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経済書(6):ポスト資本主義

前回の経済書(5):資本主義だけ残った、少し前に書いた(4)欲望の資本主義に続いて、今回はポスト資本主義についてUpdateしたいと思います。

ポスト資本主義

ウォーキングや軽いジョギングをする時は音楽だけでなく、iPhoneにダウンロードしたPodcastで音声番組を聞くことがあるのですが、その中に歴史情報をわかりやすく伝えるCOTEN RADIOが入っています。

今年に入って取り上げられたテーマがまさに「ポスト資本主義」でした。

多くのポスト主義の本を読んで彼らが出した現時点でのまとめ・結論は
以下のとおりです。

現在、ポスト資本主義を提唱している人は、資本主義を否定はしていないけれど、金融資本主義に関しては否定している立場の人が多い。
資本主義を脅かす内的要因は「いまのままの資本主義では我々が幸せになれない」ことにある。
金融資本主義というマネーゲームは本質を見失い、誰も幸せにならない活動を助長している。

COTEN RADIO 第235回「ポスト資本主義」より

このPodcastの中では、原丈人氏の「公益資本主義」や藻谷浩介氏の「里山資本主義」、セルジュ・ラトゥーシュの「脱成長」など他にも数々の書籍が紹介されていますので、興味のある方はPodcastYoutubeで、ぜひ聴いてみてください。


カール・ポランニー

さて、私としてはこの一つ前のCOTEN RADIO #234 資本主義の経済学史 で紹介されたカール・ポランニー「悪魔のひき臼」の話が非常に印象に残っています。
他のサイトでポランニーの「大転換」の内容がまとめられていたので合わせて載せておきますが、この書籍がまだ欧州の経済復興すら見えていない第二次世界大戦中に執筆されたのは驚きです。

① 労働の商品化は、人間の死をもたらします。
人間が商品として扱われるようになり、激しい労働による疲弊や飢餓などに脆弱になることで、人間を死に追いやるということです。
② 土地の商品化は環境破壊をもたらします
本来は自然の一部であった土地が商品として扱われることで、自然そのものの価値が失われ、経済的な資本として扱われます。また、経済的発展のために使用される土地は搾取され、環境が破壊されます。
③ 貨幣の商品化は恐慌を引き起こし、企業を破産に追い込みます。
手段であるはずの貨幣が商品化することでインフレや恐慌が起き、多くの企業が倒産を経験することになります。

ポランニーは、このような全てのもの・活動が市場の経済活動のために行われる状態を「自己調整的市場」と呼びました。そして、以上のような弊害を持ちながら浸透していく市場経済を「悪魔のひき臼」と表現しました。

ポランニーは、市場の拡大に抵抗するためには市場規制をする必要があると主張しました。

Web大学アカデミア カール・ポランニー【大転換】より

まとめサイト・編集情報の効用

それにしても、彼ら(COTENメンバ)は本当に多くの書籍を読みこんで、我々にわかりやすく伝えてくれていると思います。

Valuebooksという書籍買取サービス会社さんがCOTENで紹介された本をテーマ別にリスト化していますが、資本主義だけで52冊マルクス・エンゲルスでは78冊に上っていました。

COTEN RADIOの別の回で、東大資料編纂所の本郷和人教授がゲスト出演されている際に、本郷先生から

歴史研究者は過去の古文書やら遺跡、遺物を丹念に調べて歴史の真実を見つけていくことには熱心だが、みんな話がつまらない。自分のようにテレビや外に出ていって一般の人にわかりやすく説明することが苦手だ。(恥をかくことも多いけどね)
これまで自分の後進には編纂所に籠ってばかりいないで、外に出ていくように指導してきたが、COTENの皆さんの活動を知って、こういう役割分担があるんだなと気づかされた。皆さんのように上手に伝える人がいて、歴史の面白さを一般の方にもっともっと広めてもらえれば、歴史研究者にも今後、きちんと日の光が当たっていくと思う。

COTEN RADIO 番外編#62 より

というような話をされていました。

【番外編 #62】徒然なるまま聞いてみよう!東京大学史料編纂所 本郷和人教授への歴史Q&A(中編)

この話は以前、読書について過去の名著を片っ端から読もうとするよりは、まとめ情報や要約本でまずはざっくりと理解することでも良いのではないか。多読よりも自分の頭で考えることの方が重要と書いた話にも少し繋がるかなと考えています。


さて、以前、経済書(2):日本の経済学者のところで紹介し、
ベストセラー「人新世の資本論」を書かれた斎藤幸平氏が、
NHK 100分で名著カール・マルクスの「資本論」について
解説されていました。

「人新世の資本論」の中ではマルクス研究における世間の誤解や最前線の話が随所に書かれていて、多少、マルクスの問題提議や主張がダイレクトにわかりづらいところがあったのですが、このテキストを読むことで現代的なテーマとしてわかりやすく理解することができました。

各回のテーマは以下のとおりですが、こういうタイトルだと思わず、
「資本論」「人新世」の内容を見たく・聞きたくなりませんか?

第1回:「商品」に振り回される私たち
第2回:なぜ過労死はなくならないのか?
第3回:イノベーションが「クソどうでもいい仕事」を生む?
第4回:〈コモン〉の再生 晩期マルクスのエコロジーとコミュニズム

NHK 100分で名著 カール・マルクス「資本論」より

さいごに

どうやら、これまでの長い歴史の中で最後に残った資本主義も完成形ではなく、多くの問題(特に金融資本主義)を孕んでいることは世界中の識者の共通認識のようです。

その解決の糸口が、公益性コミュニティにあるのか、脱成長か、それともパーパスやSDGsをベースにしたステークホルダー資本主義にあるのか、いまの私にはわかりませんが、世界が平和で暮らしやすい・持続可能な方向に少しでも向かっていくことを望んでいます。


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