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作曲家・作品・演奏家・聴衆・演奏空間の結び目となる作曲家によるコレクティブ <N…

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作曲家・作品・演奏家・聴衆・演奏空間の結び目となる作曲家によるコレクティブ <NODUS> https://nodus2010.tumblr.com/

マガジン

  • NODUS vol.2.5 ─11のコレスポンダンス─

    https://nodus2010.tumblr.com/haydnconcert オンライン配信企画「NODUS vol.2.5 ─11のコレスポンダンス─」のプレイベントとなります。 3月31日の配信に先駆けて、3月7日〜29日にnoteにて一曲ずつプログラム・ノートや聴きどころをまとめた記事を公開していきます。 https://note.com/nodus

最近の記事

クロード・ドビュッシー 「ハイドンを讃えて」(1909)

作曲家 クロード・ドビュッシーについてクロード・ドビュッシーは1862年8月、パリの西部であるサン=ジェルマン=アン=レーにて陶器屋の父と裁縫師の母の間に生まれた。 いわゆる「印象主義」を代表する作曲家として知られており、調性音楽のスケールを使用しながらもその枠にとらわれない新しい響きを切り開いた。その功績は、フランスの現代音楽を牽引したブーレーズから再評価されており、またさらに特筆すべき事として、ジャズやプログレッシブ・ロックの分野にまで影響を見ることができ、クラシックの枠

    • 青柿将大「吃音研究I -ハイドンに基づく-」(2022)

      ここ数年、音楽における(例えば楽器や声、テクスト、既存の音楽作品などの)アイデンティティの剥奪・喪失と再定義が自身の創作上の興味を占めており、今作も例外ではありません。 今作ではまず、ハイドンのピアノ・ソナタHob.XVI:6・第一楽章からハイドンの音名象徴(H・A・Y・D・N=シ・ラ・レ・レ・ソ)のみを、セクションごとにそれが次第に“成長・完成”していくように抽出しました(即ち、セクション1ではシのみ、セクション2ではシとラのみ、など)【譜例1】。 偶発的かつ不規則な同音

      • シャルル=マリー・ヴィドール 「ハイドンの名によるフーガ」(1909)

        作曲家 シャルル=マリー・ヴィドールについてシャルル=マリー・ヴィドールは1844年2月にフランスのリヨンにてオルガニストの父と発明家の母の間で生まれた。チャイコフスキーと同世代であり、1909年の「ハイドンの名による」作品の作曲家の中で最も高齢である。 ヴィドールは超絶技巧のオルガニストとして知られており、今日では全十曲あるオルガン交響曲が代表的な作品として知られている。その作風はシューマンやメンデルスゾーンなどの初期ロマン派の影響が見られ、わずかながら近代フランスの和声が

        • 辻田絢菜「ハイドンのおまじない」(2022)

          作品概要「名前の綴りを音に置き換える」という古くから使われてきた手法について、実際に響く音と文字との関連性について昔から少しだけ疑問に思う部分がありました。そこでこの二つの点について自分なりの結びつきを見つけたいと思ったのが今回の作品のアイデアの発端になりました。 話は変わりますが、昨年魔女をモチーフにしたファッションブランドのショップに伺う機会があり、現代魔女の思想や、魔女に伴う文化についてとても興味を持ちました。そこで魔女と関連の深い「ルーン文字」という文字体系があるこ

        クロード・ドビュッシー 「ハイドンを讃えて」(1909)

        • 青柿将大「吃音研究I -ハイドンに基づく-」(2022)

        • シャルル=マリー・ヴィドール 「ハイドンの名によるフーガ」(1909)

        • 辻田絢菜「ハイドンのおまじない」(2022)

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        • NODUS vol.2.5 ─11のコレスポンダンス─
          12本

        記事

          レイナルド・アーン「ハイドンの名による主題と変奏」(1909)

          作曲家 レイナルド•アーンについて レイナルド・アーンは1875年8月ベネズエラの外交官でユダヤ人の父親と、スペインのバスク人の母親の元で生まれ、フランスで活躍した作曲家である。奇しくもラヴェルと同じバスク人のハーフだが、バスク地方の音楽を作風に取り入れたラヴェルとは対称的に、アーンの作風は至って古典的であり、むしろラヴェルらの前衛的な潮流から距離を置いていたとされる。 多くの作品を遺したが、中でも歌曲《私の詩に翼があったなら》が今日最も有名な作品として知られている。 「

