第十一章 復活④
「……で、あのさ……こないだの事だけど」
こないだの事。
勿論、『キス』した事だよね。
拓巳には、言えない。
一哉にヤキモチ妬かせる為に、ただキスをしただけだなんて。
「一哉さんと喧嘩でもしたん?」
「したけど、もう仲直りした」
「ええ?!」
がっくりとする拓巳。
あたし、かなり拓巳の気持ちを弄んでるよね……。
「ごめん、拓巳」
「でも、梨紗、言ってくれたよね。好きになってもいいって」
「そうだけど……」
「オレが一哉さんに勝てる方法、考える。てか、気持ち的には一哉さんにも負けてないと思うんだけどなあ。だって、ずっと梨紗のファンで、オレの客も皆その事知ってるし。客に好きなタイプ聞かれると、日向梨紗って答え続けてるもん」
「そうなの?やめてよ、またあたし顔切られるかもしれないじゃん笑」
「だよね……ごめん」
「梨紗、オレ、今は二番でもいい」
メインディッシュに手をつけずに、拓巳はそう言った。
「拓巳はナンバーワンでしょ。二番なんて似合わないよ」
「だから!オレ、頑張るから。一哉さんに宣戦布告していい?」
「……」
あたしがキスなんてしてけしかけちゃったんだもん、何も言えないよ。
帰り、約束通り拓巳がポルシェを運転してくれた。
「着いたよ、梨紗」
自宅前まで送ってもらって……。
そこへ、なんと一哉が登場。
「梨紗、拓巳」
げ。
「何やってるの?」
「いや、あの、梨紗酒飲んじゃって……オレが運転して帰ってきたんすよ」
「じゃなくて、何で二人が一緒にいるわけ?拓巳、マジで梨紗に関わるなって。コイツは、オレにヤキモチ妬かせたいだけなんだから」
一哉はそう言うと、あたしの腕をつかみ無理やり助手席から引きずり下ろす。
「鍵!」
「あ……はい」
一哉に向かって、ポルシェのキーを放り投げる拓巳。
「ほら、行くぞ梨紗!」
マンションの部屋へと連行されてゆくあたし。
拓巳、ごめん。
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