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侠客鬼瓦興業79話「恐怖!ハメリカンナイトのデンジャラスナイト」

まさに連夜のデンジャラスナイト・・・
昨夜に続いて今夜も、ハメリカンナイトのデンジャラスな夜が、僕に襲い掛かってこようとは

「鉄君って、こういう所来たことあるの?」
「えっ?」
「ねえ、もしかしてあるんじゃな?銀二さんと一緒に来たとかさ」
「あ・・・、あの・・・、その・・・・・・、あ~だははは~」
恐怖の時限爆弾、鉄はめぐみちゃんの質問にほっぺをピンクに染めながら、高級ソープランド、ハメリカンナイトの建物をながめていた。
(うあ!鉄、バカ何て顔を!!それにめぐみちゃんもどうして、よりによって、そんな危険な質問を!)
僕は心臓をバクバクさせながら二人のことを見ていた。

「あれー?鉄君ったら赤い顔して、やっぱりあるんだ・・・。ねえ、ねえ」
めぐみちゃんは僕の恐怖など露知らず、いたずらな笑顔で鉄に話し続けた。
(やめれー、てつ~!言うなよ、絶対に来たなんて言わないでくれよ~)
僕は祈るような気持ちで鉄を見た・・・。がっ!

「はい!あるっス、ゲ~ヘヘヘ~」 
(どわー!?バッ、バカー!!)
恐怖の時限爆弾にはこの状況がどれほど危険なことか、理解できるはずはなかったのだった。
めぐみちゃんは鉄の言葉に目をぱちぱちすると
「えーー!鉄君、来たことあるのー!?」
驚きの顔を浮かべながら僕に振り返った。 
「ねえねえ吉宗くん聞いた、鉄君来た事あるんだって、すごいびっくりだねー」
「えっ、あっ、そうだね・・・、びっ、びっくりだね、ははははー」
僕は顔面をひくひくさせながら、作り笑いを浮かべた。
「あれ?吉宗くんどうしたの?引きつった顔して」
「えっ?いや、あの・・・、そう、びっくりしたから、僕もびっくりしたから、ははは」
めぐみちゃんは一瞬不思議そうな顔をしていたが、はっと何かに気がつくと、再びいたづら娘のような顔で鉄の方を振り返った。
「そういえば鉄君って、まだ16歳だよね」
「はい、そうっす・・・」
「えー!すごい、16歳でこんな所に来た事あるなんて」
めぐみちゃんの言葉に鉄はきょとんとした顔を浮かべると 
「・・・えっ?す、すごいって?・・・いやいや自分なんて全然すごくないっす」
そう言いながら僕の事をじーっと見た。

(えっ!?なんで僕の事をみるわけ???)
とまどった様子の僕に、鉄はぼろぼろに欠けた歯でニヤーっと不気味な笑い顔を見せた・・・。と同時に僕の脳裏に昨日仕事に行く車中での出来事が
(そういえば昨日、すべーるすべるの意味が分からなかった僕が・・・)
そう鉄と僕の食い違いの会話がよみがえってきたのだ。

・・・・・・・・・
 
(あのー、鉄、すべるっていったい?)
(えー、兄貴すべったことねーんすか?だって川崎って言えばすべーるすべーるの名所っすよ)
(すべるの名所?)
(兄貴ほどの人がふざけちゃって・・・、散々すべりまくってたくせに)

・・・・・・・・・

(そうだ!あの時はまだ、すべるの意味がソープランドだったなんて知らなくて、てっきりスケートだと思っていたから僕は・・・)

・・・・・・・・・ 
(すべるって鉄、そのことか、ははは、でも僕がすべったのは小学生以来だから、うまくすべれるかどうか)
(しょ、小学生ー!?) 
(え?あ、うん、小学生の時、毎週いってたけど…)
(毎週ーーー!!)
(え?うん、毎週だけど)
(すげえ・・・、さすがは兄貴だ、小学生ですべってたなんて・・・)
(さすがって、そんなに驚くことじゃないじゃないか、ハハハ、鉄は面白いなー)
(・・・すげえ・・・すげえ・・・やっぱ俺が兄貴とほれ込んだ男だ)

