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おむすび通信 #7 特別インタビュー 〜 湯川紘恵(指揮)中江早希(ソプラノ)両氏を迎えて (2/2)

おむすび通信 第1シーズンを締めくくる#6、#7では、《NODUS vol.1 -失われた響きを求めて-》にご出演頂いた指揮の湯川紘恵さんとソプラノの中江早希さんを特別ゲストとしてお呼びしました。

本記事はお二人とNODUSメンバー5名で2020年7月5日に行ったオンライン対談を元に書き起こしたものです。

前半はこちら

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中江さん:皆さんの曲の順番ていうのは何か意図があったんですか?
ソロもあるし中編成の曲とかも入ってるし、こう規則的な感じでもないし…どんな風に決めたんですか?

NODUS:これは特定の奏者の方の出番が続きすぎないようにと考えていたような…。
舞台上へ出たり入ったりを少なくするために、この人が残ってるからじゃあ次はこの人がみたいな…この辺りは割とコンセプトというよりかは、実用的な理由で決めたような気がしますね。

湯川さん:そうだったんですね!細井さん(チェロ奏者)や福島さん(クラリネット奏者)と、多分上手で一緒にずっと待機してたんですけど、「これ落ちたら(舞台に出るタイミングを逃したら)やばいよね」て言いながら待ってました(笑)。

NODUS:あの入れ替えは確かに大変ですよね(笑)。

湯川さん: みなさんのプログラムノートを見ると言葉がすごくそれぞれ個性があって面白いですよね!

NODUS:わああ…ありがとうございます...!
プログラムノートを重視しなくても良いような音楽を書きたいなと思ってるんですけどね。人によって、曲を聴いてからプログラムノートを読む人と、読んでから聴く人とか色々あると思うのですが…ネタバラシになってもよくないし、解説なしで聴いたときにどんな感じになるのか、どう思うのかなっていう方が興味ありますよね。
新曲をやってみてだったり、再演についてはどうお考えですか?

湯川さん:初演の機会をいただけることはとてもありがたいですし、やっぱりあの時は本当に全力でやってこれ以上その時はできない!と思ってもちろんやってるんですけど、今なら少しは成長してるはず!とか、これまでの経験値を積み上げたところでまた再演できたら良いなって思うことはもちろんありますね。

NODUS(辻田):そういえば最近Twitterで『ピエロ』で話題にしているのを見ましたが流行っているんですかね。
『月に憑かれたピエロ』略して『ツキツカピ』と呼んでる人もいて、あの演奏会以来、ピエロアンテナが張り巡らされるようになりました(笑)。

中江さん:湯川さん『ツキツカピ』って言ってなかったっけ?

湯川さん:言ってました。私たち『ツキツカメンバー』って言ってました(笑)。

NODUS(辻田):『月に憑かれたピエロ』は日本でのタイトルではあるけど、略して呼んでくれるまでに人に浸透するってすごい嬉しい事ですよね。

湯川さん:それこそ、中江さんがリサイタルで歌い始められてから『ピエロ』ってこうメジャーになった気が私はしているんですよね。前もそんな演奏の機会無かったかなと思ってて。

NODUS(辻田):そういえば、こういうのがありまして。

湯川さん:私それ観に行きました。

NODUS(辻田):ダンス付きで『ピエロ』を演奏するという演目で一昨年(2018年12月)に芸劇でやってました。

湯川さん:ダンサーの勅使川原さんはシェーンベルクやベルクをすごく取り上げてらっしゃる方で、私結構好きで、荻窪のスタジオにも観に行った事があります。すごい狭いところで、壁に手が届くようなところで公演をされていました。

NODUS(辻田):『ピエロ』の時は舞台上の演出も凝っていて、銀箔を張り巡らせて、ちょっと異常な世界みたいな感じの演出をしていました。私たちは特に何も視覚効果はなかったですね。

中江さん:私のリサイタルの時、奏者の皆さんにコスプレをさせてしまったんですよ(笑)。それで映像を作っていただいて、映像と奏者の音がリンクしてその音によって映像がかわるみたいな。それプラス照明もいれて、楽しかったですよね。

湯川さん:楽しかったです。

中江さん:湯川さんにピエロになっていただいたんですよね。

湯川さん:私ここ(左目の下)に大きい涙とセクシーぼくろも描いていただきました(笑)。

中江さん:私も一曲だけ休める間奏曲がなのがあって、そこで血に見立てたトマトジュースを一気に飲み干す事とかやりました。

湯川さん:この後歌えるんだ、って思いました。

中江さん:喉イガイガしました(笑)。

NODUS:でも観てる方は面白そうですね。入りやすくてイメージが補強される感じでいいですよね。いろんなやり方がありますね。

中江さん:次もしやるよしたら曲の発表というよりもう少し演出をつけるなど視覚的にも楽しめる感じだとより曲が立体的になったりとかして、そういうのも面白いなー、やってみたいなーと思ったりします。

