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2020年9月の記事一覧

第一部 完だと!?『死亡通知書 暗黒者』周浩暉(著)稲村文吾(訳)

死すべき罪人の名をネットで募り、予告殺人を繰り返す劇場型シリアルキラー〈エウメニデス〉。挑戦状を受け取った刑事・羅飛は事件を食い止めようと奔走するが……果たして命を懸けたゲームの行方は? 本国でシリーズ累計120万部突破の華文ミステリ最高峰 中華SFはよく読むので中華ミステリにトライしてみた。 中華文化、問題などには触れていないエンタメ特化作品。警察に代わり悪人を殺す犯人を果たして警察は捕まえられるか? といったもの。紹介文や帯ではミステリと謳われているが、サスペンス。誰

是非未訳で新刊を!『クリスマスの朝に キャンピオン氏の事件簿3』マージェリー・アリンガム(著)猪俣美江子(訳)

小学校時代の同級生が病死したという死亡欄を見たわたし、アルバート・キャンピオン。卑劣ないじめっ子だった豚野郎の葬儀に出席して半年後、事件の捜査に協力を求められたわたしは、警察署で見た死体に驚愕した!本邦初訳の傑作に、十数年後の同じ地域が舞台の忘れがたい名作と、クリスティによる著者への心温まる追悼文を併録。英国ミステリの女王の力量を存分にご堪能あれ。 キャンピオン氏の事件簿シリーズ、最後は中編と掌編。中編は未婚時代に戻ってる様子。そして近侍ラッグ初登場。キャラの濃さに笑ってし

ついに完結!とはいえ…『火狩りの王〈四〉 星ノ火』日向理恵子(著)

ついに神宮に到達した明楽、灯子、煌四。犬たちと共に、この世界の命運を懸けて神族との戦いが始まる。激闘の末に、灯子たちを待ち受けるものは一体何なのか。この世界を滅ぼすことも存続させることもできるという〈揺るる火〉が、最後に下した決断は?そして、果たして「火狩りの王」は生まれるのかーー。シリーズ怒涛の完結編。 やっと長い旅が終わった。皆、満身創痍(煌四だけピンピンしてるが)で、本当にご苦労さまでした、という気持ち。とはいえ、なんと後味の悪いことか。多すぎる犠牲だけでもしんどいの

四畳半ファン必読!『四畳半タイムマシンブルース』森見登美彦(著)

水没したクーラーのリモコンを求めて昨日へGO! タイムトラベラーの自覚に欠ける悪友が勝手に過去を改変して世界は消滅の危機を迎える。そして、ひそかに想いを寄せる彼女がひた隠しにする秘密……。 森見登美彦の初期代表作のひとつでアニメ版にもファンが多い『四畳半神話大系』。ヨーロッパ企画の代表であり、アニメ版『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』の脚本を担当した上田誠の舞台作品『サマータイムマシン・ブルース』。互いに信頼をよせる盟友たちの代表作がひとつになっ

『戦士志願』ロイス・マクマスター・ビジョルド(著)小木曽絢子(訳)

貴族に生まれながら、生来の身体的ハンデのため士官学校の門をとざされた17歳のマイルズ。一度は絶望の淵に立たされた彼だったが、とある事情で老朽貨物船を入手、身分を偽り戦乱渦巻くタウ・ヴェルデ星系へと船出した。だがさすがの彼も予期してはいなかった、抜きさしならぬ状況下で実戦を指揮することになろうとは! マイルズ・シリーズ第1弾。 ヴォルコシガン・サガ1作目。士官学校入学試験で骨折し落第した失意のマイルズが、幼馴染の気を引くため、彼女の出生の謎を調査しつつ、自分探し旅行にでかける

『イリーガル・エイリアン』ロバート・J・ソウヤー(著) 内田昌之(訳)

人類は初めてエイリアンと遭遇した。四光年あまり彼方のアルファケンタウリに住むトソク族が地球に飛来したのである。ファーストコンタクトは順調に進むが、思いもよらぬ事件が起きた。トソク族の滞在する施設で、地球人の惨殺死体が発見されたのだ。片脚を切断し、胴体を切り裂き、死体の一部を持ち去るという残虐な手口だった。しかも、逮捕された容疑者はエイリアン…世界が注目するなか、前代未聞の裁判が始まる。 イカれた表紙なのに内容は正統派法廷ドラマで笑える。8割は裁判描写。状況からしてエイリアン

