Ryohei

介護職7年目/東京 介護の仕事や読書で考えたことを言葉にしたい。

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介護職7年目/東京 介護の仕事や読書で考えたことを言葉にしたい。

最近の記事

「問題のある人たち」――村瀨孝生『シンクロと自由』を読んで

「家に帰りたい」  このたった一言を、仕事に疲れた社会人が呟くのは問題にならないが、介護施設の入居者が呟けば問題になる。この違いは一体どこからくるのだろうか?  その人の「家」にいるのに「家に帰りたい」と言うから? ではその人の「家に帰りたい」という気持ちは、おかしなことで、あってはならないことで、解決しなければならない問題なのだろうか? それは介護施設だけの問題なのだろうか?  医学書院のシリーズ「ケアをひらく」の最新刊、村瀨孝生著『シンクロと自由』(2022)を読ん

    • 敗北感とともに生きてゆく――小川公代『ケアの倫理とエンパワメント』を読んで

       「勉強好き?」  こう聞かれると返答に悩む。第一に、それは内容による。興味のあることは時間を忘れて取り組めるから好きと言えるが、必要に駆られてそれこそ「強」いられるものは、楽しくないから嫌いだ。第二に、その問いには、勉強が好き=真面目/自分とは違う、勉強が嫌い=自分と同じ、という意味が暗に含まれており、相手が期待している返答を想像せざるを得ず、またその後の無益な会話を想像するだけで面倒に感じてしまう。  僕は高校生の時に世界史にハマった。そろそろ大学入試に向けて勉強しな

      • 介護の現場の「平和」な1日?――國分功一郎『中動態の世界』を読んで➁

         ゴールデンウィークなので、実家に帰っている人も多いだろう。社会人になっても、両親や祖父母、年上の親戚の前では、いつまでたっても「子ども」扱いで、自分が「ケアされる」存在であることを実感する。そして面目を保つためなのか、申し訳程度に「ケアする」存在であろうと、ささやかなお土産を買って帰る(……考えすぎか)。  学生時代で言えば、中学3年生から高校1年生、高校3年生から大学1年生、のような自分が「先輩」から「後輩」へと変わった時に、なんともいえない歯がゆさを感じないだろうか。

        • 映画批評にみる分断――稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』を読んで

           映画が好きだ。学生の頃は、よくレンタルビデオ店に通っていた。たしか毎週水曜は旧作5本で1000円とかで、自分なりにどんな作品を組み合わせるか考えるのも楽しかった。  映画の話も好きだ。映画館で誰かと一緒に観なくても、後日「あのシーンがよかった」「あの俳優の演技がよかった」と話すのは楽しい。だから『シネマこんぷれっくす!』や『木根さんの1人でキネマ』のような映画の話をする漫画も面白い。  映画が芸術なのか娯楽なのかはさておき、この「好きだ」という気持ちに偽りはない。だからわ

        • 「問題のある人たち」――村瀨孝生『シンクロと自由』を読んで

        • 敗北感とともに生きてゆく――小川公代『ケアの倫理とエンパワメント』を読んで

        • 介護の現場の「平和」な1日?――國分功一郎『中動態の世界』を読んで➁

        • 映画批評にみる分断――稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』を読んで

          読書における中動態――國分功一郎『中動態の世界』を読んで➀

           「本の読み方」がわからない。なので「本の読み方」が書いてある本を読む。その「本の読み方」通りにやってみるものの、どこかしっくりこない。なので別の「本の読み方」の本を探すか、その「本の読み方」の本を読み直す。その「本の読み方」を人に説明できるくらい理解するまで……  こんな堂々巡り、悪循環をここ数年繰り返してきた。読書術の新刊を書店で見つけると、どうしても期待してしまうのだ。この本こそが、「本の読み方」の悩みを解決してくれるのではないか、と。しかしある日、このままではいつま

          読書における中動態――國分功一郎『中動態の世界』を読んで➀

          「助けてもらう」と「してあげる」――西加奈子『夜が明ける』を読んで

           最近になって、小説の「読み方」というか、「向き合い方」にも色々あることを知った。文学研究者や批評家は、自分の研究分野に引きつけて論じたり、独自の解釈を見せたりと、小説と仕事が強く結びついている。一方、僕も含めておそらく多くの読者は、むしろ仕事とは対極に位置するプライベートの時間として、小説を享受しているのではないかと思う。  読書中も仕事が脳裏から離れないというのは、いくら文学が好きとはいえ大変だなぁと勝手ながら思ってしまうのだが、今回読んだ西加奈子著の長編小説『夜が明け

          「助けてもらう」と「してあげる」――西加奈子『夜が明ける』を読んで

          「ケアとは何か」を考えたい。――永井玲衣『水中の哲学者たち』を読んで

           グループホームで介護職員として働き始めて7年目になる。その間、介護福祉士の資格を取ったり、より良い介助や支援方法を会議等で話し合ったりして、人に「介護をしています」と言えるほどの知識と経験はある程度身につけてきたつもりだ。ただ、介護に関する知識が増えていくにつれて、別種の問いが生まれ、ついには無視できないほど大きくなってしまった。その問いとは、「ケアとは何か」といういうことだ。  介護保険制度が始まってすでに20年以上経ち、介護業界で著名な経営者やホーム長たちが、独自のケ

          「ケアとは何か」を考えたい。――永井玲衣『水中の哲学者たち』を読んで

          アンラーンするべき介護業界

           2022年3月5日付けの朝日新聞朝刊の書評で気になっていた、柳川範之・為末大著『Unlearn 人生100年時代の新しい「学び」』。個人が成長するためにも、「アンラーン」という内省的思考が欠かせないことを改めて認識する一方で、高齢者介護・認知症ケアの現場にも必要な概念であると考えた。  僕は、主にグループホーム(認知症対応型共同生活介護)を全国展開している企業の一つの事業所に勤めているが、それでも他の事業所との交流は皆無である。認知症高齢者とは、自分が勤める事業所の利用者

          アンラーンするべき介護業界