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未来2016年11月号掲載8首



武蔵野の雑木林は炎天に銀と硝子を削りつづける

灼熱の道を濡らしてゆく雨のにほひは街の季語となるべし

てのひらが不可算名詞になりさうなそれは賞賛なの?プラタナス

思ひ切るために大きく吸つたのにグラスの底で執着が鳴る

水色がみづのいろではないことを受け容れながら母語を紡がむ

葱の香が油の熱に放たれて話すなら今だ泣きさうなんだ

東西に街をつらぬくメトロこそ星の青さのひとつと思ふ

星の声が届かない夜 白地図の街にも海があふれてゐるよ