見出し画像

未来2016年10月号掲載8首


自転車のしきりに過ぎる水たまりに映ればなんて清らなポスト

さて曝書はじめる朝に同僚の私服はつるんと肩を見せをり

タグ読みの音呼び合つて図書館は海原となる曝書の夏に

匂ひたつ夏くさはらに目瞑ればここは真昼のオリオン直下

まぶしくて未来が見えぬと言ひし歌手の現実的な病の告白

こんな字だつたかなあと子は以上の以をいくつも書き損じの履歴書に

はみ出したスピンの先を挟みこむ 擦り切れなくていいよおまへは

また誰かが見えぬ何かに謝罪するテレビを消せばただ半夏雨