殺したいと思ったことなんて。

誰かを殺したいと思ったことなんて腐る程あるし、何なら毎日押し殺している。だが、殺意に身を任せようと思ったのは初めてだ。眠れないし、食事も喉を通らない。それでも、足が勝手に動いていた。口元だけを覆うガスマスクを付け直す。
「おおう」
隣で大男が何かを言い、揃って狂気の廃墟を見上げた。

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