第十一章 復活⑥
「安奈も丸くなったみたいだね、少し安心した」
「あたし達、最高のライバルだと思う。それだけはあたしも認めるわ。これからも、ナンバーワンの座に君臨し続けよっ♪」
そう言って、安奈はあたしに握手を求めてきた。
一体全体、どういう風の吹き回しなのだろうか。
本当に、安奈はたった三ヶ月の間に丸くなった?
いまいち信じる気にもなれなかったけれども、実際にあたし達はライバルとしては申し分のない相手同士ではあると思う。
少なくとも、キャバクラ、いや歌舞伎町の世界では。
お互いに、それを認め合った。
もっと仕事、頑張ろう!
一哉とも、何事もなく平穏無事な日々を過ごしていた。
よく分かったんだ。
お互いにヤキモチさえ妬かなければ、喧嘩もせずに上手くやっていけるんだっていう事。
仕事に口を出さない事。
それは、お互い様だ。
ようやく……。
HEATYの撮影現場に顔を出すと、皆に温かい拍手で迎え入れられた。
そして、あたしのお帰り会を開催してくれた。
「鈴!充!」
「梨紗!」
「梨紗、ごめんね……ごめんね」
「復活したんだから泣かないでよ!それより……もう、やめたんだよね?」
クスリの事だ。
あたしは、鈴と充に念を押した。
「やめたよ」
「安心して、梨紗。もう、梨紗に迷惑かけるような事しない!」
傷を負った事は、決して無駄ではなかった。
きっと、友達であるあたしが傷ついた事で、鈴も充も改めて気付いてくれたはずなのだ。
良かった……。
その言葉だけを聞きたかった。
やっと、友達を救う事ができたよ。
そして、何もかも絶好調な毎日。
仕事も好調。
隣には、大好きな一哉が眠っている。
長くて茶色くて濃いまつ毛が、静かに揺れている。
夢でも見ているのかもしれない。
こんなに幸せな事って、ある?
そして、一哉もあたしを大好きでいてくれている。
分かる。
あたしには分かるし、信じる事ができる。
幸せ過ぎて、怖いくらいだった。
まるで、何かの前兆なんじゃないかと思ってしまうほどに……。
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