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「アイデア」とビジネスの幸せな関係

こんにちは、トークアンドデザイン代表今西(@no_imanishi)です。

新規商品のアイデアを出したいとか、何かを改善するアイデアを出していきたいとか、そういったお話しをいただくことがあります。そういったお仕事の中で、「アイデア」のハンドリングについてその難しさは痛感しています。今回はビジネスにおけるアイデアについてまとめたいと思います。

ビジネスにおけるアイデアとは何か

私の周りでビジネスにおけるアイデアといえば、新規事業のアイデア、新商品のアイデア、既存商品をより良くマーケティングするためのアイデア…という話が多くあります。エンジニアの方々であれば、目標をよりよく達成するための技術的なアイデアというのもよく出る話かと思います。一方で、ビジネスはもっと様々な人の様々な工夫によって成り立っています。どうやって光熱費を圧縮するか、外線電話対応の負荷をどう減らすか、いつもちゃんとインクの出るホワイトボードマーカーがスタンバイできている様にするにはどうしたらいいか……こんなのも立派にアイデアが求められるシチュエーションかと思います。そして、アイデアの積み重ねが、強い事業を作るのだと思います。

アイデアを発想する人できる人

「誰にでもアイデアを生み出すことはできる」と言われることがあります。一方で、「若い人の発想を活かして…」とか「女性ならではの感性を活かして…」とかぶん投げられることもあります。
さて何が本当なんでしょう?神学論争なので、正解はない気がしますが、私は、

  • 工夫とトレーニングで誰でもアイデアを生み出しやすくすることができる。(成長可能)

  • 先天的にアイデアを出すのが得意な人というのは確かにいて、そういう人がやると量・スピード・広がりはすごい。但し万能ではない。

  • 当該ドメインの知識の有無はアイデアの創出に強い影響を与えるが、詳しいことが発想を広げることも狭めることもある。

と思っています。
以前、資質分析のストレングスファインダーで「着想」資質を上位に持つ人(=ざくっというと、アイデアを思いつくのが得意な人)だけが集まってアイデアを出すチャットを眺めていて、出てくるスピードと飛躍度に、「コレは勝てないな」という感覚をもったことがあります。但し、そんな人は大変な希少資源ですし、後述する様なオーガナイズができるかは全くの別問題です。
また、車好きばかりが集まって、自動車関連の事業のアイデアについて話した席では、先行きの暗さに関する知識の披露会になってしまい、全くアイデアの生み出せない場になってしまった経験があります。

こうして考えると、アイデアを出すことを「得意そうな人・詳しそうな人・組織におけるマイノリティに属す人」に安易に押し付けることは、適切な判断とは言えなさそうに見えてきます。どうやら大事なのは多様性の様です。
ビジネスにおいてアイデアを必要とされる場では、多様性を活かす「工夫」をすることができ、そのオーガナイズ力で、良い結果を引き寄せる努力ができます。

発想することを助けるいくつかのヒント

ブレインストーミングについては、多くの方が一度は聞いたことがあると思うので触れませんが、ブレインストーミングを助ける工夫はいくつかある様に思います。

問いを練る

アイデアを出そうと言っている割に、お題が明確になっていないケースは多いです。さらに、アイデアの出やすいちょうどいいサイズにお題を料理していないケースはもっと多いです。アイデアを出すためには、その前に「問い」をしっかりと練ることがとても大事です。

問いの練りかた、こちらのページが参考になります。

アイデアに関する有名な逸話があります。

(良い)アイデアというのは、
複数の問題を一気に解決するものである

宮本茂(任天堂株式会社代表取締役フェロー)
https://www.1101.com/iwata/2007-08-31.html
※括弧部筆者

これも、問いの設定の妙がなければ複数の問題の解決にたどり着くことは難しいです。

事前に知識を共有する

問いに対してアイデアを発想する際には、自分の中にある体験や知識はそのジャンプ台になります。強力な道具ですが、量が限られるのが難点ですし、逆に当人にとっての足枷になっていることもあります。複数人で、問いに関連する知識を共有した上で発想に挑めば、発想のジャンプ台が多くなってアイデアが出やすくなります。

まず広げて、その後絞る

アイデアを広げることと、そこから良いものを選択することは、明示的に分けてやるべきです。アクセルとブレーキは同時に踏むべきではありません。私はいつも「質より量で、まず大きなゴミの山を作りましょう。とても大きなゴミの山を作ったら、そこにお宝が眠っているので宝探しをしましょう。」と説明します。広げる時には、しょうもないアイデアかなと思っても、そのまま置いておきましょう。

