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#14. 95%以上の人が知らない「ファイブフォース分析(5F)」のフレーム図

今回は、ポーター教授が提唱した、「ファイブフォース分析(5F)」の説明です。「バリューチェーン」とともに有名なフレームワークですね。

でも、いつもの図以外に、別のフレーム図があるのをご存知でしょうか?

良書に出会うと新たな発見があっていいですね。
それをご紹介したいと思います。

ボクのnoteもそんな「新たな気づき」を提供できるようにしたいと考えています。

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本noteは、ポートフォリオワーカー*になった、外資系IT企業マーケティングマネジャーによる、『初めてマーケティングを学ぶキミに伝える マーケティングフレームワーク活用講座』の連載企画です。

*「ポートフォリオワーカーって何?」は、こちらを参照下さい。自己紹介とともに説明しています。

前回はこちら、最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。

ファイブフォース分析(5F)とは

ファイブフォース分析(5F)とは、
業界の収益性を決める5つの競争要因から、業界の構造分析をおこなう手法のこと。「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」という3つの内的要因と、「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の2つの外的要因、計5つの要因から業界全体の魅力度を測る。

Source:Wikipedia

この図で有名ですね。

5FはSWOTのOT評価の外部環境分析を行うときに使用します。いつものマーケティングフレームワークフローを思い出してください。

考えてみると、SWOTは「評価」なので、「調査/分析」である5Fは、3CのCustomer(市場・顧客)と同時に実施するのが、スムーズな気がしてきました。やることは同じなのですが、位置づけは、SWOTの補助フレームワークではなく、3Cの補助フレームワーク、あるいは並列フレームワークが妥当です。

フレームワークフローを若干修正しておきました。こちらの図で流れを把握し、全体のフレームワークの中での役割を意識して下さい。

5Fにおいても、恣意性を排除し、客観的に現状分析をする努力が必要です。
なかなか難しいですが。

各競争要因を簡単に説明します。

「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」

「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」は、需給でのパワーバランスを言ってます。

就職活動時期により、「買い手市場」「売り手市場」とか言われるのを思い出すとわかりやすいと思います。求人が多い時は、「売り手=供給側=学生」が強く、求人が少ない時は、「買い手=需要側=企業」が強くなります。

通常のビジネスにおいても同様で、売り手の選択肢(選択企業)が複数ある場合は、売り手である供給企業の交渉力は弱くなり、買い手が有利になります。売り手が少数であれば、交渉力は強くなり、買い手は不利になります。

「買い手の交渉力」は、上の文を買い手主導で考えてみると理解できます。

売り手が多いと、需要側である買い手の交渉力が増し、売り手が少ないと、需要を満たせなくなるので買い手の交渉力が弱くなります。

限定プレミア品は数が限定されているため、その商品の価格は高めに設定できます。高いお金を出しても買いたい買い手がいるからです。その場合は、当然、売り手の利益率は高くなります。

一方100円均一で販売しているような身の回り品は、どこでも買えるので、買い手の交渉力は強くなり、価格は安くなります。当然、利益率も低下します。

「競争企業間の敵対関係」

ライバル会社、いつも客先でぶつかる会社のことです。

「他店より高ければ、値引きします!」がわかりやすい例です。同等品、あるいは同一品を販売するので、常に価格競争状態にあります。競合店が同じ商圏にあれば、常に意識しなければなりません。

いまやネット販売も当たり前の時代なので、ネットでの競合も考慮にいけないといけない業界もあるでしょう。

「代替品の脅威」

意識しないと気づかないのが、「代替品の脅威」です。よく引き合いに出されるのが、デジタルカメラとフィルムカメラの例です。

約20年前は、写真といえば、フィルムカメラが主流でした。娘の誕生とともに、「これからはデジタルカメラだろう」と、200万画素のカメラを大枚をはたいて購入したことが思い出されます。

ところが今や、フィルムは一部の愛好家のみが使用するものになってしまいました。時代の趨勢を感じます。

そのフィルムを提供していた大手企業が、富士フイルムとコダックです。
この2社は、デジタルカメラの出現に対峙し、対称的な判断を行い、対称的な結末を迎えました。

富士フイルムは、この「代替品」を「脅威」、もっというと「抗えない脅威」と認識し、自社のコアコンピタンスである「精密な技術力とコラーゲン」に特化。フィルム会社から、化粧品/医薬/医療業界会社にトランスフォーメーションを成し遂げました。当時も今も優良企業のままです。

一方のコダックは、この「代替品の脅威」を軽視しました。その結果、最終的には経営破綻に追い込まれました。本当に対照的です。

ちなみに、コダックの当時の状況は、小説化されています。象の墓場/楡 周平著

そのデジタルカメラも、現在はスマホに押され、ニコンが2020年に赤字転落、なんて報道もありましたね。この「代替品の脅威」は、新たなテクノロジーにより、ゆっくりと、しかし、ジワリジワリと業界を変えてしまいます。

カメラ業界の主流は、
2000年:フィルムカメラ(使い捨てカメラ含)
2010年:デジタルカメラ
2020年:スマホ
と、変わってきました。

テクノロジーに影響を受ける業界は「代替品の脅威」を忘れずに意識しないといけないようです。

「新規参入業者の脅威」

ボクは本業、外資系IT企業で、何度もこれを経験しています。
新規参入業者は、全部マイクロソフトでしたけどw

1990年代初頭:TCP/IPモジュールを約10万円ぐらいで販売
→Windows95にTCP/IPモジュール組み込まれ、売上消滅

1990年代中盤:Netscape NavigatorブラウザソフトをOEMで販売し、大フィーバー
→Internet Explorerの登場、優越的地位の濫用(OSとのバンドル強要)により、売上消滅

