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生きるための芸術日記

はじめに

来月半ばから個展があって、それに向けて集中したいと思っています。そこで日記を公開することにしました。

ぼくは妻と二人でひとつの作品をつくります。夫婦で芸術家です。名前はふたりで檻之汰鷲(おりのたわし)といいます。紙を切って貼るコラージュからスタートして20年ほど、現在は茨城県北茨城市の山間部にランドスケープをつくるほどに発展しました。気分はリチャード・ロングや郵便配達のシュバル、ヨーゼフボイスもしくは宮沢賢治の虔十公園林です。ググってみてください。
そこに至る経緯は「生きるための芸術」というテーマの本に書いてあります。読んでみてください。2冊は出版社から出してもらって、2冊は自分でつくって売っています。

生きるための芸術とは、生活そのものや自分が暮らす環境をつくることでもあります。植物が大地から芽を出し花を咲かせるように、日々の生活環境が作品を生み育むのだと考えています。作品をつくるために、こうやって文章を書いて「生きるとはどういうことだろう」と考えるために本も読みます。つくること、書くこと、読むこと、考えることが好きです。

表現することは、評価や売ることだけが目的ではありません。作品をつくることでまた自分がつくられていくのです。そのためにしたことを文章に書くのです。いまここに書いているように。書くことでさらに自分がつくられていくのです。そしてつくられた考えを新しくするために誰かが書いた本を読むのです。つくる。書く。読む。またつくる。そして生きる。そうやって生き方そのものをつくっています。

ところが、なかなか1日を理想に仕上げることが難しいんです。怠けてしまったり、頼まれたことばかりやって、ほんとうにやるべきことができなかったり。単に楽しい1日というだけでは目指すところとは違うんです。目指すのは今日したことが明日のステップになるような1日です。考えてみてください。すべての人が平等に24時間を持っているのです。だから本来それをどう使うかは自分の自由なわけです。もちろん諸事情でそんな自由なんてなかったりもするわけですが。しかし僅かでも自由に時間を使えたとしても、暇だなんていってその貴重な時間を潰してしまったり。つまり最も厄介なのが自分をコントロールすることなのです。もし自分を思い通りに動かせるなら、仕事も勉強もスポーツも100点です。金メダルです。つまり自分を思い通りに動かせたら、ぼくたちはもっと人生を豊かにできるんだと思います。この文章は、それをやってみようという話です。

最近読んだフランスの哲学者ミシェル・フーコーさんの「真理のディスクール」という本が自分のコントロールについて、あまりにも素晴らしい考え方を披露してくれたので、ここで紹介します。

この本は、古代ギリシャのパレーシアという言葉について書いてあります。パレーシアとは簡単にいうと「真理を語る」ことです。真理とは、これも簡単にいうと「ほんとうのこと」です。例えば、身分が下の者が上の者に勇気を出してほんとうのことを言うのです。家来が王様に言えないようなことを言ってしまうのです。ですのでパレーシアには命懸けでほんとうのことを言う、という意味も含まれています。

本にはこう書いてあります。
パレーシアとは
語る者における真理の勇気、つまりすべてに逆らって自分の考える真理のすべてを語るリスクを冒すものの勇気であると同時に、自分が耳にする不愉快な真理を真であると受け取る対話者の勇気でもある。

しかし「ほんとうのこと」を言う、といっても、誰にとってのほんとうなのか? という問題が出てきます。かなり端折りますが、その問題を解決するには、パレーシアをする人が正しい人であるという条件が出てくるわけです。しかし、しかしです。「正しい」ってこともまた「ほんとうのこと」と同じ問題にぶち当たります。そこでフーコーさんは、パレーシアとは、真理に近づくために己を鍛錬する技術だという考えに到達するわけです。

本にはこう書いてあります。
こうした鍛錬では技術者、職人、芸術家のような役割において、自己と向き合うことができるのです。そして職人は、ときおり仕事の手を休めて、自分は何をしているのか調べ、自分の技芸の基礎はどんなものだったのかを思い出し、こうした規則に照らして、これまでの仕事を点検するのです。

ぼくはこうやって本を読んで先人の思考に触れて、自分の生き方に反映させているのです。フーコーさんは、哲学は実践するものだと言っていたそうです。実践するとは実行する、行動に移すことです。やってみましょう。

なにより自分を動かすにはモチベーションが必要です。それに加えて楽しいと思えることがあれば更に軽くなるでしょう。だからぼくは自分の毎日を日記にして公開することにしました。みなさんに見られる、読まれることで、みなさんの眼差しを借りて、自分と向き合い、よりよい1日になるように努力するのです。

もうひとつ日記を公開する理由を書いておきます。ぼくの本、生きるための芸術シリーズは自分で販売しているほかに2つの本屋さんが取り扱ってくれています。ひとつは東京・吉祥寺の百年。ひとつは長野県・諏訪の言事堂
先日、言事堂さんに売り上げを確認しにいったら一冊売れていました。嬉しかったので精算して、棚を眺めてみつけた柳田國男さんの炭焼日記を買いました。

ぼくはアート活動の一環として、冬から春に炭焼きをやっています。だから、柳田さんがどんな炭焼きをしたのか知りたいと思ったのです。戦争が終わるころ、物資が不足して暖房にも困った時代に、柳田さんは庭で炭焼きを計画するのです。ところが二ヶ月ほど取り組んで、炭焼きは失敗に終わるのです。そんな日記を読みながら最初は、失敗かよ、なんだよそれ本にするなよ、と思ったのですが、日記だから失敗も成功もないんですね。ただ毎日が記録されていく。日記には過去もなく未来もなくただ今現在を記録する。それにグッときて、そうだ日記だと閃いたのです。

