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【企画投稿】神戸の有名な、あのY組長さん宅へ配達したことがあります#私だけかもしれないレア体験

 それは、もう~かれこれ半世紀以上前のこと。
私がまだウブな大学生だったころ。夏休みのアルバイトでのレアな経験だ。

 かつては、デパートの繁忙期の配送は、地区ごとにあった専属配達所が、請け負っていた。

 そのDデパート配達所のひとつで、配達員のアルバイトをしていたことがある私。

 ある日のこと。

 まだ、始めたばかりの私は、ある先輩に頼まれた。

「山口さんチッ!の配達が1軒残っている!キミ!行ってくれ!」

 先輩から頼まれれば、断れないシガナイ駆け出し配達員。二つ返事の私は、どこの誰かもわからず、もらったメモ書き地図を頼りに出かける。

 暑い盛りの午後のこと。もちろん、エアコンなしのオンボロ車だ。窓全開で、汗をふきふき、信号待ちをしていた。

『灘区篠原〇△✕町・・・ヤマグチって?・・・ちょっと待ってよ!』

 そのとき、はじめて、ことの重大さに気づいたのだ。山口さんチッっていうから、一般家庭だと思ったのが、私の不徳の致すところだった。

 噴き出していた汗が、瞬間に乾いて寒気さむけすらした!

 その通り!

 アッチ系のとても有名で、お偉い方のお屋敷への配達を、仰せつかってしまったのだ。

 まず、頭に閃いたひらめいたのは、「留守だった!」と言って持ち帰ろう!である。

 だが、どうせ先輩たちは、行きたくないので、私にお鉢を回してきたのだから、もう一度行ってこい!って言われると思った。

 それに、組長さん宅だ!滅多なこと、お留守のワケがない!

 私は、後学こうがくのために、与えられた試練だ!と、ポジティブシンキングすることに決め、与えられたミッションを遂行する決断をした!

 そのお屋敷は、瀟洒な住宅街に位置し、東南角地の一等地。当時、ことあるごとにテレビのニュースで観る、お馴染みの風景を前にした私。

 震える指でインターホンを押す。

「Dデパートのお届けモノです!」というつもりが、「Dデパー・・・」の次の言葉が、乾いた喉に引っかかってしまった。

「入れ!」野太い男声が、インターホンから戻って来てほっとする私。立派な門構えの潜りくぐり戸を、大きな一斗樽いっとだる酒を抱えて入る。

 立派な石造りの階段を、数段昇りつめたところ。

 勝手口で待ち構えたいた男性に、樽酒を渡しモジモジする私。当時は伝票に認め印か、サインを貰うことになっていたのだが、喉がカラカラで言い出せない。

 その男性は、野太い声で「サインか?・・・アンタがしとけ!」という。

「いえ!ご本人でないと!」という、決まり事など返す余裕など私にはなく、「はい!」という返事すらできず、入って来た潜り戸めがけて、小走りに退散する私。

 ゴツ~ン!

 潜り戸上部に前頭部をぶつける始末。「痛い!」と感ずる余裕すらなく、伝票握りしめ、ボロ車へ駆け込んだ次第だ。

 でも、あの時の経験で、後々のチャレンジ精神を、養えたと感謝すらしている。

  そして、案ずるより産むが易し とか、馬には乗ってみよ人には添うてみよ などを、身をもって学習できたのだと、後々幾度となく思ったものだ。


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