2000年代:ITセキュリティ企業勤務
→ Microsoft Security Essentialsの登場で、売上消滅とはいかないものの、一部ユーザー失う

2010年代:現在の会社の製品
→Microsoftが無償ではないが、同製品カテゴリの安価な製品リリース、一部ユーザー失う

大手企業の周辺事業参入、水平方向への事業拡大は、少々厄介です。圧倒的なユーザーベースに対して、新カテゴリー製品でユーザーの囲い込みを仕掛けてきます。

それが、無償だったり、ありえないぐらい低価格でバンドル販売してくるので、たちが悪いんです。既存顧客のユーザー情報があるため、告知やアピールもコストをかけずに行えます。

ちなみに、マーケティング的には至極正しく、まっとうなアプローチです。「ご一緒に、ポテトもいかがですか?」のクロスセリング(Cross-Selling)です。

マイクロソフトのように水平方向での新規参入以外にも、垂直方向への新規参入もあります。アップルがCPU開発を開始したというのは、この垂直方向への進出になります。

当然Intelはアップルへの売上が減少することになります。
アップル製CPU開発部隊はレイオフされちゃうんでしょうね。。。

収益影響を考慮したファイブフォース(5F)分析図

マイケル・ポーターの競争戦略/ジョアン・マグレッタ著 P81に「五つの競争要因は収益性にどのような影響を与えるか」として、出ています。

ボクは初めて見た図でした。いつもの図とは違い、不思議とイメージ湧きます。

「価格 ー コスト =利益」という式と「収益性」というキーワードが加わったからかもしれません。より具体的にイメージできます。

また、同書P84では、5Fを実施する手順も書かれています。今まで漠然と5つの図からのみで考えていたときより、圧倒的に思考が広がります。

ちょっと意訳してまとめてみました。
質問項目が増えると、意識が広がる、いい例だと思います。

ファイブフォース(5F)実施手順
1.業界を「製品の範囲」と「地理的範囲」の二つの面から定義する
2.当事者にあてはめる
3.どの要素(ドライバー)の影響が大きいか、収益のかぎを握るのは?
4.全体的な業界構造を見きわめる
5.最新の変化、将来おこりうる変化は?
6.自社のポジショニングは? 変化を逆手に取れるか?

カスタマイズファイブフォース(5F)

この図と手順を読みながら、本を読んでいる最中に、ボクが行っている不動産賃貸の5Fを考えていました。そのメモを共有したいと思います。

実際には、赤字の部分だけしかメモしていませんが、思考プロセスも追記してみました。

書籍やサイトに出ているのは、大手有名企業ばかりなので、「あーこんなふうに考えるのね」と、スモールビジネスや自営業者の方には少しは参考になるのでは?と思います。

読んで頂くとわかると思うのですが、ファイブフォースについても、そのままの形で考えていません。カスタマイズしまくっています。

特に「サプライヤー=購買」は、「需給不均衡時の仲介店?」と、訳のわからないコメントになっています。

その理由は、ファイブフォースの定義を目的で解釈したためです。

5Fは、「業界の収益性を決める競争要因」の代表的な要因、5つピックアップしたものです。で、あるなら、その「収益性を決める競争要因」が「サプライヤーや購買」でなくてもいいはずです。

つまり、

自分がビジネスする業界、マーケットに適した形で、5Fのコンセプトを使って、分析すればいいと考えます。5Fにこだわることなく、6Fでも7Fでもいいはずです。

業界の収益性を決める競争要因を把握し、それに対して対処、あるいは適合できる戦略策定こそ重要と考えます。

この解釈のもと、「XX駅の賃貸マーケット」の5F分析を行うと、仲介店に支払う手数料により、利益がブレるという結果になりました。

「買い手=入居者」においても、需給不均衡時(繁忙期*と閑散期)で、礼金がとれたり、とれなかったりすることも考えると、賃貸マーケットにおいては、他の要因よりも、賃貸募集時期が重要であると、認識できました。

*繁忙期:1-3月の間の新年度前、特に3月は入退去が活発になる、9月末/10月上旬もちょっとは活発になる
閑散期:それ以外の期間、特に6-8月に退去がでると地獄

このことは、感覚的に気づいてはいたのですが、ファイブフォース分析を行うことで、確信を持つに至りました。

雑感

今回もかなり独自視点でいいこと書けたかな?と思います。
マーケティングを勉強する人に役立ててほしいなと思います。

「そんなの、フレームワークの目的を考えて、カスタマイズすればいいんだよ! こんな感じ」

と、先輩が後輩に教えるような、noteにしていけたらと思います。

今回も多く書いてしまいました。
コンパクトにまとめればいいんでしょうけど、ダメですね~

全くの余談ですが、繁忙期に竣工した物件は、繁忙期に入居者が一勢に入ってきます。そのためか、退去も繁忙期が多い気がします。

すると、新入居者を繁忙期に募集できるので、少々高い家賃、少ない仲介手数料、短い空室期間と、いい感じで大家の利益は最大化します。精神的にも大変よろしいです。

この発見、まだどこにも発表してません。
このnoteを読んだ大家だけが得をする法則です。

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