駅伝に見る組織づくりとリーダーシップ 【週刊新陽 #91】
新しい年が明けました。2023年もどうぞ宜しくお願いいたします!
さて皆さんはどんなお正月を過ごされましたか?私は毎年、三が日は駅伝観戦と決めています。
物心ついた頃から、お正月は箱根駅伝の中継を観るのが赤司家の恒例行事。大学駅伝で走っていたランナーが卒業後に実業団で活躍しているのも楽しみで、元日はニューイヤー駅伝、2日・3日は箱根駅伝を応援しないと年が始まらない気がしてしまいます。
毎年、チームを引っ張るエースや新記録を出すルーキー、挫折を乗り越えた選手のストーリーなどランナーに感動するのが常なのですが、今年はチームづくりやリーダーシップも気になりました。
駅伝の面白さは、必ずしも速い選手が集まって走ったから勝てるわけでもないところにあると個人的に思っています。(今年の箱根は、優勝した駒澤大学がエントリーしたランナーの持ちタイム平均最速校でしたが。)
個々のランナーの能力の単純な総和ではなく、監督やコーチ、サポートスタッフや控えの選手などチーム全体の力、さらには応援や運さえも味方につけて全力を出し切ったチームが勝利を掴むように見えます。
そして実は近年、このチームの作り方が変わってきているように感じていました。
箱根駅伝では運営管理車と呼ばれる車が各校の選手の後ろに付きます。その車には監督が乗っていて、区間中、何度か選手にメガホンを通してかける声がテレビ中継を通して聞こえてきます。その声かけや、試合前後の監督や選手のインタビューを通して、各校の指導のあり方がなんとなく伝わってきます。
たとえば青山学院大学の原監督の指導はとても有名で、自主性を重んじる選手の育成やチームづくりは駅伝ファンでなくても知っているのではないでしょうか。
一方、知る人ぞ知る駒澤大学の大八木監督。喝を入れるタイプの声かけは「俺について来い!」的な言い方と内容で、昔はテレビを見ながら「怖いなぁ」と思っていました。(見た目もちょっと怖そうだった、、、知りもしないのにすみません!)
それが近年すこし違う印象に。喝を入れることに変わりはないのですが、選手によって言い方を変えているように感じたり、走り終えた選手に「ありがとう!」と直接的に労いの言葉をかけたりと、大八木監督のイメージが変わりつつありました。
と同時に、駒澤大学がまた強くなってきたのです。
今回、優勝後のインタビューで大八木監督が「一方通行ではだめだと思った。選手の話を聞く、双方向の指導に変えた。」と仰っていました。また、いくつかの記事でも指導方法を見直したことについて語っています。
箱根での完全優勝(往路・復路ともに優勝)、そして大学駅伝三冠を成し遂げた駒澤大学の強さの秘密は『対話』だったようですね。
2004年から監督を務め、一時は「常勝軍団」と言われるほど強い駒大を率いて独自の指導スタイルを確立していたであろう大八木監督が、その成功体験に縛られずどうやってアンラーンされたのかすごく興味があります。
もう一つ、気になったのがニューイヤー駅伝のGMOインターネットグループ。プロランナーで東京五輪では6位入賞を果たした大迫傑さんがPlaying Directorとしてチームに参画し、3区を走ると話題になりました。
GMOインターネットのプレスリリースによると、Playing Directorとは選手として試合に出るのと同時に、他の選手のトレーニング・指導・育成に携わるのだそうです。
大迫さんが、チームのビジョンが書かれた冊子を選手たちに配っている様子をテレビで見ましたが、「目指すビジョンのイメージを共有することが大事」だと説明していました。
また、これまでにない練習方法を大迫さんが取り入れることなどが刺激となり、GMOインターネットの選手が「なぜこの練習をするんだろう?と考えるようになった」とコメントしていたのも印象的でした。
リーダーシップとは影響力のことだと聞いたことがありますが、まさに一人ひとりがリーダーシップを発揮し、良い影響を与え合うことで、チームを強くしようとしているように見えました。
さらに大迫さんは、チームをNo.1にする以上の目的として次の3つを示しています。
・実業団駅伝を盛り上げ陸上界が活性化すること
・プロでありながら実業団の駅伝を走るという第3の選択肢を生む
・指導する側とされる側の気持ちを理解し次世代育成に活かす
トップアスリートが競技全体の活性化や次世代育成のために、明確な目標を掲げ具体的なアクションを起こしていることに勇気をもらいました。
スポーツ界のチーム組成や人材育成の変革、これからも注目していきたいと思います!
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