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かしこさラボ【分析編5:判断力】

賢さの構成要素の分析編 第5回は「判断力」にアプローチする。

判断力がある人というのは、経験や知識が豊富で、冷静かつ視野が広く、注意点やトラブルの対処法を把握して、慢心もしない結果、失敗しにくい人、というイメージだろうか。私は判断とは、可能性のある展開を想像し、そのなかで判断基準に基づいて行動を選択することだと考えている。

残念ながら、自分では判断できない人は多い。結果的な正解に至る道だけ教えてほしいという。そして、失敗したら責任転嫁するための保険として使う。それでは、ご都合主義と言われても仕方がない。

企業などで、命令を忠実に実行する文化に浸っていると、自ら判断する機会は減る。判断の責任を回避して、リスクを減らすという思考が働くのも理解できる。しかし、役職手当を目当てにポジションについて、無策で失敗し、人に責任をなすりつけたり、成果を横取りしたりとなれば、組織の中の害悪でしかない。そういう人間を嫌というほど見てきた。判断力を培うという選択肢を見つけてほしい。

①判断の手順

判断の手順 フローチャート

目標の確認
目標設定といってもいい。企業活動においては、売上目標などを指すが、設定自体が根拠のない机上の空論であることも多い。「昨年度は10%増だったから、今年度も10%増」とか言われると、個人的な目標が「経営陣の刷新」に切り替わる。見栄えの良いIR情報の設計を目標とすると、足元を見失い企業の寿命を縮める。資本家が欲しいのは、成功だ。

状況の分析
社会情勢や市場環境、人的資源、資本、時間の制約などの諸条件を確認し、取り得る選択肢を考える材料とする。ここの視野の広さと優先順位の設定のうまさは、経験に基づくことが多い。

情報の収集
可能性のある選択肢を列挙し、その具体的手順やもたらす結果を想定し、その根拠となる情報を収集することを指す。過去の成功例を根拠とするなら、その成功をもたらした背景の分析が必須だ。

是非の決定
「判断基準」に基づいて選択肢を検討し、「やること」「やらないこと」を決めて行動の優先順位や手順を確定させる。ようやくPDCAのPが決まる。

さて、あなたは今3人でボートに乗って川下りをしている。ところが、急流に差し掛かったところで、ボートが大きく揺れて、一緒に乗っていた子供二人が川に投げ出された。さて、どうしよう。

「目標設定」は、三人で無事に帰ることになるだろう。「状況分析」すると、あなた自身は泳ぎが得意、両岸は子供が泳ぎ着くには遠いうえにつかまれそうな場所もない、一人は他人の子供で、一人はあなたの子供、二人とも救命胴衣を着ておらず(ダメだろ)既に溺れている、ボートにロープなどの道具は何もない、なぜか上からドローンであなたの行動が撮影され生中継されている、周りには他に誰もいない、そしてなぜか二人のうち一人しか助けられないルール設定(絶対)が急遽追加される。

「目標設定」の変更だ。必ず一人は助けられないのだから、「自分の社会的評価がなるべく下がらない」という目標に切り替えた。取り得る行動を検討する。「二人とも助けずに、自分はカナヅチだと主張する」、これは生中継されており、あなたが得意げに泳いでいた写真が後日スクープされて非難を浴びることを想定して却下。「他人の子供を救出するか、自分の子供を救出するか」、そこで「情報収集」だ。世間一般では命の価値は平等らしい。自分の子供を救出するのが人情だ。念のため、他人の子供に確認すると、親は資産1000億の投資家だ。

さあ、あなたの判断は?


私なら、まず川に飛び込んで、投資家の子供をボートに助け上げる。その上で、自分の子供を助けるフリをしながら抱きかかえ、あえて自分も一緒に溺れ死ぬ。投資家の後の善意に期待しつつ、自分の子供に申し訳ないと思いながら。

目標設定に応じた行動の選択肢をもう一つ見つけて選択しただけだ。もちろん、他の目標設定への変更は可能だし、こんな条件下で川下りをしない判断が最も重要だ。

つぎは、目の前にヤギが100頭いる。あなたのものだ。どうする?

②判断に必要な材料

【判断基準】

・目標設定に即した成果を生み出す行動の選択肢となっているか
(目標設定の見直しは必要ないか)

・コストやリスクをなるべく抑える選択肢となっているか
(許容できるコストやリスクの程度)

・個人的なエゴや感情を抑えた選択肢となっているか

【決定の仕方】

・意思決定のためのチーム編成をする

重要度の高い判断ほど幅広いメンバー構成
利害関係の薄い信頼できるメンター

・認知的対立をあおりながら議論を深め、結論を導き出す

考えすぎると動けない
やること・やらないことを決める
優先順位を設定する
ピボットや撤退も考慮に含める
サンクコストにこだわり過ぎない

判断は実に難しい。そもそも絶対的な正解がない。判断の正しさを確信する術もない。短期的な数値目標の達成ならまだしも、目的意識の実現となると自己満足の領域から抜け出せない。


歴史は後世の人間が評価するこということか。

 【1】語彙力と論理性
 【2】スピードと正確性
 【3】情報収集能力
 【4】コミュニケーション能力
 【6】行動力
 【7】創造力
 【8】シンかしこさ

(2022/8/5)

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