アナロジー(類推)の活用

問題を自分がよく知っている別のものに重ね合わせて、そこからアイデアを生み出すことができます。アナロジーの活用はなかなか奥が深くて、こちらの本に詳しいです。

一方で、雑にやっても面白いことが起きるので、行き詰まりの打破にちょっとやってみても楽しいです。

アナロジーを使った発想の一例

抽象化を利用した2段階プロセスの活用

問いが難しくて、なかなかビジネスのなかで実際に使えるアイデアとならない場合は、多段ロケット方式もあります。
問いに対して、まずは大量のアイデアを出します。質より量が優先ですから、まずはたくさん出します。そうすると、「アイデアの断片のようなものがたくさんあるけれど、これで問題解決できる?」という状況がうまれるので、一度仲間集めをしてグループを作り、グループ名をつけます。この作業が実質的に「アイデアの抽象化」を行っていることになります。
その上で、そのアイデアの断片とグループの名前を見ながら、再度、問いに対するアイデアとして統合していくというプロセスです。

各種の強制発想法の活用

オズボーンのチェックリストTRIZといった強制発想法を使うことも有効です。機能しやすいシチュエーションとそうでない時とありますが、時間をかけずにやってみて、何か得られたらラッキーだねという態度でもいい気がします。

フレームワークの活用

アイデアを出す領域にフレームワークがあるようなものなら、枠がある方が考えやすい面はあります。新規事業のアイデアを考えるなら、ビジネスモデルキャンバスを使う…といったものです。が、フレームワークを使う時は、そのフレームワークで考えるのがいいことなのか、本当によく考えるべきです。フレームワークは、後段の行動を縛ります。適切でないフレームワークを使うと、うまく解決に辿り着かなくなります。

アイデアを育てる

アイデアは生まれたままでなくて、積極的に育ててやるとより問題の解決に近づけると思います。

書き下す

圧倒的に大事なのは、考えたことを素早く書き(描き)下すことです。私は、「考えることは書くこと」というぐらい、書き下すことを重視しています。書き下せないと人と共有できませんし、書いて目で見ることでさらに自分や同僚をインスパイアできるからです。

自分の考えを書き下すことに慣れていない人は意外に多いと感じます。特に「ちょっとしたポンチ絵」を描くことに抵抗を示す人、多いです。描かない人より、下手くそな絵を描く人の方が百万倍偉いです。私もそう思って、恥を晒して下手な絵を書いています。リミッターをはずしましょう。

下手な絵でもエライ!

複眼で育てる〜4-Player Model

複数人で議論するのはアイデアを育てるのに有効な手段です。そして、ただ漫然と話すよりも、それぞれの人に役割を与えて役割に沿った発言をしてもらうと非常に効率が高まります。
1985年にエドワード・デ・ボノ博士によって考案されたSix Thinking Hatsというワークショップ手法があります。これを少し簡略化した様な、一つのアイデアを以下の4つの役割から育てるという4-Player Modelという方法があります。

  • 積極的に発想し改善する人(Mover)

  • サポートする人(Follower)

  • 批評的に見る人(Opposer)

  • 中立的に進行する人(Bystander)

四人が、それぞれの立場を請け負って、アイデアを育てて行きます。実際にやってみると、それぞれの人が与えられた役割に沿って強制発想をやる様な感じになります(中立進行役は発言を促して整理するファシリテーターですね)。批評的にみる人という存在があるので地に足のついた進行になりますし、そのアイデアに対する個人的な見解とは切り離されて強制的に役割を与えられるので、何を言っても「役割としての」発言でしかないことから、場の心理的安全性が保ちやすく、突っ込んだ議論を避けがちな組織にも非常に馴染みやすいと感じます。

アイデアを選ぶ

先にお話しした「ゴミの山からアイデアを選択する」ということですが、時に「選択」は「発想」よりも難しいことかもしれません。

その難しさの理由を考えると、何をもって良いアイデアなのかという評価基準を決めることが意外に難しく、その上、各アイデアへの評価について妥当性を共有するのが難しいという点に収束する様に感じます。

例えば、何かの名前を決めたい際に、沢山アイデアを出したとして(ネーミングのアイデア出しであれば、数百のアイデアになることもあります)何を良いネーミングと見るか、その評価はなかなか難しいです。

一方で、ここから逃げると一気にアイデアが死んでしまうという風にも思います。評価軸が陳腐だと、陳腐なアイデアが選択されてしまうからです。先のネーミングについて考えると、放っておくとつい「インパクトがある」とか「わかりやすい」とか曖昧な基準がまかり通ってしまいます。インパクトがあるってどういうこと?それって本当にいいこと?というのを深く考える必要があります。これはかなり知的腕力の要る作業ですが、「良いアイデアを出す」という作業の半分はここにかかっている様に思います。

最後に

ビジネスの改善や成長にアイデアは必ず必要になりますが、開発に関連する場以外の場面ではとりわけ「アイデア」の扱いが良くないなぁと思うことがあります。AIにできない人間の仕事は創造性を発揮することだという話がありますが、創造性の発揮とはつまり、アイデアを出すことです。ビジネスの中で、もっと意識的にアイデアを扱っていくことができれば、有力な武器として使っていけるのではないかな、と感じます。

最後までお読みいただきありがとうございました。



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