・・・・・・・・・ 
(そ、そうだ、たしかあの時、あんな会話が、まずい、このままだとこの男めぐみちゃんに、とっ、とんでも無い事を!)
そう思った僕は必死に引きつった顔を鉄に向け
(言うなー、言うなよー)
っと目で合図を送った。
(たのむ…鉄、頼むから僕のテレパシーを理解してくれー!)
そんな悲痛な心の叫びを受け止めたのか、鉄はうんうんとうれしそうにうなずいた。
(あー通じた、この男もこのデンジャラスな状況を理解できたんだ)
ほっと安心した、その時だった・・・

「めぐみさーん16歳なんて自慢になんねーすよ、ここにいる吉宗の兄貴なんて小学生の時、毎週通ってたんっすよー!でへへへー」 
(どぇー!このバカー、な、なんてことをーーー!!)
僕はすさまじい顔で鉄を見ると、口をぱくぱくさせ両手をバタバタと振り続けた。
「えっ?えっ?もっと?もっとっすか?」
(ちっ、ちがう、ちがう!)
首をぶるぶると横にふる僕を見て、鉄は急に何を悟ったのか、うれしそうにうんうんとうなずき
「そうか、それって、むちゃぶるいっすね、分かりました兄貴がもっと言えって、むちゃぶるいするなら・・・、自分はめぐみさんに兄貴の武勇伝を思いっきり語らせてもらうっすよ!」
(ちーがーうーー!それに、むちゃぶるいじゃなくて武者震いだろー!このバカー!)
僕は必死に心で叫びながら、めぐみちゃんを見た。そこには驚きの表情で、じーっと僕を見ている彼女の姿があったのだった。
「吉宗の兄貴なんて、小学校の時から通ってたんっすよ…」鉄が僕を思って言ったそのとてつもないありがた迷惑な言葉に、めぐみちゃんは驚きの顔を浮かべていたのだ。

(あーーー!だめだー、もうおしまいだーーー!)
心の中で叫んだその時だった、今までキョトンと僕を見ていためぐみちゃんが、急に真っ赤な顔でぷーっと噴き出し
「鉄君それって面白すぎる~、くっくっくくく」
お腹を押さえて笑い始めたのだ。
「吉宗君が小学校から通ってたなんて、ははは、ははははは」
(えっ!?)
僕はきょとんとした顔で彼女を見た。 
「めぐみさん、まじっすよー、吉宗の兄貴はマジで小学校から通ってたんっすよー!」
「まじって、鉄君そんな訳ないじゃない、本当に冗談言って、ははははは」
「じょ、冗談じゃないっすよ、めぐみさん!」
「はははは、もうやめてよ鉄君、笑いすぎてお腹がいたいよ、クックククク」
めぐみちゃんはお腹を抱えて笑い続けた。

(そ、そうだよ、よくよく考えても小学校からソープランドに通っていたなんて話を信じる人なんているわけないよな、ははは・・・、とんだ取り越し苦労だった。はははは)
僕はほっと肩をなでおろした。ところが恐怖の時限爆弾、鉄はこのまま収まってくれはしなかった。めぐみちゃんに笑われてイライラ顔をのぞかせると 
「めぐみさん!これだけ言っても兄貴のこと信じてくんねえんすね!それじゃ、もっとすげえ兄貴の武勇伝教えるっす」

(えっ!?何言いだすんだ、お前)
僕は再び額に青筋をたらしながら金髪の鉄を見た。

「はいはい、今度は何ですか?鉄君」
めぐみちゃんが笑いながら答えると、鉄は顔を真っ赤にして
「あー、めぐみさんそんな言い方、兄貴の武勇伝に対してに失礼っすよー」
「失礼?ふふふ、そうね失礼ね」
楽しそうに笑いながら
「それじゃ吉宗君のもっとすごい武勇伝、教えてくれる?」
いたずら娘のような顔で鉄を見た。 
「へヘヘ、これを聞いたら驚いて、めぐみさん兄貴に惚れ直しちまいますよー!」 

(や、やめろ・・・鉄、こ、これ以上何を言うつもりなんだー!)

「で?何?私が惚れ直すお話って」 
「デへー!実は兄貴なんて廊下で豪快に滑っちまうんすよー!」
(だーーー!このバカ昨夜のソープランドでの事をついに言ってしまったー!) 
「ねえ、めぐみさんすごいっしょー、兄貴マジすごいっしょー!」
(鉄ー、お願いだからもうやめてくれー!!)
僕は心で叫ぶと顔面蒼白になりながら、めぐみちゃんの様子を伺った。

つづく

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました^^
※このお話はフィクションです。なかに登場する団体人物など、すべて架空のものです^^

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