読書記録『グレーテルの白い小鳥』

読書記録
『グレーテルの白い小鳥』斉藤洋/作 森泉岳土/絵 偕成社

 図書館の児童読書相談コーナーで働く私のもとには、相談だけでなく、なぜか不思議な話が集まってくる。
 図書館を舞台にした奇譚集「ビブリオ・ファンタジア」の三作目。
 表紙の色、デザイン、挿絵大好き。
このシリーズの一作目『アリスのウサギ』のプロローグは読んでいてすごく気持ちが良い。主人公が図書館で働くことになる理由がすごく好きなんだよなあ。

 すぐに命にかかわるようなことはなく、人にうつることもないが、
それでも一年くらいはきつい仕事はだめ

 という病気にかかってしまい就職がパーになってしまった主人公に父親が図書館のアルバイトの話を持ってくるところから物語は始まる。今作で約束の一年が近づき、病気も完治に向かっていることが明らかになる。ラストシーン、なぜこのタイミングで自分が病気になったのかということを考える主人公。図書館で働くことになって、自分はもっと本と人とを繋げていきたいと思うようになった。あのまま就職をしていたら自分は何かやりたいことを見つけることができただろうか。この病気はなにかのきっかけだったのではないか。このときのセリフが良い。

きっかけはだれの人生にもやってくるのだろう。多くの人々はそのきっかけを無視し、何も変えようとせず、きのうとあしたを容易につなげていくのだ。わたしは、その多くの人々のひとりにはなりたくない。

 続くかな。終わるかな。

 図書館が舞台っていうのもこのシリーズが好きな理由。なぜなら私も図書館で仕事をしているから(いつもご利用ありがとうございます) 読んでいると仕事の面でわかるーって共感できるところもある。舞台になっている図書館は利用者の幅も広いし、蔵書も多いし、けっこう大きな図書館だと思うなあ。蔵書といえば、作中で主人公が著者(斉藤洋)の本を紹介したときは思わず笑っちゃったけど、この物語が現実と地続きの場所に存在しているようでドキドキしました。
 主人公がお客さんたちから聞かされるエピソード、どれも好きだけど今回は「おつりはいらないよ」「和田トシキくんのともだち」が特に好き。児童向けだけど大人が読んでも面白い小説集。よかったらシリーズ通して読んでほしい。

 おまけ。最近、挿絵の森泉岳土さんが描いた『一九八四年』の漫画を読んだけど、ゾクゾクする面白さだった。こちらもおすすめ。

今日はここまで。
読んでくださってありがとうございます。
のび。

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