          レイナルド・アーン「ハイドンの名による主題と変奏」(1909)

          渡部真理子「うっかりメヌエット」(2022)

          勤務している学校の初見授業課題を作成したり、ピアノ作品を初演して頂いたり、2021年はピアノ曲とご縁がある年でした。 NODUSのメンバーとこの企画を考えていた頃、作品を作るにあたって一番先に思い浮かんだことが、「子供のための作品」でした。 概要 本作の題名である「メヌエット」は、多くの作曲家がピアノ曲に残しています。 メヌエットは割と穏やかな性格の曲ですが、本作は、メヌエットを学んでいる(踊っている)はずがなんだかわけがわからなくなり、メヌエットのようなメヌエットではない

          渡部真理子「うっかりメヌエット」(2022)

          ヴァンサン・ダンディ「ハイドンの名によるメヌエット」(1909)

          作曲家 ヴァンサン・ダンディについて ヴァンサン•ダンディは1851年3月に生まれたフランスの作曲家である。君主主義で反ユダヤ主義などの過激な政治的思想でも知られていた彼はしばしばその偏見によって悪く評価されてしまう事があるが、しかし今日では型破りな手法を表現手段に用いる「脱構築者」として肯定的な評価を得ており、教師としてもサティ、ルーセル、マルティヌーなど後の音楽界に影響を与える作曲家を門下に持つ。 セザール•フランクの忠実な弟子でありワグネリアンでもある彼の作風は両者の

          ヴァンサン・ダンディ「ハイドンの名によるメヌエット」(1909)

          増田達斗「夢の中のハイドン」(2022)

          曲名の由来シュルレアリスムの絵画が好きでして、昔から大変馴染み深い作曲家の一人であるハイドンを、そんな絵画のように登場させられたら面白いだろうな、という思いから当作品を書きました。もっともここでは”ハイドンの音名象徴”ですが。 シュルレアリスム=超現実主義の大きな流れの一つに”デペイズマン”という概念があります。本作「夢の中のハイドン」を構成するにあたりこれは重要な発想の源であったため、楽曲分析に入る前に少しだけ触れておきます。 作品概要-デペイズマンと夢について-シュル

          増田達斗「夢の中のハイドン」(2022)

          ポール・デュカス 「ハイドンの名による悲歌的前奏曲」(1909)

          作曲家 ポール・デュカスについてポール・デュカスは1865年10月にパリに生まれた。性格は寡黙で完璧主義、自分に大変厳しくそれゆえ自作品の多くを自らの手で破棄してしまい、現存する彼の作品はかなり限られている。作曲や評論のほか、後年は母校であるパリ音楽院やエコール・ノルマルで教鞭も執り、弟子にはオリヴィエ・メシアンなどがいる。代表作は「魔法使いの弟子」「アリアーヌと青ひげ」「ピアノソナタ」など。 「ハイドンの名による悲歌的前奏曲」についてA A' という構成の二部形式であり、

          ポール・デュカス 「ハイドンの名による悲歌的前奏曲」(1909)

          石川潤 「薄められていくハイドン」(2022)

          概要 〜 ハイドン音列の消失この作品はハイドンの音列に固執しながら溶解していく過程を描いた音楽である。 ハイドンの音列だったものはさながら浴槽に投げ込まれた砂糖玉のように、 面影を失い、自我を消失させていく。 それはまるで、咀嚼と消化の過程のようである。 十二音技法による自我の喪失この作品は十二音技法を「自我の喪失」の効果として用いている。 十二音技法は、ドからシまでのオクターブ内の十二音を、一音ずつ重複しないように選出して生成された音列を用いる技法である。 こうすることで

          石川潤 「薄められていくハイドン」(2022)

          モーリス・ラヴェル 「ハイドンの名によるメヌエット」(1909)

