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【やまのぼ ブックレビュー No.18】「終わった人」内館牧子・著<講談社>を読んだ。

<やまのぼ>は、サラリーマン経験者だが、古希になってもビンビンの現役だ。不惑であるべき四十歳で独立したからだ。かつての流行語でいう「脱サラ」である。よって、定年は経験していないし、今後もすることは絶対にない。「一国一城の主」とは聞こえはいいが、現実は借金まみれの社長さんである。

脱サラで経験しなかった「定年」による心境の変化が体感できる、本書は遅読家自慢の<やまのぼ>ですら、サクサクと一気に読み終えたほど、おもしろくて誰かに薦めたくなる小説である。

何度か出てくる、「残る桜も散る桜」とは、雇われ身の悲哀を上手く表現している。<やまのぼ>が一度しかない人生なのだからと、根拠のまるでない自信をいだき、世間の荒波に飛び込んだ大きな理由は「生涯現役」を貫こうとしたからだ。

大手銀行の出世コースにいた主人公だが、その歯車が少しずつ軋みだし、子会社に出向。そのまま「定年」という生前葬を迎える。仕事を離れて、スーツにふさわしくない男には、スーツが似合わないと著者はいう。スーツはある意味、サラリーマンの勲章なのだろう。

この小説は、<やまのぼ>を含めた団塊世代の今日的問題提議であり、現役世代にとっても将来必ず遭遇する、避けられない普遍的テーマを、軽妙な文章で書き下ろされた問題作だとされる。それには、<やまのぼ>も異議はない。最近、「人生100年」と喧しい!が、2025年問題の深刻さも目の前だ。

働き方や定年のあり方を考え直す時期に来ているといえるのだろう。


<やまのぼ>のお薦め度 ★★★★☆
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<やまのぼ>のお薦め度規準
(独断と偏見です。あしからず)
★★★★★ 蔵書にして読み返したい
★★★★☆ 読みごたえありでお薦め
★★★☆☆ そこそこ読みごたえあり
★★☆☆☆ 時間つぶしにはなります
★☆☆☆☆ 本屋での立ち読みで充分
☆☆☆☆☆ 時間の無駄使いだけです


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