を味わう。

食材の買い込みもしない。毎日食べたいものに合わせて夕涼みがてら、家族で近所のスーパーに歩いて行った。
平和だった。ずっとこの時間が続けばいいのにと思った。

◇ 母の勘

GWはあっという間に終わった。久しぶりの登園。彼は常に不安が強くて、家の中でも後追いが激しくなった。集中して遊んでいるのを見計らって洗濯物を片付けに行く。でも2,3分も経たずに探しに来る。

「ママ〜〜ママ!!?ママ?どこなの??」と心配した顔で家中を探し回る。
ハイハイ期以来のドアを開けたままのトイレ生活が再開した。

気づくと前日の夜から毎日泣くようになっていた。毎晩「保育園は休みたい!!」と訴える。夜中にも2,3回起きて、「保育園に連れて行かないでーーーー!!!」と寝ぼけながら叫ぶ。20,30分かけて寝かしつける。

私は検索魔と化していた。2:30までスマホを見る。夜中に泣いた我が子を対応して、5:30頃に目が覚めて直ぐにスマホを手にする。

調べた事は全部試した。「気持ちに共感する・見通しをつけるために視覚支援をする・朝は毅然と送り出す・休みの日は思いっきり関わる・・etc」
夢の中でも送り出しのシュミレーションが続いた。

次の月曜日、私は布団から起き上がれなくなっていた。もうだめだと思い仕事前の母にLINEで助けを求めた。
私の送り出し能力が低いのが原因かもしれない。別の人ならうまくやれるのかもしれない。と思っていた。

転がるように隣の部屋に隠れて、その日は母に送ってもらった。

1日目は泣かずに行けた。母が彼と楽しそうに保育園がある日の朝を過ごしている。こっそり様子を見ながら、内心は悔しかった。
しかし、2日目からは癇癪がでた。隣の部屋で1時間ほど聞き耳を立てていた。
母のあの手この手が尽きた頃、「泣いたまま保育園に行くの?先生もお友達もびっくりするから泣き止むの!!」と彼に言い放った。

気づいたら隠れていた部屋から出ていた。「もういい!!!私が連れて行くから!!」と母から彼を奪い取った。そして泣き叫ぶ彼を保育園へ連れて行く。

彼を預け終えて、保育園の玄関を出ようとすると、事務室の前に母がいた。何やら主任の先生と話をしていたようだ。母の背中を引いて保育園から直ぐに出した。
「余計なこと、しないでよ!!!!先生の朝の忙しい時間に迷惑でしょ!!!!」と伝えた。母はなにも言わなかった。お互いそれぞれの車に乗って仕事へ向かった。

母への八つ当たりに、自宅に戻りながらすぐに反省した。ごめんなさい。言い過ぎた。心配してくれてありがとう。と短いLINEを送った。

そのメッセージに[グッ]のスタンプだけが付いた。私はPCを開いて30分遅れの打刻をする。

◇ 8:29の電話

水曜日、今日はいつもより早く保育園に預けた。いつもと同じように大暴れする彼を無心で預ける。先生にだけは笑顔でお願いします!と挨拶をする。

家についてすぐ、PCを開いた。打刻はまだしない。
「自治体 子育て 相談」と打ち込んでいた。8:30から電話相談窓口が開く。先に誰かが通電して通話中になってしまったら私の心はもう折れてしまいそうだった。一番乗りで相談がしたい。

スマホの時計アプリの、秒針を見た。針の動きがゆっくりに感じる。
8:29   55.56.57.58秒と目で追って、事前に入力しておいた番号の下に表示される緑色のボタンを押す。
つながった。30代前半くらいの男性が出た。

「お電話ありがとうございます。こちら〇〇区の子育て相談窓口です。本日はどうされましたか?」優しく落ち着いた声で定型文が読まれる。

「あの、我が子の事で相談したくて。」と一声を発すると、頭が仕事モードに入り始めた。

「そうしましたら、お子さんとお母さんのお名前と生年月日、ご住所と、在籍している園がありましたらお教えください。」と言われた。
いきなりそんなに全ての個人情報が必要なのか?と思った。でも全部伝えて、今後然るべきところへの引き継ぎに使ってくれ。と直ぐに思い、言い慣れたそれらを業務的に伝えた。

「今どんな事に一番困っていますか?」
一番困っていること?なんだろう。困っていて電話をしたくせに分からなくなった。

「あの、保育園に預けるのが毎日大変で、私仕事が手につかなくなってきてしまって、それでどうしたらよいかと思っていて・・」
「それでは、これまでの様子を聞いていきますね。どんなお子さんでしたか?」といろいろな質問をされた。

答えながら、今までは天才だ!と褒めてきた我が子の特徴も、なんだかおかしいなと感じていたことも、発達に課題があったのではと疑っていた自分に気づく。

「あの、できれば、発達検査もしたいんですけど・・」と伝えた。「分かりました。今の予約状況ですと8月が最短になります。2週間以内に指定する日を折り返しますのでもうしばらくお待ち下さい。」
もうしばらくお待ち下さい?2週間以内?3ヶ月後?うそうそうそ。数分も待ったなしの切羽詰まった自分を自覚した。

「あの、もう、無理なんです。そんなに待ったら私、壊れてしまいそうで。」とはじめて話したその男性に泣きながら訴える。言葉と息がどんどん詰まっていく。

すると、男性も緊急性を理解したようで、対応の仕方が変わった。
とても寄り添って話を聞いてくれた。でも、どうしても待ち時間は発生してしまう。なので、子どもの発達外来をしている近隣の病院に掛け合ってみてください。と提案された。

2つの病院の名前をメモして電話を切った。



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