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2016年11月の記事一覧
未来2016年7月号-笹の葉ラプソディ-
笹の葉ラプソディ
はるのひのかすむ渡り廊下からひかり ではない黄色信号
既視感(デジャヴ)とは違和感でなく笹の葉の向こうに南の星座がうるむ
親のいない設定という宇宙(コスモス)に向かい合えばなお寂しいふたり
全力でエンターキーを叩くのはきみの名だけがコマンドだから
変わる気がしたんだ夜の校庭に石灰の匂いぶちまけたなら
きみの指が「禁則事項」とささやいた天の川(ミルキーウ
未来2016年8月号掲載 -五月に-
五月に
坂道に音が光をつれてくる今のは五月の自転車だった
葉のうらにおもてにひざしは濯がれてささる 破片が裸眼にささる
眼にうつるものの確かさ鼓膜からなだれこませているサカナクション
忌まわしいのは安っぽさDМ7くらいで泣けてしまうよ
はつなつは発熱に似て遠足にひとり居残る窓辺の翳り
やすらかに舟浮かびたり逝くときの貌もかたちも人は選べず
「なゐ」という和語を教えてく
未来2016年10月号掲載8首
自転車のしきりに過ぎる水たまりに映ればなんて清らなポスト
さて曝書はじめる朝に同僚の私服はつるんと肩を見せをり
タグ読みの音呼び合つて図書館は海原となる曝書の夏に
匂ひたつ夏くさはらに目瞑ればここは真昼のオリオン直下
まぶしくて未来が見えぬと言ひし歌手の現実的な病の告白
こんな字だつたかなあと子は以上の以をいくつも書き損じの履歴書に
はみ出したスピンの先を挟みこむ 擦り切れなくていいよ
未来2016年11月号掲載8首
武蔵野の雑木林は炎天に銀と硝子を削りつづける
灼熱の道を濡らしてゆく雨のにほひは街の季語となるべし
てのひらが不可算名詞になりさうなそれは賞賛なの?プラタナス
思ひ切るために大きく吸つたのにグラスの底で執着が鳴る
水色がみづのいろではないことを受け容れながら母語を紡がむ
葱の香が油の熱に放たれて話すなら今だ泣きさうなんだ
東西に街をつらぬくメトロこそ星の青さのひとつと思ふ
星の声が届