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かしこさラボ【分析編7:創造力】

賢さの構成要素の分析編 第7回は「創造力」にアプローチしてみる。

世の中には2つとして同じモノは存在しない。「同じ」は概念上にしか生まれない。よって、世の中は創造力の塊であるといってよい。

しかし、経済活動でオリジナリティが高く評価されるということは理解できる。日本は教育水準が高いこともあり、創造力は高く、様々な発明が生み出されてきた。ただし、日本人は「0から1を生み出すこと」は苦手だとされる。IT産業における主導権を手にすることができなかった今、創造力豊かな人材を育成して巻き返しを図る必要がある。

さて、どうすれば創造力は「育成」できるのか。

①比べる

を「常識」とするならば、創造力とは「常識を超える力」、は「非常識」である。対義語的発想がヒントとなる。

原則を常識とするならば、
 例外にこそ創造力のヒントがある
便利を常識とするならば、
 不便にこそ創造力のヒントがある
有用を常識とするならば、
 無駄にこそ創造力のヒントがある

上の写真は、愛知県犬山市にある桃太郎神社の「やさしい鬼」の像である。「鬼は怖い」という常識を打破した像である。他にも、鳥居が桃の形をしていたり、宝物館に鬼の子供のミイラの写真があったりと、神社の常識を超えたクリエイティブな空間だ。深夜に行くとかなり不気味だが。

既存のモノやシステムの特徴に「ではないもの」を足してみる。そしてそれを形にしてみる。結果、問題を解決し、より高い次元でニーズに応えられるモノやシステムが生み出せればよい。特徴の把握と問題意識が求められる。

糸電話(近くでしか使えない)→電話(遠くで使える・持ち運べない)→携帯電話(持ち運べる・操作性低い)→スマホ(操作性高い)

ボットン便所(非衛生的)→水洗便所・和式(衛生的・足が疲れる)→水洗便所・洋式(足が疲れない・紙で拭く)→ウォシュレット(水で洗う)

実現するための技術が存在するか、ニーズは正確に把握できているか、製造コストなどが大きなポイントとなる。逆にいえば、実現するために新しい技術が生まれることもある。


②混ぜる

違う性質のモノをまぜることによる「化学反応」で新しいモノが生み出されることもある。材料系の発明などがそれにあたるが、数限りないトライアルを必要とするだろうし、偶然の産物ということも多い世界だ。

料理の世界だと分かりやすい。

唐揚げにレモン汁をかける文化などだ。唐揚げは、食べ過ぎると脂っぽさで飽きやすい。レモン汁は違う味覚を刺激することでリセットする機能があり、さらに食べることができることになる。「脂質の取り過ぎになるから食べるのをやめる」という常識を超えた。レモン汁は最初にかけないで。

あと、天下一品の「こってり」スープの発明はキセキでしかない。

サブカルチャーの世界でもよく行われる。
・歌舞伎とロックを融合させる
・少林寺拳法とサッカーを融合させる
・競馬と美少女アニメを融合させる

事業的には、こんなところだろうか。
・サウナとバスを融合させた「サバス」
・電車のなかでウェディング

ハードの「常識」の中に、ソフトの「非常識」を入れたパターンだ。

「混ぜる」が成功を生み出すことは稀である。思いがけない場面で生まれる運の要素も強い。フットワーク軽く、打たれ強く、楽しみながら、当たるも八卦当たらぬも八卦。日本文化のゆたかさは「無駄を許容できること」だ。

③包む

複数の世界を包み込む、いわゆる「福袋」的な発想だろうか。垣根を越えて、まとめてしまうことにより、新たな商品を生み出すことは可能だ。事務所を越えたアイドルの抱き合わせ商法が分かりやすい。

他には、研究のときの使う統計的手法に、「メタアナリシス」というのがある。これまでに書かれた論文などをデータベースなどから徹底的に検索して、質を分析して良いものだけを残す。それらのデータを統合して、より大きな研究成果としてまとめる、という手法だ。これによって、バイアスの影響を排除できることになる。「まとめサイト」などもこれに近い。

ただ、いずれも混ぜるほどの化学反応はないので、極めて大きな創造性は生み出せないかもしれないが、局面によっては使える発想となる。

包むときに「どのような考え方でまとめるか」という部分に新たな発想があれば、創造性を持たせることはできるだろう。


創造力は新たな技術を生み出す。しかし、それは必ずしも、人にとって有益なものとは限らない。ダイナマイトや原子爆弾の例を見ればわかることだ。技術はただ技術であって、それを使う人間の問題と言われるが、必要なのは、高い目的意識であるということだ。

 【1】語彙力と論理性
 【2】スピードと正確性
 【3】情報収集能力
 【4】コミュニケーション能力
 【5】判断力
 【6】行動力
 【8】シンかしこさ

(2022/8/5) 

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