経営実務のための会計(10):日本のCFO
だいぶ、前回投稿から空いてしまいましたが、またポツリポツリとnoteに
UPしていきたいと思います。
今回は最近、読んだ本の中から紹介方々、気づいたこと・考えたことを書くことにしました。
CFO思考
副題が『日本企業最大の「欠落」とその処方箋』となっていますが、
株式会社ニコン現社長 執筆当時はCFOだった徳成旨亮氏の「CFO思考」です。徳成氏は以前、三菱UFJフィナンシャルグループのCFOもされていたので、日本を代表するCFOの一人と言えるでしょう。
つい、最近の日経ビジネス(2024.9.2号)で、8/2のCEOカウンシルにおいて
「闘うCFOが経営を変える ~金庫番から改革の最前線へ~」のパネラーとして登壇されたことが紹介されていました。
さて、本書で氏が主張されているのは、
・日本企業の多くのCFOは、まだ経理担当役員の域を脱していない。
(単なる金庫番ではない)
・グローバル企業におけるCFOの役割は「企業価値を高める責任を負う」
ことにあり、「会社のスポークスパーソン」でなければいけない。
・つまり、経営戦略はもちろん、気候変動からM&A、IT、人的資本経営
まで、あらゆることが企業価値にどうリンクしているか、投資家の心を
惹きつけるストーリーで話せなければならない。
そして、CFOの10の責任領域として、経理、予算、税務、財務(負債と資本)、リスクマネジメント、DX、人的資本経営、コーポレートガバナンス、IR、経営戦略を上げています。
詳しくは本書や以下の出版社紹介記事をご覧ください。
私自身は本書を読んで感じたのは、CFOが財務担当役員ではなく、こういった役割を担っていくのではあれば、当然、P/L・決算とりまとめや資金調達の領域から株式市場が要求する資本効率(ROE)や非財務情報開示へと役割・責任が拡がっていくと思われます。結果的にCFOは事業収支の管理・チェックよりも、投資効率を見据えた日本企業の成長エンジン、氏の言うアニマル・スピリッツを取り戻す「かなめ」要職となるでしょう。
また、出版社紹介記事にあった投資家との対話の中で、
この話で、これまで何回に分けてESG経営をテーマに書いてきた私の素直な疑問にも答えを出して頂いた気がしました。
さて、著者の徳成旨亮氏ですが、今回、始めて実名で書籍を出版されたとのことで、これまでは「北村慶」というペンネームで数冊の書籍や新聞紙上等で連載をもたれていたようです。当然、ご多忙と思われますが、精力的な氏の啓蒙・発信活動には驚きました。
Amazon.co.jp: 北村 慶: books, biography, latest update
JTのM&A
また、以前にM&Aをテーマにした回で紹介しましたが、「JTのM&A」を書かれた当時のJT代表取締役副社長新貝 康司氏も 、日本を代表するCFOとして実績を残され、現在も有力企業の社外役員等でご活躍のようです。
こちらの副題は「日本企業が世界企業に飛躍する教科書」となっています。大型M&Aにおいて財務インパクトや資金調達・ファンドとの付き合い方に留まらず、事業戦略、人材戦略、買収先のガバナンスまで幅広い領域をカバーされています。これを見ても、CFOの責任領域は財務に限らないということがわかります。
グローバル成長においてオーナー系企業のトップダウン経営の方がどうしても目立っていますが、伝統的日本企業(JTC)の「アニマル・スピリッツ」復活にも期待していきたいですね。
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