NODUS:最近私たちNODUSも、一応作曲家でまとまって作曲家で企画をしているんですけれど、もっと自由に演出面や音楽以外のジャンルとコラボレーションを考えてもいいのではないか、という事も検討中でしたので、興味深く聞かせていただきました。

NODUS:結構いい時間になりつつありますが、私たちが聞きたい事以上のお話を色々していただきましたね。

中江さん:次の演奏会はまだ未定という感じですかね。

NODUS:そうですね…日程としてはまだ計画が立っておらず、こういうプログラムいいなと思っているけど、後は何も、という状態ですね。

中江さん:難しいですよね。

NODUS:はい。アニバーサリーで紐づけて考えていたのですが、コロナの影響で延期するので状況が変わっていきますね。その辺どうなることやら、という感じですがこれからも続けていきたい意気込みだけはあります。

中江さん:今年っていろんな節目の団体とか多くて、今年で何十周年とか五年前から単体で計画していて2020年のこの日に目標を立てて演奏会をしようっていう団体とか、いろんな人を見てきまして、(コロナの延期で)アニバーサリーじゃなくなってしまった団体をすごく多く見てるんですよね。
長年一緒に作り上げてき団体から「中止にします」という連絡が来た時はショックで、すごく落ち込んでたんですけど、今思い返すとアニバーサリーは節目の年ではあるけれど、過ぎてしまえば来年もアニバーサリーでいいじゃないかって(笑)。
音楽は絶対これじゃないとダメってことは無いので、だからそうなった時に、もし今年ができなくなっても来年がアニバーサリーってことでできたらいいんじゃないかなと思います。
もちろん悲しいし残念な事ですけれども。

NODUS:作曲家は年代とか数字に割とこだわりがちでいつもプログラムを決めちゃう傾向が私たちもあるんですけど、それも考えようですよね。

中江さん:リモートしましょう、リモート。

NODUS:(笑)。

NODUS:配信型の演奏会とか今結構ありますけど、やられたことはありますか?

中江さん:私はあります。

湯川さん:私はないです。

NODUS:それって収録したものを演奏会として配信する、ということですか?

中江さん:収録もあるし生配信もあります。まあ収録の方が多いし、収録の良さはほぼ完璧な状態で出せるっていうことですね。あとは映像も凝れるし、 YouTubeとかにあげても一生見てられるじゃないですか。だから恥ずかしくない演奏を残せるっていうのはリモートの良さかな、っていうのはありますね。
逆に生配信はちょっと私にとっては微妙でした。拍手もないし、歌っててもどれくらいの人が見てるのか…。ちょっと自己満足の世界という雰囲気なんじゃないかっていう感じに思えちゃったので、それだったらリモートでしっかり話し合って録音して音程とかも直せるとこ直して、完璧なものを作り上げて皆さんに見ていただく、っていう方が私はよかったです。
作曲の人達はそういうのを自由に自分の意思で色々変えられるって言うのがいいですよね。

NODUS:確かにそういう一面もありますよね。その分決断が重くなる、っていうのもありますけど(笑)。

中江さん:(笑)。いい決断をしてほしいなと思います。

NODUS:コロナ禍はまだ長丁場な感じがするので、このnoteもそうですけどこれをきっかけにNODUSも色々な形を考えていけたらなあ、って思っていますね。
最後にお二人にこれからの目標と言いますか、今日のまとめとして一言いただけますか?

湯川さん:私は今までいろんなこと全てに学生として皆様に出会って、学生同士だったり学生と先輩だったりいろんな形で関わらせて頂いたり演奏させて頂いてきたんですけど、もう卒業して社会人として、また違う立場でお会いすることになると思うので、そういう意味でももっと成長していきたいなと思っています。

中江さん:まずはこういう機会を頂けて改めてありがとうございます。自粛を始めてもう4ヶ月くらいで、自粛中って芸術家にとっては今本当にどん底の状況ですけれども、その状態の時にどう動いてるかっていうのがすごく勉強になると言うか。
自分自身も自粛中毎回頑張ってるわけじゃないし、だらけて何もできずに虚無感で生きてる時もありましたけど、それこそ私たちは戦争とかも経験してないし、そういう意味では歴代の音楽家って戦争とか病気とかいろんな歴史をまたいでいい作品を残してきたんだな、っていうのがわかった時に、今この状況で芸術家として何ができるのかっていうのを改めて感じました。
あとこういう状況だからこそ、こうやって皆さんと新たな方法で明るくお話できたり目標をみんなで言ってみたり、そういう機会って今までの通常の生活にはなかったことなので、自分にとっても貴重な経験をたくさんさせて頂いてるな、この時代に生きててよかったな、って思いました。
辛いけれども、こうやって笑顔で会える仲間がいるのは音楽やっていてよかった、これからも頑張ろうと思えるので、皆さんの今後のご活躍・ご成功をお祈り申し上げます。

NODUS:お二人のお陰で今日はいいお話を聞くことができました。
本当にありがとうございました!

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