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米国の金融政策動向と日本の金融業界への影響

米国マイナス金利導入検討の背景


日本の金融業界にいる人々にとって、更には日本人の資産運用においても米国金利動向は重要な指標ですが、昨今、トランプ大統領が米国のマイナス金利導入をたびたび要求しています。

「米国はマイナス金利というギフトを受け取るべきだ!!」

今回のマイナス金利導入には、国際的なドル高の是正や、コロナ対策に伴う多額の財政出動による国債の調達コストの低減、景気回復に向けた市中金利の低下などの目的が考えられます。

一方で日本では2016年初からマイナス金利政策が導入されており、欧州での事例も踏まえて、米国内ではその効果に懐疑的な意見も多いのが事実です。


FRBのパウエル議長はマイナス金利導入に対して、たびたび否定を繰り返している一方で、市場は既に導入を織り込んでおり、先物にも反映されています。

中にはその副作用として「10年物米国債の利回りが2021年末時点でマイナス0.5%になる」という予測も出ています。


日本の金融業界への影響は


実際の導入の可否はもちろん分かりかねますが、仮に導入された場合、日本の金融業界、とりわけリテール分野においてどのような影響が考えられるのでしょうか。

先述の通り日本や欧州ではマイナス金利政策導入に伴い、長期金利も低下し、運用の原資産である国債利回りが低下したことから、保険商品の組成を筆頭に大きな影響が出ました。

予定利率は低下し、保険料の上昇や、資産性のあるものは返戻率の低下、一部商品では販売停止にもなりました。

昨今の保険業界では、外貨建て保険商品(主にUSドル)のニーズがその相対的に高い運用利率を背景に増加していたため、米金利の低下に伴い運用対象としての魅力が低下していくとすると、大きな転換点となるかもしれません。

米ドル建ての債券や、保険を主軸に提供していた金融パーソンなんかは、「売るもんないじゃん!!」なんてことになり得ます。


一方で、コロナ禍による健康面での不安から、保障での生命保険ニーズは増加していると共に、

株価の下落や貯蓄性向の高まりから、証券口座の開設数も増加しています。

一概に、金融業界に向かい風、というわけではないんですよね。


運用方針の変化とアドバイザーの対応


マクロ経済学においては、不景気時には消費性向が低下して貯蓄性向が高まっていきますが、経済情勢も踏まえて個人の運用方針も臨機応変に変更していく必要があります。


端的に申し上げると、アセットアロケーションの入り口において

・株式やETFを筆頭にリスク資産の割合が増加

・保障分野での保険ニーズが増加

・債券、資産性保険、個人年金等は減少

といった影響が考えられるわけです。


これらを前提とすると「お金使わなくなったし株価も低いから運用に取り組みたいけど、コロナも怖いなぁ」というように高まっていく金融アドバイザリーの需要に対して、アドバイザーが提供すべきソリューションやプランニングも変化していかなくてはなりません。


証券分野においては、米国金利に依存する有価証券の提供は難しくなりますし、保険分野においては、保障に一層力を入れる一方で、資産性の商品は変額あたりにシフトしていく可能性もあります。


また、サービスが、対面→オンラインへとシフトしていく中、非対面の状況下で重要事項等リスクの説明を的確に提供しなければならないため、この領域のスキルアップや知識習得も欠かせないでしょう。


アドバイザー目線で裏を返すと、この外部環境の変化に対応して、自身の提供するサービスをアップデート出来た場合には、需要の高まりや市場拡大の恩恵を受けることが出来る、という形にも考えられます。


コロナウイルスが今後の我々の業界に対して与えていく影響の大きさを再認識すると共に、やるべきことはまだまだ多くあるな、と痛感します。


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