『その手を離すのは、私』クレア・マッキントッシュ(著)高橋尚子(訳)

母親と二人で暮らす5歳の少年がひき逃げ事件で命を奪われた。小さな男の子の無念を晴らそうと、ブリストル署の警察官レイは部下のケイトらと共に事件を追うが、犯人は杳として見つからず、捜査の打ち切りを迫られていた。 一方、海辺の町に現れ身を隠すように暮らしていた謎の女性ジェナは、獣医師のパトリックと惹かれ合う。 それぞれのドラマが交錯し、事件解決が見えたその時、あまりにもおぞましい真実が浮かび上がる。 NYタイムズ、サンデータイほか英米各紙のベストセラーリスト入りをした超話題作が、満

『ストリート・キッズ』ドン・ウィンズロウ(著)東江一紀(訳)

一九七六年五月。八月の民主党全国大会で副大統領候補に推されるはずの上院議員が、行方不明のわが娘を捜し出してほしいと言ってきた。期限は大会まで。ニールにとっての、長く切ない夏が始まった……。元ストリート・キッドが、ナイーブな心を減らず口の陰に隠して、胸のすく活躍を展開する! 個性きらめく新鮮な探偵物語。 ドン・ウィンズロウ2冊め。「ボビーZの気怠く優雅な人生」が面白かったのでデビュー作を読んでみた。 なんとまぁ面白い事! デビュー作の初々しさゼロ(笑) ボビーZより好き。あ

『幻の屋敷  キャンピオン氏の事件簿2』マージェリー・アリンガム(著) 猪俣美江子(訳)

ロンドンの社交クラブで起きた絞殺事件。証言からは、犯人は“見えないドア"を使って現場に出入りしたとしか思えないのだが……。名作「見えないドア」を始めとして、留守宅にあらわれた謎の手紙が巻き起こす大騒動を描く表題作や、警察署を訪れた礼儀正しく理性的に見える老人が突拍子もない証言をはじめる「奇人横丁の怪事件」など、本邦初訳作を含む日本オリジナル短編集。解説=若林踏 相変わらず、イギリス感たっぷりのやりとりにニヤリとしてしまう。こういう日本にないセンスが大好き。しかしたまに理解で

『つるまき町 夏時間』コマツシンヤ(作)

終業式の日、教室に忘れられたホテイアオイの精を助けたことをきっかけに植物と話せるようになった小学生のみつる君。 それ以来、つるまき町ではちょっとヘンテコな事件が起こるようになって……。 ノスタルジックであたたかな世界観が魅力の俊英が描く、夏休みの物語。 壁に「蟹と和解せよ」なんて看板がかかってる、いつもどおりのコマツシンヤワールドなのだが、主人公の男の子が神域の時計草を持ち帰り、植物の暦を乱してしまったために、植物たちが街を埋め尽くす事態に。アニメ映画のような、ひと夏の冒険

『ミレニアム』ジョン・ヴァーリィ(著) 風見潤(訳)

滅亡を目前にした人類がとった乾坤一擲の解決法、それが〈救奪〉だった。死者が多数発生する飛行機事故を選び、時間をさかのぼって救奪隊を機内に送りこみ、乗客たちを“幼弱者”と交換する。〈救奪〉の痕跡は消され、タイム・パラドックスは起こらない。しかし誤算が生じた。5万年前のカリフォルニアで発生した空中衝突での救奪中、隊員が機内に1980年代には存在するはずのない物を忘れてきてしまったのだ。名実ともに米SF界をリードするジョン・ヴァーリィによる時間旅行テーマの意欲作。 凄惨な飛行機事

『8月のソーダ水』コマツシンヤ(作)

海辺の街に住む少女・海辺リサの周りは、いつも不思議で素敵なできごとがいっぱい。 浜辺に流れ着いたへんてこなバイオリン、うっかり空から落ちてきたゴーグルの少年、 蜃気楼の彼方に浮かぶ幻の都市……。 清涼なイメージがソーダ水のようにはじける表題作『8月のソーダ水』、そして「高知新聞」に連載されたナンセンスユーモアマンガ『うわのそらが丘より』を収録! 8月に読みかえそうと思っていたが見つからず、9月1日に掃除してたら出てきた。まだまだ暑いのでセーフ。 海辺の街での不思議で優しい