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2020年12月の記事一覧

『我々は、みな孤独である』貴志祐介(著)

探偵・茶畑徹朗(ちゃばたけ・てつろう)の元にもたらされた、「前世で自分を殺した犯人を捜してほしい」という不可思議な依頼。 前世など存在しないと考える茶畑と助手の毬子だったが、 調査を進めるにつれ、次第に自分たちの前世が鮮明な記憶として蘇るようになる。 果たして犯人の正体を暴くことはできるのか? 誰もが抱える人生の孤独――死よりも恐ろしいものは何ですか。 鬼才がいま描く、死生観とは。著者7年ぶり熱望の傑作長篇。 ヤクザ抗争ものであり、探偵ものであり、輪廻転生ファンタジーでもあ

『この本を盗む者は』深緑野分(著)

「ああ、読まなければよかった! これだから本は嫌いなのに!」 書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。父は巨大な書庫「御倉館」の管理人を務めるが、深冬は本が好きではない。ある日、御倉館から蔵書が盗まれ、父の代わりに館を訪れていた深冬は残されたメッセージを目にする。 “この本を盗む者は、魔術的現実主義の旗に追われる” 本の呪いが発動し、街は侵食されるように物語の世界に姿を変えていく。泥棒を捕まえない限り世界が元に戻らないと知った深冬は、探偵が銃を手に陰謀に挑む話や、銀色の巨大な

ほのぼの怖い『バスザウルス』五十嵐大介(作)

ギッチギッチャガタン、ズルズルガシャリ、ミシリカタリ。手足がはえ、尻尾がはえ、オンボロバスが動き出す。バスザウルスは、まいにちおなじじかんに、バスていでおばあさんをまちました。『海獣の子供』の五十嵐大介が描く、不思議で優しい夜の絵本。 『人魚のうたがきこえる』に続く2冊めの絵本。 五十嵐大介は漫画や画集も全部集めてる大好きな作家だが、今回はタイトルと表紙から幼児向けなのかなと思い、買わずに図書館で借りて読んだ。が、読み終えてすぐポチった。これは手元に置いておかねばならぬ。

『念入りに殺された男』エルザ・マルポ(著)加藤かおり(訳)

フランスの田舎町でゲストハウスを営んでいるアレックス。あるとき、宿泊客としてやってきたゴンクール賞作家のシャルル・ベリエに襲われ、彼を殺してしまう。彼女は夫にも事情を隠してパリへ行き、殺人の隠ぺい工作を始める……スピード感あふれるサスペンス 作家を殺してしまったが、自首すると愛する家族と離れ離れになるうえ、子供はきっと虐められる。そんなの耐えられない。というわけで、作家は放浪を続けてますよ、というていで、作家のスマホでツイッターに投稿したり、家族知人にメッセージをおくり、生

超濃密なホワイダニットの短編集『夜よりほかに聴くものもなし』山田風太郎(著)

東京で五十過ぎまで刑事生活一筋に生きてきた八坂は、ある日、車が母子を轢いた現場に遭遇する。居合わせた男の証言によって過失の事故と判明し、運転していた御曹司は無罪に近い判決を受けた。2年後、八坂は証言者が御曹司の運転手として働いているのを知る。その哀しき理由とは……。(「第一話 証言」)同情すべき事情、共感できる動機。犯罪者それぞれの背景に心揺れる八坂。だが、それでも……。哀愁漂う連作刑事ミステリ。 超濃密なホワイダニットの短編10編。一つ数十ページしかないのに、一つ一つに人

『パーキングエリア』テイラー・アダムス(著)東野さやか(訳)

真冬の夜、女子大生のダービーは、母の容体悪化の知らせを受け、猛吹雪のなか車を飛ばす。そして、休憩のために立ち寄ったパーキングエリアで偶然、一台の車の中に少女が監禁されているのを目撃してしまう。誘拐犯は居合わせた男女4人のうち誰か? 夜明けまでの絶望的な死闘を描くノンストップ・サスペンス。 噂通りのページターナー。ピンチの連続で本を置くタイミングがなく一気読みしてしまった。 吹雪の中、携帯の電波も通じない山中のパーキングエリアが舞台。主人公を含め5人が吹雪から退避しているが

相変わらず写真だけでなく解説も素晴らしい『もっと美しき小さな雑草の花図鑑』多田多恵子(著)

身近な雑草の知られざる小さな美の世界。待望の第2弾。 「えっ!? あの雑草の花って、こんなにきれいだったの!」 NHK BSプレミアム「美の壺」でも絶賛された驚きと発見のベストセラー『美しき小さな雑草の花図鑑』の待望の第2弾出版! 第1弾に続き、身近な雑草たちの知られざる美しい姿を超クローズアップ写真&深度合成で紹介しています。 今回は、引き続き街角の雑草からフキやセリ、シソといった食べられる野草の花も掲載。 花の色別構成で、合わせて70種類超を掲載しためくるめくビジュアル植

素晴らしい悲劇『バスク、真夏の死』トレヴェニアン(著)町田康子(訳)

全ヨーロッパが異例の上天気を共有したかのような、大戦前のある最後の夏。バスピレネーの温泉町の青年医師、ジャン‐マルクが、町へ静養に来ていた娘、カーチャと知りあったのはそんな夏の1日だった。彼女には双子の弟がいた。弟のポールと彼女は驚くほど似ていながら、印象はまったく異なった。ジャン‐マルクはカーチャに惹かれる一方、ポールの不思議な、悪魔的魅力にも気づいていた。そして美しい夏の終る頃、彼はポールとカーチャを結ぶ奇怪な絆、避けようのない悲劇の訪れを悟るのだが…。『シブミ』の著者の

『時が新しかったころ』ロバート・F・ヤング(著)中村融(訳)

白亜紀後期の地層から人間の化石が発見された。調査のため、7千万年の時を超えて調査員が派遣されたが、そこで彼が出会ったのはふたりの子供だった。しかも彼らは火星の王女と王子で、誘拐されて地球に来たのだという。ふたりをトリケラトプスそっくりに擬装した大型武装タイム・マシンに収容したとたん、三機のプテラノドン型飛翔艇が来襲し…ロマンティック時間SF長編! 時の娘に入っていた中編の長編化。大筋は同じだが、設定、展開がちょっと変わってる。それ以上に説明が増えている感じ。もっと冒険部分を