『堆塵館』エドワード・ケアリー(著)古屋美登里(訳)
19世紀後半、ロンドンの外れの巨大なごみ捨て場。幾重にも重なる屑山の中心に「堆塵館」という巨大な屋敷があり、ごみから財を築いたアイアマンガー一族が住んでいた。一族の者は、生まれると必ず「誕生の品」を与えられ、一生涯肌身離さず持っていなければならない。15歳のクロッドは、聞こえるはずのない物の声を聞くことができる変わった少年だった。ある夜彼は屋敷の外から来た召使いの少女と出会う。それが一族の運命を大きく変えることに……。
ハリーポッターとアダムスファミリーをまぜたような雰囲気。魔法は無いが、物が動くし喋り事件を巻き起こす。文章は表紙ほどホラーではない。不気味だけど。これがなかなか癖になる。
舞台はロンドンにある夢の島みたいなごみ集積所に立つ屋敷。ゴミから作られているが堆塵館という素敵な名前がある。そこに暮らす一族のクロッドと、新しいメイドのルーシーのボーイ・ミーツ・ガールもの。絵とヒロインの手癖の悪さのせいでロマンティックな雰囲気を感じないが、主人公は許嫁より彼女をとるほど情熱的。(許嫁にヒゲ生えてるのが一番の理由だが)
これに加え、消える品物、人を殺すゴミの山、物の声が聞こえる主人公(物はなぜか自分の名前しか喋らない)、誕生の品という謎の風習、ロンドンで発生する人間が固まってしまう奇病等々、不気味な世界観、さらには、普通だったりサイコだったりするキャラたちが横軸。スモッグで染めたような不気味な物語が織りなされている。
三部作の第一作なので、中途半端に終わるんだろうな、と思っていたが、めちゃくちゃ良いところで終わっちゃったよ。ルーシー! 第2部は隣町の話みたいだが、どう続くのか。
しかし、物がしゃべる理由がわかったのはスッキリ。名前しか喋らないのは忘れないためなのかな? 名前が一番重要、というか鍵だ、ということだろうか。他と自分は何が違うのか、違いとは何か考えさせられる。児童書にしては恐ろしいテーマだな。
絵に特徴がありすぎるだろと思っていたら、作者自ら描いており吃驚。こういうのは酉島伝法くらいしか知らないが、結構多いのだろうか?
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