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短歌活動

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詠んだ歌、歌に関すること
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#現代短歌

『ぞうのうんこ』で気になった歌9首

たまたま図書館で手に取った、表紙、裏表紙、奥付にも歌がある歌集。 (たぶん見落としてなければ)46首が掲載されている。 『ぞうのうんこ』の感想詩のように音と言葉で情景を夢想させる短歌もあれば、絵と合わせて一つの短い物語の体の短歌もある。ちゃんとオチまでついたものもある。 短歌は、俳句よりも長いので、散文一つくらいを盛り込むことができる。気の利いた文章みたいなものを狙って詠むこともできるけど、それをやると「うまい広告みたい」と言われてしまう。でもそこは、さすが歌人、加減を

『ちいさな襟』で気になった歌16首

同じ短歌結社の先達、岡本幸緒さんの第二歌集『ちいさな襟』を読みました。第一歌集『十月桜』から10年経っての第二歌集だそうです。 Amazon.co.jp: ちいさな襟 (塔21世紀叢書) : 岡本幸緒: 本 『ちいさな襟』の感想何でもない生活、日常としかいいようがない時間、普段の生活空間が詠まれています。最初、(短歌に向かう姿勢として)自分と同じようで好きになれませんでした。ただ私の場合は、創作、想像をうまく短歌に織り込めないので、そうしてるだけですし、同じレベルで語れる

歌集『カミーユ』で気になった11首

短歌をはじめた2019年、当時評判になっていた現代短歌の歌集の一つとして手に取った。久々に読んでみて、やっぱり解釈がわからない歌が多かったが、気になった歌は当時とあまり変わらなかった。言葉のリズムが特に好きになるものが多くて、空白、読点(、)の使い方も、リズムを生むためにいい働きをしていて、最近の短歌では必須の条件となる、漢字とひらがなのバランスもいい。 気になった短歌について、ちょっとずつ感じたことを書く。 気になった11首母の背泳ぎがうまいというはずなのに、素直に褒め

嘘なのか嘘じゃないのかわからない表現への戸惑い

toron*さんという方の短歌が好きだ。 自分の生活のはっきりした感触がないと短歌にできない自分とは違って、飛躍した想像や、こんなこと考える人がいるなら、人ってこうも感じそうだよね、という歌に驚かされる。 昨年の誕生日にもらった歌集『イマジナシオン』も大事に読んだ。 好きな歌もたくさんあった。 でも、一首だけ、受け止められない歌があった。その歌のせいで「なんだ全部嘘なのか」と思って一回、歌集を置いた。 たぶん評判もいいであろうこの歌だ。 システム開発の経験がある人な

視聴メモ:プロフェッショナル「平凡な日常は、油断ならない ~歌人・俵万智~」 #プロフェッショナル

2018年の年末から半年間の講座、ほぼ日の学校 万葉集講座で、授業を受けてから、私にとっては、俵万智 “先生” です。ほぼ日の学校をきっかけに2019年から私も短歌を詠むようになりました。自分で短歌を詠むようになって、数は多くないですが、いろんな歌集を読んできた中、俵万智先生の歌集を一番読んだと思います。そんな俵万智先生の『プロフェッショナル 仕事の流儀』、見ないわけにはいきません! 番組概要視聴メモ番組宣伝 「いいね!」の元祖 教科書に載ってるせいか、まだ生きてたんで

『O脚の膝』で気になった歌10首あまり

なんで読むことにしたんだっけ?『O脚の膝』。 歌集を検索して、Kindle Unlimitedで無料で読める歌集だったからだろうか。 字余り、字足らず、句またがりもある。 定型の歌のほうが安心するし、歌集全体として破調するものが少ないほうがいいと感じるほうだけれど、『O脚の膝』には、そうじゃない歌がたくさんある。それがひらがなで、改行があって、逆に改行なく文字列が続いている。でも形として、場面として、どうやっても目に留まる歌が並んでいる。 破調をおそれないのに、ちゃんと助

