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【映画感想】究極的な”男女の駆け引き” 「COLD WAR あの歌、2つの心」


カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞!
米国アカデミー賞では3部門ノミネート!


恋愛の醍醐味ってなんでしょうか。多々あると思いますが、その一つが駆け引きです。と言うことで、男女の駆け引きをとことん描いた映画が「COLD WAR あの歌、2つの心」。

どんなストーリーかと言いますと、映画はポーランドの田舎からスタートします。時代は1940年代後半。この当時のポーランドは、ソ連の影響下に社会主義国家となっていました。この田舎町に、音楽舞踊団の養成所を設立した一行がいます。そして、グループの一人として、ヴィクトル(トマシュ・コット)がいるのですが、ヴィクトルは才能ある音楽家のようです。

設立した養成所施設にはたくさんのアーティストの卵が集い、その一人が本作のヒロイン、ズーラ(ヨアンナ・クーリク)です。ヴィクトルはズーラと出会ってすぐ、彼女に強く惹かれ、惚れ抜いてしまいます。このズーラが非常に激情的です。どう激情的かと言うと、ズーラはいきなり川に飛び込みます。その理由がヴィクトルの気を引きたいから。

そして気まぐれです。どう気まぐれかと言うと、ある日、ヴィクトルが社会主義のポーランドを捨てて、自由の国フランスへの亡命を目論みます。ズーラには一緒に亡命しようと誘い、ズーラも同意します。で、亡命当日、ズーラは約束をすっぽかすのです。のちにズーラは、自分の未熟さを理由に亡命しなかったと言いますが、個人的には「そうかな?」と疑問に思います。単に彼女の気まぐれのように感じました。

仕方なくヴィクトルは一人でパリに亡命。


数年後のパリでは売れっ子音楽家となり、恋人もできて順風満帆のヴィクトル。でもズーラが忘れられません。それくらいズーラは魅力的なんですよね。

まぁ、その後、なんだかんだあって、2人はパリで一緒に過ごすことになります。ここでもズーラの激情的な性格は健全です(いやむしろ加速する)。ヴィクトルの元恋人(かな? 別れたような印象です)に会うと彼女に挑発的な言葉を投げ、ヴィクトルが自分よりビジネスに夢中になっていると彼の気を引くために我儘を言い出します。まるで駄々っ子です。

そしてついにズーラはヴィクトルに内緒で、ポーランドへ帰国。愛する人を失ったヴィクトルは狼狽します。ズーラにどうしても会いたくてポーランドへ入国しようとするも、亡命者の彼が祖国に戻れば、待っているのは地獄の日々です。

最終的にヴィクトルは、ポーランドの収容所に監獄されます。生きる屍となった彼を見てどことなく喜ぶズーラ。その姿は常識を超えていて、私はなぜか羨ましいという感情が湧き上がりました。ズーラの一連の行動には、論理やモラルはありません。ただただ、ヴィクトルに追いかけられたくて仕方ない。それが分かっていてもヴィクトルはズーラを追いかけ、彼女を満足させようとしている。自分の感情のままに生きられる女性と、彼女の要望に彼に応える男。ここまで自分に応えてくれる異性がいるなんて羨ましい。

映画の予告編に「冷戦の時代に引き裂かれる二人」と書かれていましたが、これは違うんじゃないかなぁ。冷戦という時代なんて関係なく、自ら関係を引き裂いた女。そんな彼女に惚れた男の話です。逃げる女と追いかける男が、どん底まで追いかけっこをした物語だと思いました。

つまり観客は、究極版 ”男女の恋愛の駆け引き” を見せられたのです。


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