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ひとくちのかち

こってりしたものはすぐに飽きてしまうから、あんまり沢山食べられないのだけれど、どうしても食べたい時がたまにある。炭酸の強い飲み物も、時々どうしても飲みたくなるのに、おいしいと思えるのはいつだって最初のひとくちだけで、あとは甘ったるいピリピリを耐えるだけになってしまう。そうと分かっていながら、どうしても、ひとくち目の感動を求めてしまう。ひとくちだけ、分けてくれる人がいればなぁ。そんなワガママは、独りの暮らしには通用しないのであった。

ラーメン屋に入ると、私の淡麗とあなたの中濃は、いつもひとくちだけ相手のものになる。あなたのすきな炭酸ジュースを、ひとくちと言いつついつもこっそりふたくち飲む。こんなに幸せな日々なのに、どんなに高級なデパートにも売っていないのだから、幸福とは不思議なものである。

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