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詩日記

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2022年7月の記事一覧

蝉

なく、泣く、鳴く、とにかくなく、ひたすらになく、死ぬまでなく。うるさい、うるさい、うるさい、と言われてもなく。なきつづける。この世界にいることを示し、この世界にいたことを遺し、この世界を生き切る。一心不乱に、無我夢中に、一生懸命に、なく。明日が来るかわからない短い命を今日生きる。

夏の雲

夏の雲

飛びたい、乗りたい、行きたい、何処でもいい、ここではない何処かへ。風に揺られて、空を眺めて、形を変えて。前も後ろも気にせず、流れのままに。消えないように、気付かれないように、小さくなっても、細くなっても、ずっと。

川

流れがはやい。足がつかない。岸を掴めない。泳げない。流れがはやい。足がつかない。岸を掴めない。溺れてしまいそう。流れがはやい。足がつかない。岸を掴めない。助けて。流れがはやい。足がつかない。岸を掴めない。生きたい。流れがはやい。足がつかない。岸を掴めない。

青と黒、少し紅

青と黒、少し紅

眩しい青
落着く黒

汗光る青
汗滲む黒

楽しい青
寂しい黒

耀やく青
艶めく黒

儚い紅

ゆっくり

ゆっくり

ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり、いそかずゆっくり、あせらずゆっくり、ゆっくりゆっくり、はれでもあめでもゆっくり、あつくてもさむくてもゆっくり、きょうもあしたもゆっくり、ゆっくりゆく。

朝シャワー

朝シャワー

目が覚める
寝癖が直る
寝汗が流る

ああ気持ち良い

目は覚めた
寝癖は直った
寝汗は流れた

もういいよ

目に水が
髪に水が
肌に水が

どんどん濡れる

肌着が濡れる
図峰が濡れる
靴底が濡れる

ああ雨だった

あんバタートースト

あんバタートースト

なぜそんなに甘いの
なぜそんなに唆るの
なぜそんなに誘うの

見たらいけない
触ったらいけない
嗅いだらいけない

欲望と
高揚と
興奮と
その先にある快楽と

いけない
いけない
絶対いけない

フリだ
茶番だ
喜劇だ

食べたが最後
罪をおかしてしまった

土用の丑の日

土用の丑の日

それじゃなくても、それっぽくていい。本物ではなくて、真似事だけどそれがいい。それじゃなくても、それっぽくていい。考えて工夫されたそれがいい。それじゃなくても、それっぽくていい。手触り感のある温かいそれがいい。それじゃなくても、それっぽくていい。お店で食べるものでもスーパーで買ってくるものでもなくて、あなたが作ってくれたそれがいい。それじゃなくても、それっぽいのがいい。

夏休み

夏休み

あれをしたい
これをしたい
もっとしたい

あれもしよう
これもしよう
もっとしよう

欲望と高揚と期待に胸膨む七月

あれをしなきゃ
これをしなきゃ
もっとしなきゃ

あれもせねば
これもせねば
もっとせねば

失意と辛苦と絶望に腹痛む八月

夕立

夕立

今日はいつもと違う道で帰ろうと
最寄駅の改札を抜ける

電車に乗った時より雲が増えて
家に近づくほど雲が分厚くなる

学校帰りの高校生とすれ違い
あと5分くらいで家に着く

iPhoneで時間を確認しようとすると
水滴がポツリと画面に落ちる

午後5時を少し回ったところ
子どもを乗せた自転車に追い抜かれる

降る夕立の音と蝉の鳴き声が
ほんの少し重なる

家のドアを開ける前に
蝉が鳴き止んだことに

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カツカレー

カツカレー

海の上にイルカ
木の上にカブトムシ
生クリームの上にイチゴ

カレーライスの上にトンカツ

黒色と白色でグレー
赤色と白色でピンク
黒色と青色でネイビー

茶色と茶色でカツカレー

自分の意思だけではカレー
他人の意思だけではトンカツ
自分の意思と他人の意思でカツカレー

どちらかだけでも美味しいけど
一緒に食べたらもっと美味しい

T字路の片隅で

T字路の片隅で

家を出てすぐ
T字路の片隅で
咲く向日葵

いってきます
T字路の片隅で
揺れる向日葵

家に着く間際
T字路の片隅で
佇む向日葵

ただいま
T字路の片隅で
迎える向日葵

球児

球児

素麺をすする
扇風機を強にする
テレビの音量を上げる

白球を全力で投る
白球を全力で打つ
白球を全力で追う

テレビの中で堂々と立ち振る舞う球児は立派な大人に見える

素麺をすする
冷房の温度を下げる
テレビの音量を上げる

白球を全力で投る
白球を全力で打つ
白球を全力で追う

テレビの中で強く厳しく逞しく動く球児は年下には思えない

食パンを齧る
除湿の温度を下げる
テレビの音量を上げる

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海の日

海の日

海の日
は夏休みへの期待で胸一杯に膨らむ

海の日
は夏休みの宿題を見切り発車で始める

海の日
に海に行ったことはない

海の日
にプールに行ったことはある

海の日
を思い出すより海に行きたい

海の日
を書くより海に行きたい