          作曲家 モーリス・ラヴェルについてモーリス・ラヴェルは1875年3月、フランス南西部のスペインに近いバスク地方のシブールで生まれ、バスク人の母とスイスの発明家の父の元で育った。 ストラヴィンスキーから「スイスの時計職人」と異名を授かった彼は、精緻で完璧主義的な書法と人間味を兼ね備えた、いわば「感性と知性の中間点(本人談)」を目指した作風を特徴とし、近代フランスの音楽界に大きな影響を与えている。 代表作として、「ボレロ」「水の戯れ」「道化師の朝の歌」「マ・メール・ロワ」「ツィガ

          モーリス・ラヴェル 「ハイドンの名によるメヌエット」(1909)

          序文 - NODUS vol.2.5 ─11のコレスポンダンス─

          ■ハイドン没後100年企画について ヨーゼフ・ハイドン没後100年にあたる1909年、音楽学者ジュール・エコルシュヴィル(1872-1915)の提唱により、フランス・パリの音楽雑誌「ルヴュ・ミュジカル・S.I.M.((S.I.M. = Société Internationale de Musique = 国民音楽協会)」は六名の作曲家にハイドンの音名象徴による動機を与え、それらを用いた短いピアノ曲の作曲を依頼した。完成した作品は「ルヴュ・ミュジカル」1910年1月号に掲載

          序文 - NODUS vol.2.5 ─11のコレスポンダンス─

          おむすび通信 #7 特別インタビュー 〜 湯川紘恵(指揮)中江早希(ソプラノ)両氏を迎えて (2/2)

          おむすび通信 第1シーズンを締めくくる#6、#7では、《NODUS vol.1 -失われた響きを求めて-》にご出演頂いた指揮の湯川紘恵さんとソプラノの中江早希さんを特別ゲストとしてお呼びしました。 本記事はお二人とNODUSメンバー5名で2020年7月5日に行ったオンライン対談を元に書き起こしたものです。 前半はこちら ----------- 中江さん:皆さんの曲の順番ていうのは何か意図があったんですか? ソロもあるし中編成の曲とかも入ってるし、こう規則的な感じでもな

          おむすび通信 #7 特別インタビュー 〜 湯川紘恵(指揮)中江早希(ソプラノ)両氏を迎えて (2/2)

          おむすび通信 #6 特別インタビュー 〜 湯川紘恵(指揮)中江早希(ソプラノ)両氏を迎えて (1/2)

          おむすび通信 第1シーズンを締めくくる#6、#7では、《NODUS vol.1 -失われた響きを求めて-》にご出演頂いた指揮の湯川紘恵さんとソプラノの中江早希さんを特別ゲストとしてお呼びしました。 本記事はお二人とNODUSメンバー5名で2020年7月5日に行ったオンライン対談を元に書き起こしたものです。 ----------- NODUS:はじめにお二人の自己紹介をお願い致します。 指揮・湯川紘恵さん:ご無沙汰しております!皆さまお久しぶりです。 富山県生まれで幼少

          おむすび通信 #6 特別インタビュー 〜 湯川紘恵(指揮)中江早希(ソプラノ)両氏を迎えて (1/2)

          おむすび通信 #5 私の-doudou-(渡部真理子)

          第5回担当の渡部真理子です。 学生時代、私は信頼できる同期と一緒に演奏会を行えたらなとぼんやり思い描いていました。 Nodusの旗揚げ公演がやっと実現でき、とても嬉しかったことが昨日のことのようです。 第一回公演は大学院の修士論文を書いているころでした。 私は人が作曲をしたり絵を描いたりする際に、人の感覚機能がどのように働き、そこからどのような表現が生まれるのかを自分なりに考察し続けています。 人は五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を持っています。まれにもう一つ持っている

          おむすび通信 #5 私の-doudou-(渡部真理子)

          おむすび通信 #4 イヴ・クラインの青と無限性 (青柿将大)

          #4 担当の青柿です。共通テーマが「NODUS旗揚げ公演の振り返り」ということで、果たしてどこまで需要があるのか不明ですが拙作「プリペアド・チェロのための《アントロポメトリー》(2015/16)」について作曲者自身のやや分析的な視点から振り返って書いてみようと思います。 まずは余計な予備情報なしに、真っ新な耳でお聴き下さい。 本作は元々チェリスト・山澤慧さんの委嘱により作曲し、2015年12月【山澤慧マインドツリー2015 -無伴奏チェロリサイタル- 20世紀以降の作品を集

          おむすび通信 #4 イヴ・クラインの青と無限性 (青柿将大)