『つるまき町 夏時間』コマツシンヤ(作)
終業式の日、教室に忘れられたホテイアオイの精を助けたことをきっかけに植物と話せるようになった小学生のみつる君。
それ以来、つるまき町ではちょっとヘンテコな事件が起こるようになって……。
ノスタルジックであたたかな世界観が魅力の俊英が描く、夏休みの物語。
壁に「蟹と和解せよ」なんて看板がかかってる、いつもどおりのコマツシンヤワールドなのだが、主人公の男の子が神域の時計草を持ち帰り、植物の暦を乱してしまったために、植物たちが街を埋め尽くす事態に。アニメ映画のような、ひと夏の冒険譚。
植物がテーマだが、瓢箪から生まれた人間がいたり、植物の精霊が喋ったりとかなりファンタジー。終業式の日にホテイアオイの精に話しかけられたのをきっかけに、どんどん不思議な世界に踏み込んでゆく。
基本ほのぼのだが、街の危機、少年の逃避、責任、成長など、短編では味わえないカタルシスが実に良い。さらに淡いロマンスも可愛い。しかし、ヒロインにその気ゼロなのが不憫だし、ラストの主人公の扱いも酷くて笑った。がんばれ少年!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?