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プロローグ|「日本料理の入門編」でありたい

あけましておめでとうございます。東京・乃木坂にある日本料理店「乃木坂しん」の店主・石田伸二です。新年を機に、noteを始めることにいたしました。

2016年にオープンした「乃木坂しん」は、今年の6月で5年目を迎えることになります。出身地である徳島県の食材はもちろんのこと、日本各地の旬の上質な食材に向き合いながら丁寧に調理して、素材の魅力をお客様にお伝えする。このことを日々繰り返してきました。ありがたいことにオープンした年から4年続けて「ミシュランガイド東京」の1つ星の評価をいただいております。

毎日素材に向き合いながら料理をしてきた4年半。修業時代を含めれば20年以上、料理を続けてきたなかで、2020年は、やはり特別な1年だったと感じずにはいられません。

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2020年は、マイナスなことは一つもなかった

昨年2月から、東京にも新型コロナウイルスの恐怖の影が落ち始めると、ほかの飲食店の皆さんと同じように、「乃木坂しん」にもキャンセルの連絡が続きました。

それでも、私たちを支えてくださったのは、常連のお客様でした。コロナ禍で外食自粛がなされるなかでも、気にかけてお店に来てくださり食事をしてくださったのです。なかには「大丈夫かなと思って」と、1年、2年ぶりにいらしていただくこともありました。

当時は、予約を少なくし、安全のために従業員を休ませたうえで、私一人で料理を作る日々が続きました。そのため1日1組のお客様をお相手するような日もありました。

当店でのお食事は、2時間半ほど。いつも以上にお話をさせていただき、お客様お一人おひとりとの繋がりを強く感じさせていただいた時間は、先の見えない自粛期間を前向きに過ごすための強さをいただけたように思います。

5月からお持ち帰り用のお弁当のご用意を始めると、常連様だけでなく、「前から来てみたいと思っていたのよ」と、乃木坂に住む近隣の住民の方々にお買い上げいただきました。そこからお店にも来ていただけるようになり、新しいご縁をいただく機会にもなっています。

コロナは私たちにとってマイナスなことはなかった

強がりのように聞こえるかもしれませんが、私たちにそんな想いを起こさせてもらえたのは、支えてくださる方々にお会いすることできたからだと思うのです。

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日本料理が一番遠い存在になっている

日本料理に対して「敷居が高そう」(※注)「作法が難しくて緊張しそう」「板前さんが怖そう」「値段が高そう」――、そんなイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

日本料理を始めて20年以上経ちますが、日本料理がどんどん日本人にとって遠い存在になっているような気がしてなりません。

日本料理は、日本で暮らす皆さんが日々大切にしてきたもの、たとえば季節を感じる心や、相手を敬う心、物を大切にする心などで出来ています。ですので、本来は「敷居」なんてないはずです。

(※注)現代では「気軽には行きにくい」などの意味で使われることが多いですが、伝統的には「不義理・不面目なことなどがあって、その人の家に行きにくい」という意味で使われています。

しかし、一番身近であるはずの日本料理が遠い存在になってしまったのは、私たち日本料理に携わる者が、お店の外のことに無関心だったことにも要因があったのではないかと思っています。

遠くに感じるようになってしまった日本料理を、もっと素直に楽しんでほしい。

noteを始めたのはもちろん、昨年末から始めたYouTubeチャンネル「乃木坂しん」もそんな想いから始めたことの一つです。

YouTubeでは、私と支配人の飛田泰秀とともに、試食会の様子をレポートしたり、ご家庭でもできる伊達焼き、鯛のおろし方などを紹介したりと、身近に感じていただけるようなコンテンツを配信していこうと思っています。

また、私と飛田のTwitterも始めます! これまでお店のFacebookページや個人のページしかありませんでしたが、SNSをいくつか組み合わせていきながら、より広く強く届くような発信をしていきたいと思っています。

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「使い勝手のいい入門編」であり続けたい

2021年、飲食店にとっては厳しい戦いがまだ続いていくと思っています。毎年正念場である乃木坂しんにとってもそれは同じで、今年は例年以上に厳しい一年になりそうです。

しかし、コロナ過をプラスに考えてお店を支えてくださる方々とより強い関係を築けたように、ピンチだからこそ、これまでの自分たちを見つめ直したり、新しいことに挑戦したりするチャンスでもあると思います。

お店にいらしていただくお客様のために、引き続き料理を丁寧に作り続けていくことに変わりはありませんが、乃木坂しんのことをもっと知っていただくこともしていきたいと思います。

YouTubeを見ていただければお分かりいただけると思うのですが、私、まったく怖そうに見えないですよね(笑)?もし、作法で気を付けた方がいいことがあればお伝えいたしますし、わからないことがあればどんどん聞いてくださってかまいません。

このnoteでは、みなさまの「入門編」になるように以下のようなコンテンツを週に1度更新していきたいと思います。

①この月の献立
月に1度変わるコース料理の全メニューをご紹介します。コースにこめた想いなどをお知らせいたします。

②石田伸二「煮炊きの12カ月」
料理の中でも煮炊きが好きだという店主の石田が、今月の献立に入っている煮炊きの料理の作り方を公開。さらに、使っている食材の歴史やエピソードなども石田の思い出を交えながら紹介いたします。

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③飛田泰秀「『ひと・もの・こと』で命を吹き込む」
レストランには、料理だけではなく、ワインや酒、器。花、設えなどを楽しむ空間でもあります。支配人・ソムリエの飛田泰秀が、そうした飲食店に宿る命の数々について語ります。

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④乃木坂しんの先っぽ
乃木坂しんのこれからこと、日本料理への提言などを、今この瞬間の店主の石田と支配人の飛田の想いをお伝えします。

乃木坂しんは、オープン当初から「日本料理の入門編でありたい」と思い続けてきました。

毎週の投稿を通じて、日本料理に興味を持ったり、料理を通じてもっと日本の文化を知りたいと思っていただけたら、ぜひ別の日本料理のお店にも行っていただきたいのです。私たちよりも、素晴らしい日本料理店は、東京だけでなく、日本中にあります。

乃木坂しんという「日本料理の入門編」で予習・復習をしていただいて、もっと日本料理、日本の文化に興味を持っていただくことも、歓びのひとつなのです。

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乃木坂しん
東京都港区赤坂8-11-19 エクレール乃木坂1F
☎03-6721-0086
ランチ(水〜土) 12:00〜15:00(ランチは前日までの予約制)
 お昼の小会席 10,000円、おまかせ 15,000円、18,000円、28,000円
ディナー(月〜土) 17:30〜23:00
 おまかせ 18,000円、28,000円
※消費税、サービス料10%別

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次回更新では「1月の献立」を紹介いたします。

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構成・文=江六前一郎

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