見出し画像

1つの事象に、2つの視点。「見る位置」で変わる未来

ビジネスでもプライベートでも、うまくいかないことや、想定していなかったことが起こるのは当然の流れ。100%順風満帆なんてことはありません。その「壁」や「課題」、行く手を阻むものが目の前に現れたとき、どのような対応をすべきでしょうか。
専門的には「リフレーミング Re-Framing」といいますが(これは覚えなくてもよいです)、ひとつの事象(実際に発生した事柄、事実)に対し、どのように見るか、考えるか、によって、その後の行動も変わってくる、ということがあるそうです。
視点の違い、考える基準の違いが及ぼす影響について考えてみます。


「コップに半分の水」~有名な話から

のどがカラカラの状態で、コップいっぱいに注がれた水を、一気に半分まで飲みました。...コップに半分残った水を見て、どう感じるでしょうか。

A.「もう半分しか残ってない」
B.「まだ半分残っている」

同じ事象(目の前の現実、事実)を表しているので、どちらも「正解」ですよね。でもそれぞれの表現から受け取る印象は、相反しているように感じます。

A.「もう~」の方は、結果的にゼロになる、という点からの発想です。コップいっぱいの最初の段階がMAXで、以後は減る一方、マイナスが重なる、というイメージです。一方で、
B.「まだ~」の方は、最初の感激(水を飲めた!)を軸に考えて、これからもさらにその感激を味わえる機会があるぢゃんっ、というイメージです。

残り半分を飲む、その時の気持ちはどちらが前向きでしょうか。言うまでもないですよね。モノゴトを見る場所をどこに置くか、つまり視点をずらす、逆の立場から見てみる、という「想像力」を働かせることで、ネガティブをポジティブにすることも(逆も)できる、ということです。※必ずしも、ネガ⇒ポジだけが望ましいわけではない、ことは後で触れます。


あの伝説のアスリートのコトバ

日本人メジャーリーガー、イチロー選手が、2013年に「日米通算4000本安打」を達成したときのコトバ。この「4000本」のレベルなんですが、長い歴史の日本プロ野球で、2000本以上記録した人はわずかに61人、3000本以上はなんと2人しかいないんです。彼の「4000」という数字は桁違いのレベルで、「4000」という数字自体が金字塔なのですが、彼が会見で言ったのは...

...誇れることがあるとすると、4000のヒットを打つには、僕の数字で言うと、8000回以上は悔しい思いをしてきているんですよね。それと常に、自分なりに向き合ってきたことの事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかと思いますね」

最高にイカしてますよね。シビレますよね。
プロ野球の世界は、打率3割、つまり10回に3回安打がでれば「一流」です。「4000」という数字がミゴトすぎてそこに誰も目を向けていなかったと思われますが、イチロー選手ご本人は、安打を「打てなかった」方に目を向けていました。そしてそれを「悔しい」と表現している。「本来なら打てたのに打てなかった悔しさ」を積み重ねた結果が「4000」だと。
凡人である私レベルでは到底思いつかない視点ですが、格が違うとはいえ、これも「見る位置」を変える、複数持つことによって「進化」した例、ともいえるでしょう。


実際のビジネス場面でも

こんな例をあげてみます。

大手メーカーは、最新の製造機械を使って、業務効率を最高レベルにあげた結果、1個1000円の商品を、1日1万個以上の大量生産ができるようになりました。
この業界に新規参入したAさんの会社は、機械を導入するお金がなく、手作り対応で、出来上がった商品は、1個2000円で販売しなくてはならず、しかも1日100個しか作れません。


販売価格も、供給できる数量も、大手メーカーと比べて劣るAさんの会社は勝ち目はないのでしょうか。
ここで「視点を変える」ことをしてみます。「製造機械を導入できず手作りになってしまう」ことを逆に活かし、「ひとつひとつ手作りだから2000円」という意味を、ストーリーを付け加えることで、「量産品」に対する競争力を作り出すことができるかもしれません。「限定品」という希少価値を謳ってもよいし、「すぐに売り切れになる」ということが宣伝になるかもしれません。
「見る場所」をどこにするのか、競合相手とは違う視点に軸を持っていくことで生まれる考え方です。そして、現実に、「D2C」という名称とともに、この考え方、サービスは既に”大きな流れ”になりつつあります。まだまだこれからも「新しい切り口」は出てくるでしょう。商品やサービスそのものに加えて、「視点」「切り口」という点がビジネスの成功要素となる時代が、始まっています。そしてそれは、「誰でもチャンスを掴める」ということに繋がります。


イチロー選手の例にも見られたように、すべてを「ポジティブ思考」することだけが正しい道ではなさそうです。が、少なくとも
「ひとつの事象を、ふたつの視点で」
というクセをつけることで、立ち止まったままになったり、後退したりすることを避けられる可能性が高くなります。
もうひとつ。失敗してしまっても、前向きに(ポジティブに)考えることは大事ではありますが、うまくいかないことが起こったら、後悔する、反省する、”(一時的に)落ち込む”ことは悪いことではありません。いや、むしろ、「必須」かもしれません。そこから巻き直す、再起するというパワーを得るときに、「二つの視点」が役にたつのかもしれない。後悔・反省ないものは「再起」もないですからね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?