長くなりました。失礼しました。
ここまで読んでくれてありがとうございます。ほんとうに。
この日記は、2023年7月15日から福島県のいわき画廊での個展「アースワークス」に向けた制作の日々を公開して毎日をよくする企みです。成功も失敗もありません。日々自分を励まし、心、技、体を鍛錬する。読んでくれた人も理想の1日をぜひつくってみてください。励まし合えたら嬉しいです。生きるための日記スタートです。

2023年6月11日(日)


雨。
朝8時に起きた。
ストレッチ。
妻と午前中、次の展示に向けたミーティング。制作する中身を具体化した。
昼食
午後も続きをやって2時過ぎ雨が止んだので犬の散歩。ついでにランニング。犬と走る。帰ってきて薪割り。30分やったら雨が降ってきた。
薪で風呂を沸かす。
粘土で制作。
「太古からやり直せ」をテーマに粘土板をつくる。

風呂に入りながら
ミシェルフーコーの「真理の勇気」を読む。

夕飯
犬と土間で遊ぶ。

ボストンのパンクバンドThe real kidsを聴く。
1974年から活動してたことを知った。
The real kidsを聴きながら
フジロックDay DreamingのTシャツデザイン。
修正版を作成して確認のメールを送った。
音楽はThe real kidsからThe muffs, Bikini killを経てJean grae, Jenny lewisの新譜.

0時30
寝る

2023年6月12日(月)


曇り
朝サーフィンの誘い。
電話で目覚める。
ポイントに集合。
昼までサーフィン。

先輩のアドバイス。
どんどん波に乗らなきゃ。
待っててはダメ。
まずは波を掴まえて立つこと。
真っ直ぐに進めばいい。
できることからひとつひとつやる。
流されてるからパドルして
位置をキープした方がいい。

スポーツの教訓はいろんな場面に当てはまる。とにかく実践あるのみ。流されずに自分のポジションをキープすることは、日常生活でも同じ。あっちこっちの成果や情報に振り回されて自分を見失いがち。

サーフィンの先輩たちが
アトリエに遊びに来てくれた。

夕方
絵の構成を練る。


サーフィンの先輩たちと食事。

2023年6月13日(火)


曇りのち晴れ
7時に起きる。
LINEに友達の息子でバンドを一緒にやってるメンバーから彼の曲をリリースした知らせが届いた。20歳の彼がつくった楽曲。素晴らしい。
バンド名はhyouuka(ヒョーカ)
1曲目のタイトルはsoul surfer.

8時
サーフィンにいく。
昨日に引き続き先輩たちと。
ひとりでやるよりも上手い人と一緒に入った方が上達する。
波に飲まれて腰を痛めた。

午後
絵の構成つくる
日記連載の序文を書く。

夕方
薪で風呂炊き
風呂入る

夕飯
犬と土間で遊ぶ
Netflix「Turn of the tide」を英語字幕で観る。


龍の絵の修正。
龍の絵がうまくできなくて難航。
妻が絵が光らないと言う。
ふたりともガッカリする。
妻に「なんで絵を描くの?」と聞かれ
「売るためにだよ」と答えた。
でもほんとうは
表現することしか
自分にはできなくて
ものをつくっているときが
平和だからだと思った。

0時過ぎに寝る

2023年6月14日(水)

8時
お世話になっている近所のお婆さんスミちゃんの呼び声で起きる。
市長の初登庁だから市役所に行くように言われる。

炭焼きの師匠アリガさんが草刈りしてるので話しかける。炭焼き、養蜂、草刈りの話。
アリガさんに今年蜂をもらったので、その管理を教えてもらう。

10分だけオンライン英会話。
毎日やりたいができてない。

市役所へ。
市長の当庁見送る。
帰りホームセンターでパネルづくりの材料買う。

昼前まで彫刻のカタチを検討する。

「真理の勇気」ミシェル・フーコーを読む。
パレーシアステース(パレーシアを行う者)とは、それを本職とする者のことではありません。そして、たとえパレーシアのなかに技術的な側面があるとしても、それでもやはりパレーシアは技術や職業とは別のものです。パレーシア、それは職業ではなく、もっととらえ難い何かです。それはひとつの態度であり、徳に通じるひとつの存在の仕方であり、ひとつの振る舞い方です。

13時30分
磯原幼稚園で造形教室の先生。
5歳の女の子たちと色を混ぜてつくる。
木に色を塗った。
最終的に子供たちは手に色を塗って大騒ぎ。

15時帰宅
展示用の木製パネルづくり。
音楽はWes Mongomery「So much guitar!」

18時 夕飯
19時 パネルづくり続き。
21時
住職さんに依頼されていたTシャツのデザイン。
24時寝る

2023年6月15日(木)



8時30分
起きる
noteを公開した。
49歳の誕生日。
妻がおめでとうと言ってくれた。

午前中
アトリエ周りの竹を刈る。
景観を作っている山や道の草刈り。

開拓された道



彫刻の削り方を検討する。
レコーディングしたままで進んでなかったバンドのミックスをメンバーでもある友達の息子に仕事として頼むことを思いつく。打ち合わせ依頼のメッセージ。

午後
薪割り。
炭窯広場で
炭焼きのくぬぎの薪で彫刻やってみる。

何かに見える?


今年からはじまった取り組み
特別支援学校から連絡貰う。
まずは先生が夏に体験しに来ることに。

薪の彫刻
可能性あり。

夕方
ワインと魚を買いにいく。

夕飯
手巻き寿司とワイン
満腹&酔った。
今日はもう終わり。
また明日!



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