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地域おこし協力隊としてのコラム。

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2022年4月から着任している地域おこし協力隊での活動を通じて、感じたこと・考えたことを綴っています。
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#エッセイ

名のない仕事で、世界はまわる。

「名前のない家事」という概念がある。料理や洗濯などと、いわばメジャーな言葉では表せないような作業。たとえば、ゴミ箱の袋を取り替えて大きくひとつにまとめること、また洗面所の排水溝をきれいにすること。それらはひとつの単語でビシッと表現できないものとして、それでも、日常にはかならず必要なものではないかと思う。 僕が委嘱されている地域おこし協力隊では、多くの地域で「活動報告会」が行われる。年に一度、日頃からお世話になっている住民の方々を招待したり、最近ではオンライン配信もしたり、1

僕はただ、あるだけ。

久しぶりに再会した友人が、最近僕のSNSをチェックしてくれているらしい。彼は偶然見つけたというYouTubeやこのnoteで、僕の発信をこと細かに受け止めて、自身でしっかり咀嚼した上で、感想や質問を伝えてくれた。 彼は、地域おこし協力隊に関するコンテンツを受けて「ほかの隊員は見ていないんですか?」と僕に尋ねる。普段の活動で感じたことや考えたことを赤裸々に発信する僕のSNSが、ほかのメンバーにとってどう位置づけられているのか、気になったのかもしれない。たしかに彼らの活動から感

伝統とオリジナリティ。

地域おこし協力隊の3年目のシーズンを迎えている今、ふと自分が退任した未来のことを考える。町の1期生の隊員として着任し、町民や行政職員との理解ある関係性をイチから築いてきた。もちろん今なお任期中であり、その道すがらではあるものの、自分なりに下地をつくってきたそれなりの自負はなくもない。 徐々に隊員の数も増えてさまざまなコミュニケーションが生まれているけれども、これまで僕たち1期生が出会ってきた人々との関係性はどうなるのだろうと、なんだか気になる自分がいる。つまり、僕と出会い地

「まちづくり」の良いところ。

自分と同じ美里町地域おこし協力隊の活動が、熱を帯びている。テレビや新聞などにも取り上げられ、連日町内外からの多くのお客さんで、会場は賑わいを見せているようだ。昨年度末から準備を進めていたことも知っていて、率直に、素晴らしい成果が出ているのではないかと思う。 一方で、刺激にもなっている。僕自身、彼女ほどの人を集められていないことは確かであり、メディアに取材・掲載いただくような派手さも見せられていない。いわば“同期”の協力隊の活動を目の当たりにして、自分も頑張らなくてはならない

火花を逃すな。

誰かと誰かが会ったとき、あるいは彼らの話が進んだとき、ばちばちっと火花が散ることがある。これはもちろん比喩なのだが、地域で生きているとよく感じられるのだ。人の生き様やアイデアが重なって、化学反応のようなものが起こる。 ただ、その火花はどうしても、よくもわるくも“火花”である。瞬間的で儚くて、とても脆い。たしかにキラキラしてきれいで華があって、ちょっとしたワクワクも感じられるのだが、どうしても頼りないものである。 そんな火花をいかに“炎”にするかが、地域おこし協力隊の役割の

仕事を考える、ポジティブな週末。

地域おこし協力隊として本格始動してから、初めての週末を迎えている。今日は目覚まし時計をかけずに朝を迎えたものの、カーテンの隙間から溢れてきた朝日を感じると、ついスマホで時刻を確認してしまった。それだけ毎朝の寝坊の可能性に怯えているということだろう。 春の陽気に包まれてのんびりとした時間を過ごしていたが、自然と頭は今週の協力隊の活動を考えていた。「来週はもっとアレを詰めなきゃな」「ひょっとしたらコレもできるんじゃないか」なんていうふうに。どうやら、常に町のことを考える自分がい

今こそ、決断で得た特権を。

東京のアパートを引き払ってから、1週間が経った。当然ながら“あの街”の記憶は未だ鮮明で、頭の中なら一瞬で“あの部屋”に戻ることができる。夜の静けさに包まれると「ああ、もう東京には戻らないんだよな」なんて思わされている。 もし今なお東京にいたとしたら、僕はどんな生活を送っているのだろう。ライティングの仕事を継続しながら、宮城をはじめとする地域と関わる機会を伺っていただろうか。つまり心なしか、悶々とした日々を過ごしていただろうか。 今のところ地域おこし協力隊として地方へ入り込

かたちにならないアイデアたち。

今日も地域おこし協力隊として、各所へ挨拶回りをした。稼働初日から続いているスーツでの出勤も、もうそろそろ終わりを迎えてくれるだろうか。なんて思いながらも、とりあえず明日もネクタイを締めて行ってみようと思う。 地域で働いている人と少しでも触れてみると、誰もがその地域を良くしようと活動していることが感じられる。そして「アレも良いよね」「コレも面白そうだよね」と、新たな企画のアイデアは泉のように湧いている。特にこれまで長い時間を共にしている担当の課長は、ごく自然に次々と、我々協力