未来2016年8月号掲載 -五月に-
五月に
坂道に音が光をつれてくる今のは五月の自転車だった
葉のうらにおもてにひざしは濯がれてささる 破片が裸眼にささる
眼にうつるものの確かさ鼓膜からなだれこませているサカナクション
忌まわしいのは安っぽさDМ7くらいで泣けてしまうよ
はつなつは発熱に似て遠足にひとり居残る窓辺の翳り
やすらかに舟浮かびたり逝くときの貌もかたちも人は選べず
「なゐ」という和語を教えてくれたのはあなたの歌だ空気がうすい
音楽はもう止んでいた封筒のビニール窓をはがしたように
海風に万国旗たちひらめいて佇むわれはなにを見送る
(※DM7 ルビ:ディーメジャーセブン)