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神くん 「墓地」

いわゆる下界というところは何かとめんどくさい。

どこへ行くにも歩かないといけない。
むしろ、どこかそれを楽しんでるようにも見える。彼らにとって、「健康」のために必要なことのようだ。

自分にとって「健康」というものは必要のないものなので、ここはもう歩くのをやめよう。
というより、一度試してみたいことかあるのだ。
すでにリサーチ済みである。

歩道の端に立ち、おもむろに手を挙げる。
すると、一台の車が止まった。
これがタクシーというものか。うむ、なかなか美しい乗り物だ。
と、見とれていると、バンッと扉が開いた。
少しビックリしたが、ここは平静を装おう。

中へ入る。さわやかな空気、ほんのりいい香り、座り心地の良いシート。
ほう、これが「お、も、て、な、し」か。
知っておるぞ。それくらいは。

「どちらまで?」
いきなり話しかけられる。誰だ?あぁ、これの操縦士か。1人で大丈夫なのか?そんなに簡単に動くものなのか?
うーむ、君たちは頭良く進化したんだな。偉いぞ。

感心してうなづいていると、
「あの、お姉さん、どちらまで?」
お姉さん?あぁ、今日はいわゆる「女」の姿だった。黒髪でロングでワンピースだと好印象というからそうしたのだ。
しかし、「どちらまで」とは何だ?何かを自分に問いかけてるのか?
どうしたものか、、、えーと、、、、

「んー?えとう?江籐?あぁ、江籐墓地ね。30分くらいだね。」
江籐墓地??何じゃそりゃ?まぁ、いいか、乗ってみたかっただけだし。
しかし、30分と言ったが、それは普通なのか?

うーむ、、なかなか長いな。退屈だ。
人間は本当にこんなことが楽しいのか?
そうだ、さっき自販機とやらで買ってみた水を飲むとしよう。なかなか便利な機械だったな。
ほんと人間は偉いな。

ムム、、これはどうやって開けるのか??これを回すのか?回らんではないか?人間は皆、怪力持ちなのか?ウムムム、、、、!

しまった、、いきなり開くからこぼしたではないか!綺麗なシートがびしょ濡れではないか!
なんてことだ!
しかし、、、、操縦士は気付いてない、、か?
めんどくさいし、もういいか、帰るか。

タクシーが江籐墓地入り口前で停まる少し前に、車から出てやった。もちろん、気付かれないようにな。
扉なぞ開けなくともたやすいことよ。
テレポーテーションというらしいな、下界では。

墓地の入り口の方から悲鳴が聞こえた。
さっきの操縦士か?


神くんの冒険は続く、、、




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