オカルト&ミステリー『怪奇探偵リジー&クリスタル』山本弘(著)
1938年、ロサンゼルス。私立探偵エリザベス・コルトと、助手の少女クリスタルは、それぞれの“特殊な身体”と知恵を駆使し、奇怪な事件の数々に立ち向かう! パルプマガジンの表死絵そっくりな惨殺死体、幻の特撮映画上映中に消えた人々、甦る十七世紀イギリスの錬金術……。型破りな謎と解決法、全編を貫くマニアックな薀蓄に驚嘆必至の5篇を収録。物語を愛するすべての人に贈る痛快で風変わりなミステリー!
読書メーターで知り手に取る。寺田克也表紙がかなり好み。
前情報無しで読んだので、初っ端から全裸に針金という姿で家宅侵入しだして混乱した。しかし、まさか〇〇〇〇なのか? と気づくと笑いがこみ上げてくる。ということは相方にも何かあるな、とどんどんこの世界にはまってゆく。イロモノかと思いきや、オカルト以外は論理的で蘊蓄にも満ちており、さらに短編全部雰囲気が違うし、主人公達のルーツも明らかになったりと、満足度の高い一冊。路線は『虚構推理』に近いかな。続編がなくて非常に残念。
まっぷたつの美女
彼氏の部屋で大量のいかがわしい雑誌(スナッフ系)を見つけてしまい、どうしたら良いのか、という相談がコルト探偵事務所に舞い込む。
正統派ミステリー。単純な事件かと思いきや、二転三転して読者を驚かす。しかし本筋よりも、助手のクリスタルが〇〇〇〇だったり、探偵のリジーが〇〇だったりする衝撃の方が強く、ダブルで読者を揺さぶってくるので楽しい。挨拶にふさわしい一遍。
二千七百秒の牢獄
作成中止となった幻の映画フィルムの中に閉じ込められるお話。
この本、そこまでありなのかと笑える。解決方法がまた素晴らしく、クリスタルを使った撮影方法は目から鱗だった。
映画蘊蓄満載だが、詳しくないのでそこは全然楽しめず残念。
ペンドラゴンの瓶
謎の怪物が人を襲う話。
読んでる途中、まさかこれリジーの話か? と気づく瞬間がなんとも言えない気持ち。そしてなんと切ないことよ。生い立ちから結末まで一貫して切ない。劇場版パトレイバー2かよ。そしてクリスタルの男前っぷりにも感動して惚れた。
軽はずみな旅行者
未来から来た男がスーツケースを盗まれるお話。
自分がアレなのに時間旅行を全く信じないリジーが面白い。また、海外SF読みがニヤニヤできるネタが満載なのも良い。しかし、お話は旅行者に割と本気でイライラするし、展開的にも、もうひと捻り欲しかったな、という印象。
異空の凶獣
異世界から透明の人食い獣がやってくるお話。
クリスタルが危機に陥る話が読みたいなぁと思ってたらラストに来た。しかし、こういうんではないんだよ。普通の人間相手にピンチに陥って欲しいんだよ! そんで機転で勝って欲しいんだよ! と唸ってしまった。
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