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【ちょっと昔の世界一周】 #25 《過去・現在・未来》

旅というものは不思議なものである。

同じ日本に生まれ、暮らしていても出会うことのなかったであろう人たちと、日本から離れた国で出会い共に行動する。

これが旅の面白さなのかもしれない。

そんなことを考えながら、私たちを乗せた車はベンメリアへ向かい進んで行く。

集まったメンバーは私を含めて四人。
私よりも先にタケオに泊まっていて、みんなをグイグイと引っ張ってくれるカズさん。
初海外と言う割にフットワーク軽く動き回るリョウタくん。
物静かで落ち着いた感じで英語を話せるのでとても頼りになるニシダさん。

コタロウたちに聞いたのだが、ベンメリアは観光地としてまだ確立されていないので、ルートもあまりないらしい。

だが、そこは海外。

入口辺りうろついているガイドが別ルート(公式かどうかは知らないが)を案内してくれるらしい。

私たちを乗せた車が止まる。

運転手が指を指す方向を見ると、一本道が続いている。

「この道を行けば入口に着くよ。その辺りにガイドがいるから話をしてみな」

運転手の言葉をニシダさんが訳してくれるので心強い。

道を歩いていく私たちの目に崩れた建物が見えてくる。

四人ともアンコールワットはすでに見に行っていた。
もちろん、昔の建物ということもあり所々崩れていたり修復していたりしていたのだが、それとは比べものにならないほど崩れている。

さらに修復も追いついていない(最も有名なアンコールワットが終わっていないので当然だが)こともあり、より【遺跡】としての雰囲気が強く感じる。

全員同じ感覚だったらしく、それだけで感動している。

コタロウたちが【リアルラピュタ】と言っていたのも納得できる。

遺跡の入口はまだなのだが、これは期待できそうという考えでいると、チケット売場が見えた。

チケットを買っていると、一人の男性に声をかけられた。

どうやらガイドのようだ。

ニシダさんが話をすると、聞いていたよりもガイド料が高い。

こうなるとここからの交渉はカズさん&私の出番。
文法などは関係なく勢いで値切る。

結果最初の言い値の半額で無事に交渉成立。

『旅に最も必要なのは勢いだな〜』

そんなことを思いながら、ガイドの後について行く。

と、いきなり入口脇に歩き出す。

値下げしたから適当になったか?と思ったが違ったようだ。

順路として整備された道ではなく、通れる(安全かどうかは別だが)道を教えてくれるらしい。

いきなりギリギリの足場を歩いていく。

そして、崩れた隙間を抜けて遺跡の中に入っていく。

本当に崩れた隙間である。

アンコールワットでは【立入禁止】エリアとなっているであろう場所をどんどん通っていく。

途中で崩れた壁のレリーフの説明を聞きながら進んで行くが、壁の向こうに目をやると順路である道が見える。

正規のルートを通っていれば、私たちがいる部屋の前には崩れた壁(屋根?)があって入ってこれないであろう。

そう考えると貴重な体験である。
最初の言い値でも充分安かったかもしれない。

とはいえ、ガイドの男性も笑顔で案内してくれることを考えると、まぁよかったかな...と考えながら進んで行く。

一通り見て回ったのか、外に向かって進んでいるようだ。

崩れた壁を足場に登っていくとガイドが指を指している場所がある。

ニシダさんが聞くと、フォトスポットのようだ。

それぞれがカメラを渡し、集合写真を撮ってもらう。
旅が始まってから、写真に自分が写るのは初めてのこと。

どれかが私である…

『こういう時に仲間はいいな...』

一人旅の良さもあるが、旅仲間の良さも感じながら休憩がてら一度外に出る。

すると、ガイドが『そっちは行くな!』と声をあげる。

よく見ると看板にはドクロのマーク。

「地雷あるかもだって...」

ニシダさんの言葉が響く...

落ち着いたとはいえ、ここは少し前までは戦闘地域。
私が生まれた時はまだ内戦が続いていた。

こうやって旅をすることができるということは、どれだけ幸せなことなんだろう。

今までも出会った人たちとの関わりで感じることがあったが、目の前の光景からはそれ以上に感じることができた。

一休みして、もう一度中へ戻る。
戻るといっても、ガイドが案内してくれるルートは終了。
正規のルートへ案内してくれて後は自由である。

正式のルートを歩いていると、先ほどまで通っていた道は【KEEP OUT(立入禁止)】の向こう側。

話に聞いた通り、ガイドをお願いする価値は充分にあった。

改めて観光をしていると、遺跡調査だろうか。
数人の人たちが許可証のような物を首から下げ、カメラやメモをとりながら歩いている。

その中の一人、何かを測っていた人が話しかけてきた。

「こんにちは。日本人だよね?」

見た目からすると、50〜60代といった感じの男性だ。

それぞれ挨拶し話をすると、やはり遺跡調査の関係者だった。

日本で測量などの仕事を長年してきて、以前JICAとしてカンボジアに来た際にこういった仕事を依頼され、その時にできた繋がりのある人からの紹介でこの仕事をしているとのことだった。

その男性と少し話したが、

「さっき君たちが通ったルートは、将来順路になるかもしれないし、ならないかもしれない。それに、今よりもここが有名になったら観光客が増えすぎてガイド不足で案内されないかもしれない。〝今〟君たちが行動してここに来れたことは、これからは二度とできない貴重な体験になるかもしれないよ」

ということを聞いた。

確かに〝今〟はできても〝未来〟はどうなるか分からない。

それこそ、このベンメリアやアンコールワットが造られた当時の〝今〟にとって、私たちがいる〝今〟〝未来〟のこと。

未来にどうなっているかは分からない。

だからこそ貴重な〝今〟を楽しむことは大事なのかもしれない。

やはり【遺跡】というものは面白いものである。

過去〜現在〜未来

全てが詰まっている気がする。

そんな風に考えながら、景色を眺めていると目の前のベンチに二人の子どもが座っている。

よく見ると先ほどガイドに案内されていた時にその辺を歩き回って遊んでいた二人組だ。

「Hi」

声をかけると、さっき見かけた人だといった表情で挨拶を返してくれる。

遺跡に子どもとは不思議だが先ほどの調査員の人に聞くと、近所の子どもらしい。

近所の子はフリーパス。

さすが海外である。

先ほど何となくだがいい感じだったので撮った写真を見せると喜んでくれて、もう一枚!と言ってくる。

今度はカメラ目線で撮ってあげて見せると、また喜んでくれる。

こうやって、ベンメリアの中で写真を撮って喜んでいる姿を、ここを造った人たちは想像していただろうか。

過去を現在を通して未来へ繋ぐ

遺跡は私をいつでも学ばせてくれる。

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