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アルミホイルを折る理由、そんなの知らんがな。

地味で地味で、華やかさの無い仕事なのだが、とても大切で欠かせない仕事なんです。


美容室でハイライトを入れるために使用するアルミホイルは、メーカーが製造しているものがある。既に同じサイズに切られている既製品と、自分達で好きな長さに切る事のできるロールタイプのものがある。

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自分がアシスタントの時は、スーパーで売っている家庭用のアルミホイルを大量に買ってきて、切って使用するというアナログな事をやっていた。

20年近く経つ今でも、ロールになっているものを一枚一枚切りながら、折り目を入れていく。切って使うというアナログさは今も昔も変わらないことなのだ。

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好きなサイズに切れるという事と、アルミホイルの適度な硬さみたいなものはメーカーによって違うので道具の選択という意味でそこにはコダワリを注ぎ込んでいる。



昔は自分も良くホイルを切っては折ったものだ。


何もできなかった自分にはそれが存在意義のように、空いている時間はひたすらに折っていた。こういう単純作業は好きなほうなのかもしれない。
小さい頃、農家の収穫時期には発送用の箱をひたすら無心に作っていた経験があるので、苦ではなくむしろ心地よささえ感じていた。その箱作りのご褒美は、午後から友達の家に遊びに行けるという、今思うとなんとも子供騙し的なご褒美だったと思える。



アシスタントのときのある日、無心にホイルを折っているとボスがそばにきて自分に言い放って行った。

「どうして2つ折りにするか、理由を知ってやってるの?」


そうアルミホイルの端を細く折り、そしてもう一度細く折るのである。この2つ折りがされているか、されていないかで仕事の効率は変わるのである。そして細ければ細い方がより質の高いカラーデザインにもつながるという事もその時は知らなかった。

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入社したてで何も仕事ができない自分にはとうてい理解のできないことだった。そういえば知らない…。


ボスは答えは教えてくれなかった。今思うと答えは知らなかったのではないかと思う。(カラーの事に関しては、何も知らない人だったので)でもボスは物事の本質というものをとても大事にする人なので、そのやっている一つ一つに意味があり、目的があるという事を自分に伝えたかったのだろうと思う。

ホイルを折る新米のアシスタントが何も考えず単純作業を行っている姿を見て言い放って行った時の事は今でもはっきりと覚えている。


それ以降、自分は考えるようにした。任される仕事の意味目的を考え、どうすればより良くなるのかを模索して仕事をしたと思う。それでも、

「ダメダメ、全然ダメ!」

とボスからはしかられながらやっていた。

本質を考えさせる、答えを教えないで、考えさせる、失敗する、考える。

その繰り返しは,何かを取り組む時、お客様を接客する時の瞬時の判断力にも影響をしていると思う。ボスのプレッシャーは、人にものを考えさせる不思議なチカラを持っていたように思える。


さてこれから若者達に聞いてみる事にしよう。

言い放ってみよう。

なぜホイルを2つ折りするのか。


答えは「そんなの知らんがな」と答えるけど。




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