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Bob Dylan, "Highway 61 Revisited" (1965)
ロック史に燦然と輝き続ける不滅の里程標。「どんな気分がする?」と語りかける文学性は、その後の音楽史を変えることとなった。
ディランの故郷を通る61号線は、数々の伝説や逸話がある。マーティン・ルーサー・キングは61号線にあるモーテルで殺害され、エルヴィス・プレスリーは61号線沿いの家で育ち、ロバート・ジョンソンは悪魔に魂を売った。
そんなアメリカの文化を横断する61号線をアルバムタイトルに飾った本作は、”Like a Rolling Stone”という誰が何と言おうとロック史で最も重要な曲が入っている。6分という時間のうちに世界が、人生が、そしてその人の思想が刷新されていく。それはそれまでのロック音楽になかった体験を聴き手に与えるものだった。
1番の歌詞がお気に入りだ。何気ない生活の描写と、わずか数文の中にいろんな人のいろんな感情が描かれている。人は誰にでもなれる、そんな気持ちにさせてくれる。
かつて君はおしゃれに決めていた
青春の時に
浮浪者に10セント硬貨を投げつけてたでしょ
気をつけな
いつか落ちるぜってみんなが言ってた
君はみんながふざけてると思ってた
笑い飛ばしてた
今じゃ君はそんなに大きな声で語らない
明日の食事を探し回る君は
誇らしげには見えない
どう感じる?
どう感じる?
家がないっていうのは
完全に無名っていうのは
転がる石のように
本作の音楽的な功績はキーボードを弾いたアル・クーパーにあるだろう。もともとギタリストの彼は、セッションに参加していた他のギタリストには敵わないと思い、素人にもかかわらずオルガンを弾いたそうだ。これがシンプルで大胆な、この曲のアイコニック的なフレーズに繋がった。
ちょうどこの時期、ロックの要素(エレクトロな要素)を取り入れ始めていたボブ・ディランの思惑とも一致しているように思える。
数年前にノーベル文学賞を受賞したボブ・ディラン。本アルバムの功績はそれを受賞するに値する価値が音楽史にあると思う。
2022/2/15(Tue) 2022年音楽レビュー#16
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