見出し画像

【やまのぼ ブックレビュー No.28】「ああ面白かったと言って死にたい」佐藤愛子・著<海竜社>を読んだ。

<やまのぼ>の読書の目的は、ただ一つだ。人生という街道の「道しるべ」を得ることだ。自分の羅針盤の補正をするために、読書するともいえる。大げさにいえば、「その後の生き方まで変わる本」に出会いたいのだ。

本書は、<波瀾万丈の日々が紡ぎ出した人生の真実!>とオビに書かれた箴言集であり、<やまのぼ>のそんな期待に、必ず応えてくれるだろうし、<やまのぼ>も「ああ面白かった!」と言って逝きたい!と本書を手にした。

私たちは朝夕鏡を見る。鏡を見て自分を知ったつもりでいる。だが私たちが本当に見なければならないのは自分の後ろ姿なのである。

サラリーマンから独立して、ガムシャラに自己流で、三十余年駆け抜けてきた<やまのぼ>は、自分の後ろ姿を気にしたこともなかった。子は親の背中を見て育つという。娘の目にはどのように映っていたんだろうと、いまさら忸怩たる思いがあふれる。

でも、著者は、いう。

私は自分の人生を悲観したことなど一度もなかった、と自分に確かめるように思った。どんなに波瀾が多くても、これが私の作る人生だと思って生きてきた。幸福は与えられるものではなくて、作るものだ。それと同じように不幸も向こうから来るものではなく、自分で招くものだと私は考えてきた。そう考えることによって、私は耐えてきた。元気を出して耐えている自分を誇りに思うことによって耐えたのだ。

涙もろい<やまのぼ>は、このフレーズで、目に汗をかいてしまった。超一流企業(単に世間での評判だが)の営業マンであった<やまのぼ>。根拠のない自信に惑わされ、不惑の四十歳に<脱サラ>したのだ。

不渡り手形をつかまされ、半年間(当時は6か月のサイトだった)数十万の現金を工面し続けたことがあった。著者のいう<不幸も自分から招くもの>だったのだ。顧客の動向をもっとウオッチングするべきだったのだ。

思う通りに運ばれる人生なんて、退屈以外の何ものでもない。

著者のこの言葉に、戻れなく拭えない人生の悔恨を、きれいさっぱりと洗い流してもらった。そして、

人生は美しかったことだけ憶えていればいい-----.。私はそう考えている。苦しいことの中に美しさを見つけられればもっといい。「-----ああ面白かった」死ぬとき、そういって死ねれば更にいい。私はそう思っている。

<やまのぼ>の目の汗は、気持ちよく霧散したようだ。


<やまのぼ>のお薦め度 ★★★★☆

<<<<<<<<<<<<<<<<<
<やまのぼ>のお薦め度規準
(独断と偏見です。あしからず)
★★★★★ 蔵書にして読み返したい
★★★★☆ 読みごたえありでお薦め
★★★☆☆ そこそこ読みごたえあり
★★☆☆☆ 時間つぶしにはなります
★☆☆☆☆ 本屋での立ち読みで充分
☆☆☆☆☆ 時間の無駄使いだけです


この記事が参加している募集

#読書感想文

192,058件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?