『水上バス浅草行き』で気になった10首+1

先日、こちらのツイートを見かけた。 『老人ホームで死ぬほどモテたい』は、誕生日にもらって読んだ。自分じゃ決して詠めない短歌に多く出会えた。自分の中の生々しい部分に触れてしまう歌集だったけれど、いい誕生日プレゼントだった。 このツイートを見て、また好きな歌、気になる歌が増えそうで、『水上バス浅草行き』を買った。また気になる歌を探してみることにした。そして、気になった歌、好きになった歌が見つかった。私が好きな歌は、自分にとってリアリティがあること、そしてそこを起点に想像が膨ら

『オールアラウンドユー』で気になった10首

昨年12月にこちらのイベントに参加しました。 イベントの会場で購入したのが『オールアラウンドユー』です。 短歌相談室の中で、第三者視点、モノ視点で短歌を詠む話がありました。私は、どうしても自分という一人称で詠むことが多くて、その説明を頭で理解しても、まだ第三者視点やモノを中心に置いて、詠むことはできていません。『オールアラウンドユー』にあるそうした歌や、他にも気になった歌があったので10首紹介します。 気になった10首これほんとそう。憂鬱な仕事に向かう途中は体も固くなる

『老人ホームで死ぬほどモテたい』で目にとまってしまった歌

昨年12月の誕生日にもらった歌集の一冊。 離婚した両親。母には彼氏がいて、お父さんはフィリピンで女性と暮らしている。好きなことをして生きてきたであろう父親。その父の死。母と姉とも特別うまくいっている感じはしないけれど、上坂さんの人生や生活にはしっかり重なる部分がある。当たり前だけれど、楽しいばかりではない、生活と人間関係に対する独特の実感が溢れている歌集。 目にとまった歌たち血の匂いがする歌。毎日、おにぎりを握っているという事実だけがある。やりたくなくても毎日黙々と握って

『イマジナシオン』のPartⅣ,Ⅴで好きだった短歌

2022年12月の誕生日にもらった歌集『イマジナシオン』 一気に読むのがもったいなくて、少しずつ読む… はずだったが、つい読み終わってしまった。仕事する場所の近くにずっと置いていたのでしょうがない。 noteタイトルは、「Ⅳ,Ⅴで好きな歌」としているが、このnoteではⅣからは取っていない。Ⅳ章は、他の章とだいぶ雰囲気が違った。句またがりの歌、定型から外れたものもあって、さらに、誰目線かわからないものが多かった。最後に書いてあった山田航さんの解説を読むと、最初から連作とし

『イマジナシオン』のPartⅡ,Ⅲで好きだった短歌

2022年12月の誕生日にもらった歌集『イマジナシオン』 一気に読むのがもったいなくて、少しずつ読んでいる。Ⅰ~Ⅴにパートが分かれていて、Ⅱ、Ⅲまで読んだところ。気になった歌をちょっとメモ。 そう、こういう普段語らない死生観のようなことに、実は、人によってまちまちなことがある。死が土と結びついていれば、死は下降していくイメージだろうし、天に召されるものならば、上昇するものかもしれない。一緒に暮らしている相手、後に別れたであろう相手との違いの一つとして詠まれた歌。笑い、感動

『イマジナシオン』のPartⅠで好きだった短歌

2022年12月の誕生日にもらった歌集『イマジナシオン』 一気に読むのがもったいなくて、少しずつ読んでいる。Ⅰ~Ⅴにパートが分かれていて、今、PartⅠを読んだところだ。 気になった歌はいろいろあるけど、3つだけ書き留めておく。 いいなと思ったのは、たまねぎを切って目に染みた瞬間だけじゃなく、その前の出来事を想像してしまったことだ。泣こうと思ってたまねぎを買ったのかもしれないし、泣く理由がたまねぎを買う前にあったのだ。泣いている今、たまねぎを買った時、その前の出来事、と